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鍼灸師になるには、はり師ときゅう師という2つの国家資格の取得が必要です。
厚生労働省が認定した養成施設で最短3年間学び、過去5年の合格率が67〜76%で推移する国家試験に合格することで免許が交付されます。
「学校選びで失敗したくない」「社会人でも目指せるのか」「実際の年収はどのくらいか」といった疑問に対し、この記事では公的機関のデータを根拠に、資格取得の全ステップから学費・支援制度・就職先・開業費用・ダブルライセンス戦略まで、鍼灸師を目指すうえで必要なすべての情報を網羅的に解説します。

鍼灸師になるには、はり師ときゅう師という2つの国家資格を取得し、厚生労働大臣または文部科学大臣が認定した養成施設で3年以上修学したうえで国家試験に合格することが必要です。
実は鍼灸師という名称は職業上の呼び方であり、正式な国家資格の名称ではありません。
取得する資格ははり師ときゅう師という2種類であり、どちらも厚生労働大臣が交付する免許です。
はり師・きゅう師2種類の資格があるという前提を理解したうえで、取得の流れを把握していくとよいでしょう。
はり師とは、鍼を使って人体の経穴(ツボ)を刺激し、自然治癒力や免疫力を高める技術をもつ者に与えられる国家資格のことです。
きゅう師とは、もぐさなどを用いた灸によって経穴を温熱刺激し、血行改善や体質改善などの効果をもたらす技術をもつ者に与えられる国家資格のことです。
どちらも厚生労働大臣が交付する医療系国家資格の一つです。
2つの試験は同日に実施されます。
はり師ときゅう師には共通する試験科目が多く、一方の試験で得点が確定した科目はもう一方の試験で免除される仕組みになっています。
養成学校のカリキュラムも基本的にダブル取得を前提として設計されており、両資格を同時に目指すことが効率的です。
| 資格名 | 施術内容 | 主な道具 | 免許交付者 |
|---|---|---|---|
| はり師 | 経穴への鍼刺激で自然治癒力・免疫力を向上 | 鍼(注射針より細い専用針) | 厚生労働大臣 |
| きゅう師 | 経穴への温熱刺激で血行改善・冷え性・肩こり緩和 | もぐさ・遠赤外線器具など | 厚生労働大臣 |
実際の施術現場では、はり師ときゅう師の両方を取得した施術者がほとんどです。
鍼と灸はセットで使われることが多く、どちらか一方だけでは提供できる施術の幅が大きく限られるためです。
求人においても、鍼灸師として募集しているポジションの大半がはり師・きゅう師のダブルライセンスを前提としています。
法律上はどちらか一方の取得も可能ですが、その反面、採用市場での選択肢が極端に狭まります。
将来のキャリアを見据えるなら、両方同時に取得することをおすすめします。
鍼灸師を目指す際の標準的なルートは、以下の3ステップで構成されます。
厚生労働省が定めた法律上の要件であり、養成施設での修学を経ずに国家試験を受験することはできません。
高校卒業後、厚生労働大臣または文部科学大臣が認定した鍼灸師養成施設に入学します。
養成施設には専門学校・大学・短期大学があり、最短の修業年限は3年です。
カリキュラムでは解剖学・生理学・東洋医学概論・はり理論・きゅう理論・はりきゅう実技などを体系的に学び、94単位以上の取得が修了条件とされています。
座学だけでなく臨床実習も必須であり、実際の患者さんへの施術を通じて技術を磨く時間が設けられています。
3年次の2月下旬に、年1回実施されるはり師・きゅう師国家試験を受験します。
試験は全国11都道府県で実施されており、受験料はそれぞれ19,500円です。
厚生労働省が発表した第34回国家試験(2026年2月実施)の結果では、はり師の合格率が67.2%、きゅう師が70.5%でした。
合格基準は170点満点中102点以上、正答率60%以上が合格ラインです。
国家試験の合格発表は毎年3月下旬に行われます。
合格後は厚生労働省に免許申請を行い、免許証の交付を受けることで、正式にはり師・きゅう師として就業できるようになります。
はり師・きゅう師の免許は更新が不要であり、一度取得すれば生涯有効です。
| ステップ | 内容 | 目安の時期 |
|---|---|---|
| ステップ1 | 養成施設に入学し、最低3年間修学 | 入学から最短3年間 |
| ステップ2 | はり師・きゅう師国家試験を受験 | 3年次の2月下旬(年1回) |
| ステップ3 | 免許申請・厚生労働大臣免許の交付 | 合格発表(3月下旬)後に申請 |
免許証の交付には申請から数週間程度かかるため、就職先との入職時期については卒業前から調整しておくとよいでしょう。
多くの方が4月頃から鍼灸師として勤務をスタートしますが、免許証が手元に届く前に就職先との確認を済ませておくことが大切です。
なお、視覚に障害のある方には別途ルートが設けられており、中学校卒業後に認定された養成施設で5年以上修学することで受験資格を得られます。
盲学校や視力障害センターを経由するケースが一般的です。

はり師・きゅう師国家試験の過去5年間の合格率はそれぞれ67〜74%、70〜76%の範囲で推移しており、正答率60%以上が合格基準となる絶対評価の試験です。
医療系国家資格の中では著しく難しい試験とはいえませんが、合格率は年度によって変動します。
試験範囲が広いため、養成施設での3年間の積み上げと3年次の集中した直前対策が合否を左右するといえます。
公益財団法人東洋療法研修試験財団および厚生労働省が公表するデータをもとに、直近5年間の合格率の推移を整理しました。
| 回 | 実施年 | はり師合格率 | きゅう師合格率 |
|---|---|---|---|
