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「社労士の年収って実際どのくらいなの?」と気になっている方は多いのではないでしょうか。
厚生労働省の公的データでは1,134.6万円という数