| 第30回 | 2022年 | 74.2% | 76.1% |
| 第31回 | 2023年 | 70.4% | 71.7% |
| 第32回 | 2024年 | 69.3% | 70.2% |
| 第33回 | 2025年 | 73.9% | 74.9% |
| 第34回 | 2026年 | 67.2% | 70.5% |
5年間を通じると、はり師・きゅう師ともに合格率は70%前後を中心に推移していますが、年度によって5〜8ポイント程度の開きがあります。
第34回(2026年)のはり師合格率は67.2%と直近5年で最も低い水準となりました。
とはいえ、合格率が最も低い年でも3人に2人は合格している計算であり、試験全体の難易度は医師・歯科医師・薬剤師などの国家試験と比べて高くはありません。
合格率が年度によって変動する背景には、出題される問題の難易度調整があります。
第34回では知識の暗記だけでなく、症例に対する臨床思考力を問う問題が増えたとされており、応用力を問う方向へのシフトが読み取れます。
過去問だけに頼らず、授業内容の意味を理解して学ぶ姿勢が、合格率の変動に対応するうえでも重要です。
また、合格率は養成施設在学中の新卒受験者と過去に不合格となった再受験者の両方を含んだ数値です。
在籍する学校の国家試験サポート体制の質が合否に大きく影響するため、進学先を選ぶ際は各校の国家試験合格率も確認することをおすすめします。
はり師・きゅう師国家試験は、厚生労働省が告示した試験科目に基づいてマークシート方式で実施されます。
はり師・きゅう師を同時受験する場合の総問題数は180問(午前90問・午後90問)です。
共通科目10問が一方の試験で免除されるため、実質的な解答問題数は170問となります。
以下の表は、厚生労働省が定めるはり師・きゅう師それぞれの試験科目を一覧にしたものです。
| 試験科目 | はり師 | きゅう師 |
|---|---|---|
| 医療概論(医学史を除く) | ○ | ○ |
| 衛生学・公衆衛生学 | ○ | ○ |
| 関係法規 | ○ | ○ |
| 解剖学 | ○ | ○ |
| 生理学 | ○ | ○ |
| 病理学概論 | ○ | ○ |
| 臨床医学総論 | ○ | ○ |
| 臨床医学各論 | ○ | ○ |
| リハビリテーション医学 | ○ | ○ |
| 東洋医学概論 | ○ | ○ |
| 経絡経穴概論 | ○ | ○ |
| はり理論 | ○ | — |
| きゅう理論 | — | ○ |
| 東洋医学臨床論 | ○ | ○ |
全14科目のうちはり理論ときゅう理論を除く12科目が共通であり、両資格の勉強範囲は大部分が重複しています。
ダブル受験をしても追加で対策が必要なのは固有の1科目分だけであり、同時受験の効率の良さが数字からも確認できます。
試験範囲として特に学習ボリュームが大きいのは、解剖学・生理学・東洋医学概論・経絡経穴概論・東洋医学臨床論の5科目です。
解剖学・生理学は西洋医学の基礎であり、東洋医学概論・経絡経穴概論は鍼灸固有の専門知識を扱います。
東洋医学臨床論は症例への応用力が問われる出題が多く、3年次の対策で特に力を入れるべき科目といえます。
国家試験の合格に向けた学習は、入学直後から3年間を通じた継続的な積み上げが基本です。
1〜2年次は授業で解剖学・生理学・東洋医学の基礎を着実に理解し、3年次の9月頃から2月の試験日までの約6ヶ月間を集中対策の時期と位置づけるのが一般的な流れです。
国家試験の出題傾向は年度によって大きく変わらず、過去問を繰り返し解くことが最も効率のよい対策とされています。
はり師・きゅう師国家試験の過去問は公益財団法人東洋療法研修試験財団のウェブサイトで無料公開されており、少なくとも直近5年分の問題を複数回解くことが合格への近道です。
180問をマークシートで時間内に解き切るには、ペース配分の感覚を事前につかんでおく必要があります。
養成学校が実施する学内模擬試験や外部模試を積極的に受験し、本番と同じ条件で問題を解く練習を重ねましょう。
模試の結果を分析することで、苦手科目や時間配分の課題が見えてきます。
苦手科目の早期把握と重点補強
経絡経穴概論はツボの名称と位置の暗記量が多く、東洋医学臨床論は症例ベースの応用問題が多いため、苦手とする受験者が多い傾向にあります。
2年次のうちから苦手科目を把握し、3年次に集中して補強できるよう計画しておくとよいでしょう。
養成学校の中には国家試験対策として補講・個別指導・直前集中講座を設けているところもあります。
進学を検討している段階で、各学校の試験対策プログラムの内容と過去の合格率を比較することも、学校選びの重要な判断基準の一つです。

鍼灸師を目指す養成学校は専門学校・大学・短期大学の3種類に分かれており、修業年限は最短3年、3年間の学費は400万〜500万円程度が目安です。
どの学校形態を選んでも国家試験の受験資格は取得できますが、修業年限・学費・カリキュラムの内容はそれぞれ大きく異なります。
卒業後のキャリアや現在のライフスタイルと照らし合わせながら、自分に合った学校を選ぶことが重要です。
3種類の養成学校はいずれも厚生労働大臣または文部科学大臣が認定した施設です。
修学内容の核となる鍼灸の専門科目は共通ですが、カリキュラムの幅・修業年限・学費に違いがあります。
| 比較項目 | 専門学校 | 大学 | 短期大学 |
|---|---|---|---|
| 修業年限 | 3年 | 4年(一部3年制あり) | 3年 |
| 3年間の学費目安 | 400万〜500万円程度 | 600万〜700万円以上 | 400万〜500万円程度 |
| 卒業時の称号 | 専門士 | 学士 | 短期大学士 |
| カリキュラムの特徴 | 鍼灸の専門科目を集中的に習得 | 一般教養・研究も含む幅広い学び | 専門学校に近い構成 |
| 向いている人 | 早く実践力をつけたい・学費を抑えたい | 学術的・理論的に深く学びたい | 専門学校に近い環境で学びたい |
専門学校は全国に最も多く設置されており、はり師・きゅう師の養成に特化したカリキュラムで即戦力となる技術を3年間で身につけることを目指します。
学費が大学より抑えられ、1年早く就職できる点も選ぶ大きな理由です。
その反面、一般教養の授業が少なく、大学院進学や研究の道に進もうとする場合はルートが限られます。
大学は4年間を通じて鍼灸の専門知識に加え、一般教養や研究手法も学べます。
大学卒業資格(学士)を取得できるため、将来的に鍼灸以外の分野も視野に入れている人や、学術研究・教員養成に関心がある人には向いています。
とはいえ、修業期間が1年長い分、就職時期が遅くなる点と学費の総額が高くなる点は念頭に置いておきましょう。
短期大学は全国に数校しか設置されていない選択肢が限られる学校形態ですが、3年制でカリキュラムの内容は専門学校に近く、大学の雰囲気で学びたい方に向いています。
選択肢の幅は専門学校と大学に比べて狭いため、希望の地域に短期大学があるかどうかの確認が必要です。
専門学校を中心に昼間部と夜間部の両方を設けている学校があります。
どちらも修業年限は3年で、取得できる資格と受験資格に差はありません。
昼間部は午前から午後にかけての時間帯に授業が行われます。
高校を卒業してすぐに進学する方や、学業に専念できる環境の方に向いています。
授業数が安定しており、クラスメートと過ごす時間が長いため、実技練習の機会が多くなる傾向があります。
夜間部は夕方から夜間(多くは18時頃から始まる)にかけて授業が行われます。
日中に仕事やアルバイトができるため、社会人や主婦が現在の生活スタイルを維持しながら資格取得を目指す際に選ばれます。
夜間部を設ける学校では、昼間部と同じ3年間で同水準のカリキュラムをこなせるよう授業が設計されています。
| 比較項目 | 昼間部 | 夜間部 |
|---|---|---|
| 主な授業時間 | 午前〜午後 | 夕方〜夜間(18時頃〜) |
| 修業年限 | 3年 | 3年 |
| 向いている人 | 学業専念・高校卒業後すぐの進学 | 社会人・主婦・昼間に仕事がある人 |
| 学費 | 3年間で400万〜500万円程度 | 昼間部より若干低めの傾向 |
夜間部は昼間部と比べると定員が少ない学校が多く、入学競争が生じるケースもあります。
また、仕事と学業の両立は体力的・時間的に負担が大きいため、入学前に1週間のスケジュールをイメージしたうえで判断することをおすすめします。
鍼灸師に必要なはり師・きゅう師の資格は、通信教育のみでは取得できません。
はり師・きゅう師は身体に直接触れる施術を行う医療系国家資格であり、安全・適切な技術習得のために対面での実技授業と臨床実習が法律上必須とされているためです。
どれだけ知識をオンラインで習得しても、通信だけでは国家試験の受験資格が得られない仕組みになっています。
完全な通信制ではないものの、通学日数を減らせる仕組みを設けている学校が増えており、社会人や遠方に住む方への選択肢が広がっています。
働きながら鍼灸師を目指したい場合は、通信制ではなく夜間部を検討することが現実的な方法です。
夜間部であれば法律上の要件を満たす通学ができ、社会人入学の実績がある学校も多くあります。
養成学校を選ぶ際、多くの方が最初に目にするのは立地・学費・知名度です。
とはいえ、実際に入学した後に後悔するケースで多いのは、国家試験対策の手薄さや就職サポートの不足といった点です。
以下に、入学前に必ず確認しておくべき4つのポイントをまとめます。
国家試験の全国合格率は年度によって変動しますが、学校ごとの合格率には大きな差があります。
学校の公式サイトや資料で過去3〜5年間の国家試験合格率を確認し、全国平均と比較しましょう。
合格率が恒常的に全国平均を上回っている学校は、教育・試験対策の質が高いと判断できます。
3年間の学びの中で、実際の患者さんに施術を行う臨床実習は技術向上に直結します。
附属の鍼灸臨床施設を持つ学校では、在学中から本格的な施術経験を積めます。
外部の実習先での研修のみに頼る学校と比べて、実践力の伸び方が大きくなる傾向があります。
卒業後の就職先をどれだけサポートしてくれるかは学校ごとに差があります。
求人情報の提供・キャリア相談・OB・OGとのネットワーク等、就職支援の内容をオープンキャンパスの際に具体的に確認しておきましょう。
開業支援を行っている学校もあります。
鍼灸師として働く分野は、鍼灸院・整骨院・スポーツ鍼灸・美容鍼灸・訪問鍼灸など多様です。
スポーツ鍼灸や美容鍼灸に特化したカリキュラムを設けている学校、他資格との連携教育を行っている学校など、各校の特色は入学後のキャリアに大きく影響します。
希望する就職先や専門分野に合ったカリキュラムかどうかを入学前に確認することが大切です。

鍼灸師養成学校の学費は3年制専門学校で3年間合計400万〜500万円程度が目安であり、国家試験受験料・教材費・免許申請費を加えた総費用は450万〜550万円前後になります。
金額だけを見ると大きな数字ですが、奨学金や社会人向けの給付金制度を活用することで実質的な負担を大きく減らすことができます。
費用の全体像を把握したうえで、支援制度も合わせて進学計画を立てることをおすすめします。
鍼灸師養成学校の学費は、学校形態・昼夜区分・所在地によって幅があります。
下表は一般的な相場の目安をまとめたものです。
| 学校の種類 | 修業年限 | 3年間の学費目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 専門学校(昼間部) | 3年 | 400万〜500万円程度 | 最も選択肢が多い |
| 専門学校(夜間部) | 3年 | 370万〜500万円程度 | 学校によっては昼間部と同額 |
| 大学(4年制) | 4年 | 600万〜700万円以上 | 修業年限が1年長い |
| 短期大学 | 3年 | 400万〜500万円程度 | 設置数が少ない |
表に記載した学費はあくまでも授業料・施設費などの主要費用の相場です。
多くの学校では教科書代・鍼道具などの教材費・実習費が別途必要となります。
東洋鍼灸専門学校(東京)の公式情報では、教科書・白衣・鍼道具などの教材費として入学前後に約15万円程度が別途必要とされています。
教材費・実習費を含んだ実質的な総費用は、相場より10万〜30万円程度上乗せして計画しておくことをおすすめします。
夜間部は昼間部より学費が低いと思われがちですが、実際には学校によって差があります。
たとえば東洋鍼灸専門学校では昼間部・夜間部ともに3年間の合計学費は同額(446万円)に設定されています。
夜間部の選択は学費よりも生活スタイルとの両立を優先する判断となるケースが多いといえます。
養成学校の学費に加えて、国家試験の受験から免許交付まで複数の費用が発生します。
3年次には学費以外の出費が集中するため、事前に把握しておくことが大切です。
| 費用の種類 | 金額(目安) | 支払先 |
|---|---|---|
| はり師国家試験受験料 | 19,500円 | 公益財団法人東洋療法研修試験財団 |
| きゅう師国家試験受験料 | 19,500円 | 公益財団法人東洋療法研修試験財団 |
| はり師免許申請手数料 | 5,600円 | 厚生労働省 |
| きゅう師免許申請手数料 | 5,600円 | 厚生労働省 |
| はり師登録免許税 | 9,000円 | 厚生労働省 |
| きゅう師登録免許税 | 9,000円 | 厚生労働省 |
| 合計(概算) | 68,200円 | — |
出典:公益財団法人東洋療法研修試験財団(受験料)
2試験の受験料だけで合計39,000円、免許申請にかかる申請手数料と登録免許税が2資格合計で29,200円となり、卒業年度だけで約7万円程度の追加費用が発生します。
また、在学中には年間を通じて教材費や実習費が生じます。
解剖模型・鍼道具の消耗品代・白衣のクリーニング代なども積み重なるため、年間10万〜20万円程度を別途の生活費として見込んでおくとよいでしょう。
3年間を通算すると、学費以外の諸費用の合計は50万〜80万円程度になる場合もあります。
鍼灸師養成学校への進学にあたって活用できる主な支援制度は3種類あります。
特に社会人の方には専門実践教育訓練給付金が大きな費用軽減につながる制度です。
専門実践教育訓練給付金(社会人向け)
専門実践教育訓練給付金とは、厚生労働省が指定する教育訓練講座を受講・修了した場合に、支払った学費の一部がハローワークから支給される制度のことです。
多くの鍼灸師養成専門学校が厚生労働大臣の指定講座に認定されており、条件を満たすことで最大192万円の給付を受けられます。
支給の仕組みは以下の通りです。
雇用保険に2年以上加入していて在職中または離職後1年以内に入学した場合、学費の50%が年間上限40万円で6ヶ月ごとに給付されます。
さらに卒業後に資格を取得し1年以内に就職すると、学費の20%(最大48万円)が追加支給されます。
そのうえ、訓練後の賃金が受講前と比べて5%以上上昇した場合は、さらに10%分(年間上限8万円)が加算される仕組みです。
| 給付の種類 | 支給率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 在学中の給付 | 学費の50% | 年間40万円(最大3年間) |
| 資格取得・就職後の追加給付 | 学費の20% | 最大48万円 |
| 賃金上昇時の追加給付 | 学費の10% | 年間8万円 |
| 合計(条件を全て満たした場合) | — | 最大192万円 |
この制度を利用するには入学前にハローワークでキャリアコンサルティングを受ける必要があります。
入学後では手続きができないため、進学を検討しはじめた段階で最寄りのハローワークに相談しておくとよいでしょう。
日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構が提供する奨学金は、専門学校の学生も対象です。
給付奨学金(返済不要)と貸与奨学金(返済必要)の2種類があります。
給付奨学金は世帯収入基準を満たす学生が対象となり、月額2万〜7万5,000円が支給されます。
貸与奨学金には無利子の第一種と有利子の第二種があり、月額2万〜12万円の範囲で借りることができます。
進学前から申請に備えて世帯収入の確認と書類準備を進めておくとよいでしょう。
学校独自の奨学金・特待生制度
多くの養成学校が独自の奨学金制度や特待生制度を設けており、成績や経済的事情に応じて学費の一部が免除・減額されます。
学校ごとに制度の内容や対象条件が異なるため、オープンキャンパスや入試説明会で具体的な条件を確認しておきましょう。
社会人入学者向けに医療系有資格者の学費減額制度を設けている学校もあります。

社会人や主婦が働きながら鍼灸師を目指す最も現実的な方法は夜間部のある専門学校に通うことであり、日中の仕事や家事を続けながら最短3年での資格取得が可能です。
多くの養成専門学校が夜間部を設けており、入学者の大半が社会人経験者という環境も整っています。
「今さら学校に戻るのは…」という不安を感じる方もいると思いますが、実際の養成学校の現場では30代・40代の入学者がごく一般的な光景になっています。
夜間部の最大の利点は、日中の収入を維持しながら資格取得を目指せることです。
正社員として働きながら学費を自力でまかなえる点は、多くの社会人にとって現実的な選択肢になります。
夜間部の授業時間は学校によって異なりますが、多くの場合18時頃から21時過ぎまでの時間帯に設定されています。
東洋鍼灸専門学校(東京)の夜間部では18:00〜21:10が標準の授業時間です。
土日・祝日は授業がない学校も多く、週末を家族との時間や休養に充てることができます。
下表は、会社員が夜間部に通う場合の平日のスケジュールの目安です。
| 時間帯 | 行動 |
|---|---|
| 7:00〜 | 起床・朝食・出勤準備 |
| 8:30〜17:30 | 仕事 |
| 17:30〜17:50 | 移動(職場から学校へ) |
| 18:00〜21:10 | 授業(夜間部) |
| 21:30〜 | 帰宅・夕食・入浴 |
| 22:30〜23:30 | 復習・翌日の予習 |
| 24:00頃 | 就寝 |
夜間部に通ううえで現実的に難しいのは、残業の多い職種との両立です。
定時退社が基本的に難しい職場環境の場合、授業開始に間に合わない日が続くリスクがあります。
入学前の段階で勤務先に理解を求めるか、残業が少ない業務に異動・転職してから入学するというケースも少なくありません。
夜間部での3年間を乗り越えるために重要な点は3つあります。
まず勤務先の理解と協力を得ること、次に授業のない週末に予習・復習の時間を確保すること、そして試験前の繁忙期が仕事と重なる場合の年間計画を事前に立てておくことです。
国家試験は毎年2月下旬に実施されるため、職場での繁忙期と重なる方は特に注意が必要です。
主婦の方の場合は夜間部の時間帯に家族のサポートが必要になります。
夕食・育児・家事の分担を家族と事前に話し合い、3年間の見通しを共有しておくことが学業継続の鍵になります。
東洋鍼灸専門学校に寄せられた入学の理由のひとつには「子育てをしながら通える時間割だったこと」という声があり、育児との両立を前提に選んでいる学生も実際に在籍しています。
鍼灸師養成学校に年齢制限はなく、30代・40代の入学者は多くの学校で主力層を占めています。
東洋鍼灸専門学校の公式データによると、2024年4月入学全学生の平均年齢は42歳であり、在籍する学生の年齢は18歳から60歳まで幅広く分布しています。
また昼間部・夜間部ともに、大学(大学院)卒業または在学中の入学者が約60%を占め、高校新卒直後の入学者は少数派です。
多様な職業経験を持つ方々が学ぶ環境が整っているといえます。
| データ項目 | 数値 |
|---|---|
| 入学生の平均年齢(2024年入学生) | 42歳 |
| 在籍年齢の幅 | 18歳〜60歳 |
| 男女比(2024年入学生) | 男性26%・女性74% |
| 昼間部の大学(大学院)卒業・在学者の割合 | 60% |
| 夜間部の大学(大学院)卒業・在学者の割合 | 61% |
社会人として積んできた経験は、鍼灸師を目指す過程での大きな強みになります。
仕事を通じて培ってきた患者対応のコミュニケーション力・時間管理の習慣・業務における責任感は、臨床実習や就職後の施術現場で直接役立つ素養です。
また、東洋医学と疾患の関係を学ぶ際に、自身や家族の健康課題を実体験として重ねられる点も、学習の理解を深める要素になります。
実際に入学している方々の職歴は多岐にわたります。
東洋鍼灸専門学校への入学者の前職として確認されているものには、看護師・理学療法士・介護福祉士などの医療・福祉職のほか、一級建築士・高校教員・美容師・調理師なども含まれており、まったくの異業種からの転身者も多数います。
「年齢的に遅すぎる」と感じる必要はなく、40代での入学も珍しくない環境が整っています。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、鍼灸師の平均年収は約459万3,000円であり、就職先・勤務形態・経験年数によって300万円台から開業後は1,000万円超まで幅があります。
年収は働く場所と雇用形態によって大きく左右されます。
就職先ごとの特徴と収入水準を理解したうえで、自分のキャリアビジョンに合った職場を選ぶことが重要です。
鍼灸師の年収は、雇用形態と経験年数の組み合わせによって段階的に変化します。
厚生労働省の統計データと求人情報の傾向を合わせると、勤務スタッフとしての年収は350万〜450万円がボリュームゾーンとなっています。
| 勤務形態・経験 | 月収の目安 | 年収の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 新卒・就職1年目 | 約20万〜25万円 | 約280万〜330万円 | 初任給は学校・施設により差あり |
| 勤務3〜5年目 | 約25万〜30万円 | 約350万〜400万円 | 技術の習熟と実績の積み上げ期 |
| 勤務10年以上 | 約30万〜40万円 | 約400万〜500万円 | 指名患者の増加・管理職への昇格も |
| 独立開業(軌道乗った後) | 収入は経営次第 | 約700万〜800万円以上 | 経営力と集客が収入を左右 |
出典: 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」、 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)が示す平均年収約459万円は、すべての経験年数と勤務形態を含んだ数値です。
就職1〜3年目の初期段階の年収は280万〜330万円程度が実態であるため、平均値だけを見て期待値を設定するのは注意が必要です。
給与形態は、毎月一定額が支給される固定給と、担当患者数・指名数に連動する歩合制の2種類があります。
固定給は収入が安定するメリットがある反面、実力が年収に反映されにくい面もあります。
歩合制は技術力と患者対応力が高いほど収入が伸びますが、患者数が少ない時期の収入変動リスクを伴います。
どちらを選ぶかは自身の技術への自信と収入の安定性のバランスで判断するとよいでしょう。
独立開業は鍼灸師の代表的なキャリアパスの一つです。
開業した場合の年収は経営次第で大きく変動しますが、軌道に乗った鍼灸院では700万〜800万円以上の年収になる事例も多く、優れた施術技術に加えて経営・集客のスキルが収入を決定づけます。
鍼灸師が働ける就職先は多様です。
厚生労働省の令和4年衛生行政報告例によると、はり・きゅうを専門とする施術所の数は2022年時点で全国33,986か所あり、2020年の32,103か所と比べて2年間で1,883か所増加しています。
施術所の数は一貫して増加傾向にあります。
以下は代表的な就職先の種類と特徴をまとめたものです。
| 就職先の種類 | 年収の目安 | 仕事の特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 鍼灸院・鍼灸整骨院 | 350万〜450万円 | 東洋医学を中心とした施術、幅広い症状への対応 | 鍼灸の基礎技術を深く磨きたい人 |
| 整骨院(柔道整復師との協働) | 320万〜420万円 | 柔道整復師と連携しながら鍼灸を提供 | チームで働くことを好む人 |
| 病院・クリニック(リハビリ部門等) | 350万〜450万円 | 医師と連携した医療機関内での施術 | 医療の現場で専門性を高めたい人 |
| 介護施設・老人保健施設 | 320万〜420万円 | 高齢者向けの機能維持・QOL向上のための施術 | 高齢者の療養を長期的にサポートしたい人 |
| 美容サロン(美容鍼灸) | 350万〜500万円 | 肌質改善・リフトアップなど美容目的の施術 | 美容分野に関心がある人・女性客を多く担当したい人 |
| スポーツ施設・スポーツチーム | 300万〜450万円 | アスリートのコンディショニングと障害予防 | スポーツ鍼灸に特化したキャリアを築きたい人 |
| 訪問鍼灸(在宅での施術) | 350万〜450万円 | 患者宅を訪問して行う出張施術 | 地域の高齢者在宅医療に携わりたい人 |
| 独立開業 | 経営次第 | 自院の経営全体を担う。施術+集客+経営管理 | 将来的に自分の治療院を持ちたい人 |
就職先として最も多いのは鍼灸院・鍼灸整骨院で、鍼灸師の主な活躍の場となっています。
近年は美容鍼灸への注目が高まっており、美容サロンや美容クリニックにおける鍼灸師の需要が増加しています。
スポーツ鍼灸はプロスポーツチームのトレーナーや、スポーツジム・コンディショニング施設での勤務が代表的なルートです。
アスリートとの距離が近く、試合に向けたコンディショニングに携われるやりがいがある職場ですが、求人数は鍼灸院・整骨院と比べると限られています。
訪問鍼灸は、高齢化社会の進展とともに需要が拡大している分野です。
外出が困難な高齢者や在宅療養中の患者さんのもとを訪問して施術を行う形態であり、医師の同意書のもとで保険適用の施術を提供することもできます。

矢野経済研究所の2026年調査によると、2025年の柔道整復・鍼灸・マッサージ市場規模は前年比101.1%の1兆70億円に達しており、高齢化社会の進展と自費施術へのシフトを背景に市場は堅調に推移しています。
鍼灸師の就業者数も増加傾向にあります。
厚生労働省の衛生行政報告例に基づくデータによると、はり師の就業者数は2014年の10万8,537人から2024年には13万6,736人へ、きゅう師は10万6,642人から13万4,730人へと10年間でそれぞれ約26%増加しました。
鍼灸師の需要拡大を支える最大の構造的要因は、日本の高齢化の進展です。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となった2025年以降も、さらに高齢者人口は増加を続ける見通しです。
鍼灸施術は慢性疼痛(肩こり・腰痛・神経痛など)に対する効果が広く知られており、高齢者が主要な患者層を構成しています。
厚生労働省の統計でも、鍼灸関連の療養費は年々緩やかに上昇しており、高齢者増加が療養費を押し上げる構造的な背景となっています。
また、世界保健機関(WHO)も鍼灸の有効性を認定しており、医療補完療法としての国際的な評価も高まっています。
とはいえ、市場全体の拡大がそのまま個々の鍼灸師の収入増加を意味するわけではない点は理解しておく必要があります。
施術所数も年々増加しており、厚生労働省の令和4年衛生行政報告例では全国のはり・きゅう施術所数は33,986か所に達しています。
競合が増えるほど1か所あたりの集客は難しくなる傾向があり、矢野経済研究所も「同業者や周辺業種との競合激化による患者数の減少への対応」を業界の主要課題として指摘しています。
需要の拡大と競争の激化が同時に進んでいる状況の中では、専門性の確立・差別化・地域ニーズへの対応が、鍼灸師として長く活躍するうえでのカギとなっています。
従来の鍼灸院・整骨院での施術にとどまらず、3つの専門分野が近年特に伸びています。
それぞれの特徴と需要の背景を理解しておくことは、就職先やキャリア設計を考えるうえでも重要です。
美容鍼灸
美容鍼灸とは、顔や身体に鍼を施すことでコラーゲン生成促進・血行改善・リフトアップ効果などを図る美容目的の施術のことです。
外科的施術に頼らない自然なエイジングケアへの関心の高まりを背景に、30〜50代の女性を中心に受けるケースが急速に増加しています。
顧客の満足度が高く単価も設定できる点から、自費施術として収益が安定しやすい分野といえます。
近年は男性の需要も広がっており、客層の幅が広がっています。
スポーツ鍼灸
スポーツ鍼灸とは、アスリートや運動習慣のある人々のコンディショニング・疲労回復・スポーツ障害の予防・回復を目的とした鍼灸施術のことです。
プロスポーツチームのスタッフとして採用されるケースや、スポーツジムやフィットネスクラブに併設された施術室で働くケースが増えています。
健康志向の高まりとスポーツ人口の拡大が需要を支えており、スポーツ医学・リハビリテーション分野との連携が広がっています。
訪問鍼灸
訪問鍼灸とは、外出が困難な高齢者や在宅療養中の患者さんのもとを鍼灸師が訪問して行う出張施術のことです。
医師が施術について同意した場合、健康保険の療養費を適用することができます。
高齢化に伴う要介護・要支援認定者数の増加を背景に、在宅ケアニーズが拡大しており、訪問施術の需要は今後も増え続ける見通しです。
施術院への通院が難しい患者層をカバーできる点から、鍼灸院の新たな収益の柱としても注目されています。
| 成長分野 | 主な対象 | 需要拡大の背景 | 施術の目的 |
|---|---|---|---|
| 美容鍼灸 | 女性・男性の美容目的 | アンチエイジング需要の高まり | リフトアップ・肌質改善・疲労回復 |
| スポーツ鍼灸 | アスリート・運動愛好者 | スポーツ人口拡大・健康志向の強まり | コンディショニング・障害予防 |
| 訪問鍼灸 | 高齢者・在宅療養患者 | 高齢化社会・在宅ケアの拡大 | 慢性疼痛改善・QOL向上(保険適用あり) |

鍼灸師免許を取得してから収入が安定するまでの期間は一般的に3〜5年が目安であり、就職してスキルを習熟しながら専門性を高め、その後に独立開業やキャリアアップという段階を踏むことが現実的なルートです。
資格取得がゴールではなく、むしろ施術家としてのキャリアはここからスタートします。
就職後の3年間にどこに力を注ぐかと、その先の選択肢をあらかじめ意識しておくことが、収入の安定と長期的な活躍につながります。
就職1〜3年目は、施術技術の基礎を現場で定着させる最も重要な時期です。
養成学校で学んだ知識と実技を、実際の患者さんへの施術の中で繰り返し磨くことが最優先の課題となります。
1年目のテーマは「失敗を恐れずに症例を積む」ことです。
学校で学んだ解剖学・経絡経穴の知識が実際の症状にどうつながるかを体感し、先輩鍼灸師から施術の組み立て方を学ぶ期間です。
患者さんとのコミュニケーションも重要なスキルのひとつであり、問診から施術後のフォローまでの流れを意識的に学ぶとよいでしょう。
2年目からは「得意な分野を見つける」ことを意識しましょう。
腰痛・肩こりなどの運動器疾患、婦人科系疾患、スポーツ障害、美容鍼灸など、自分が特に興味を持てる専門分野が見えてきます。
専門性を絞ることは競合との差別化につながり、将来の独立や転職でも強みとなります。
3年目は「指名患者・リピーターの基盤をつくる」段階です。
技術の評価は施術の効果だけでなく、患者さんとの関係性によっても大きく左右されます。
丁寧な問診・継続的な経過管理・生活習慣へのアドバイスなど、技術以外のサポート力が指名数の増加につながります。
| 年次 | テーマ | 重点行動 |
|---|---|---|
| 1年目 | 基礎技術の定着 | 症例数を稼ぐ・先輩から施術の組み立てを学ぶ |
| 2年目 | 専門分野の探索 | 興味のある領域に積極的に取り組む・勉強会参加 |
| 3年目 | リピーター基盤の構築 | 担当患者との関係深化・指名患者数の増加を意識 |
この3年間をどのような職場環境で過ごすかが重要です。
1日あたりの施術患者数が多く、先輩鍼灸師が丁寧に指導してくれる職場を選ぶことが、技術の伸びに直結します。
鍼灸院の独立開業は多くの鍼灸師が描くキャリアパスですが、費用と成功の条件を現実的に把握しておくことが重要です。
開業にかかる総費用は開業形態によって大きく異なります。
日本医専の情報をもとにすると、一般的には300万〜800万円が目安であり、テナントを借りて開業する場合は500万〜800万円以上、自宅の一部を活用する自宅開業や出張専門の場合は300万円前後での開業も可能とされています。
| 費用項目 | テナント開業の目安 | 自宅・出張開業の目安 |
|---|---|---|
| 物件取得費(敷金・礼金等) | 100万〜250万円 | 不要または大幅削減 |
| 内装・改装費 | 100万〜300万円 | 30万〜80万円程度 |
| 施術設備・備品費 | 50万〜150万円 | 20万〜50万円程度 |
| 広告宣伝費(HP等) | 30万〜50万円 | 20万〜30万円程度 |
| 運転資金(6〜12ヶ月分) | 100万〜200万円 | 50万〜100万円程度 |
| 合計目安 | 500万〜800万円以上 | 150万〜300万円程度 |
開業後の収入は経営力と集客力に大きく依存します。
1人経営の鍼灸院では、客単価5,000〜8,000円・1日5〜8人・月22日稼働の場合、月商60万〜120万円が一つの目安です。
そこから賃料・消耗品・保険料などの経費を差し引いた手取り(事業所得)は月25万〜50万円程度になることが多く、安定した経営には半年〜1年の運転資金の確保が欠かせません。
開業資金の調達先として代表的なのは、日本政策金融公庫の新創業融資制度です。
自己資金が必要融資額の3分の1程度あると審査に通りやすいとされており、開業前から計画的に資金を積み立てておくとよいでしょう。
開業が軌道に乗るための条件として、開業前からの患者コミュニティの育成・SNSや口コミでの認知獲得・地域の医療機関や介護施設との連携が重要な要素となります。
施術技術だけでなく、集客・経営の基礎知識を勤務中から意識して学んでおくことをおすすめします。
鍼灸師の資格に加えて、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師の資格を取得するダブルライセンスという選択肢があります。
追加の養成学校への3年通学が必要ですが、施術の幅と就職先の選択肢が大きく広がります。
柔道整復師とのダブルライセンス
柔道整復師とは、骨折・脱臼・捻挫・打撲などの外傷に対して施術を行う国家資格者のことです。
鍼灸師と組み合わせることで、急性のケガは柔道整復師の技術で対応し、慢性的な疼痛や体質改善は鍼灸でアプローチするという、幅広い症状に対応できる施術者になれます。
整骨院・接骨院での就職機会が広がるほか、独立開業後に鍼灸整骨院として保険診療と自費診療の両方を手がけることもできます。
あん摩マッサージ指圧師とのダブルライセンス
あん摩マッサージ指圧師とは、あん摩・マッサージ・指圧の施術を行う国家資格者のことです。
鍼灸師とのダブルライセンスを持つことで、鍼灸施術に加えてマッサージ施術を提供できるようになります。
また、あん摩マッサージ指圧師は機能訓練指導員として介護施設で働くことができるため、高齢化社会の中で需要が伸びている在宅医療・介護分野での活躍の幅が広がります。
なお、2026年時点であん摩マッサージ指圧師の受験資格が得られる教育機関は専門学校・短期大学に限られており、大学での取得はできません。
進学先の選択肢を確認しておくことが重要です。
| 資格の組み合わせ | 対応できる施術の幅 | 活躍できる主な場所 |
|---|---|---|
| はり師・きゅう師のみ | 鍼灸施術 | 鍼灸院、美容サロン、スポーツ施設、訪問鍼灸 |
| 鍼灸師+柔道整復師 | 鍼灸施術+外傷処置 | 鍼灸整骨院、接骨院、スポーツ施設 |
| 鍼灸師+あん摩マッサージ指圧師 | 鍼灸施術+マッサージ | 鍼灸マッサージ院、訪問施術、介護施設 |
ダブルライセンスの取得は追加で3年間の養成学校通学と300万〜500万円程度の学費が必要です。
最初から2つの資格を目指すルートと、鍼灸師として数年間働いたあとに取得するルートがあります。
社会人として働きながら夜間部で取得する方法もあります。
鍼灸師になるには最短3年かかります。
厚生労働大臣または文部科学大臣が認定した養成施設(専門学校・大学・短期大学)で3年以上修学し、国家試験に合格することが条件です。
最も早く資格を取得できるのは3年制の専門学校です。
4年制の大学を選んだ場合は修業年限が1年長くなるため、最短でも4年かかります。
国家試験の合格発表は毎年3月下旬に行われ、合格後に免許を申請することで正式にはり師・きゅう師として就業できるようになります。
独学や通信教育のみでは鍼灸師の国家資格を取得できません。
はり師・きゅう師は身体に直接触れる施術を行う医療系国家資格であり、安全に施術を行うための実技習得が法律上の要件となっています。
そのため、厚生労働大臣または文部科学大臣が認定した養成施設に3年以上通学することが受験資格の条件です。
オンラインで一部の座学を受講できるハイブリッド型のカリキュラムを導入している学校もありますが、実技授業と臨床実習は対面での参加が必須です。
働きながら目指したい場合は、夜間部のある専門学校への通学が現実的な方法です。
社会人から鍼灸師に転職することは十分に現実的です。
東洋鍼灸専門学校の公式データでは、2024年4月入学生の平均年齢は42歳であり、在籍学生は18歳から60歳まで幅広い年齢層で構成されています。
養成学校には年齢制限がなく、30代・40代の入学者が主力層を占めている学校も多くあります。
夜間部のある専門学校を選べば、日中の仕事を続けながら3年間で資格取得を目指すことができます。
社会人として働きながら通学する場合、雇用保険に2年以上加入していれば専門実践教育訓練給付金(最大192万円)を活用して学費を抑えることも可能です。
はり師ときゅう師はそれぞれ独立した別々の国家資格です。
はり師は鍼を使って人体の経穴(ツボ)を刺激し、自然治癒力を高める施術を行う資格であり、きゅう師はもぐさなどを使った灸によってツボを温熱刺激する施術を行う資格です。
どちらも厚生労働大臣が交付する免許であり、受験資格を得るには同じ養成施設で3年以上修学する必要があります。
2つの試験は同じ日程で実施されるため、ほとんどの受験者がはり師・きゅう師を同時に受験します。
実際の施術現場では両方の免許を持つ施術者がほとんどであり、鍼灸師という呼び名ははり師ときゅう師の両方を取得した人の職業上の名称です。
鍼灸師の国家試験は医療系国家資格の中では著しく難しいとは言えず、正答率60%以上で合格できる絶対評価の試験です。
厚生労働省が発表した第34回国家試験(2026年2月実施)の結果では、はり師の合格率は67.2%、きゅう師は70.5%でした。
過去5年間の合格率はおおむね67〜76%の範囲で推移しており、医師・薬剤師・歯科医師などの国家試験と比べると合格率は高水準です。
合格基準は170点満点中102点以上の絶対評価であり、受験者同士の競争で合否が決まるわけではありません。
試験の難易度は年度によって変動しますが、3年間の養成学校での学習を積み上げ、過去問演習を繰り返せば十分に合格を目指せる試験といえます。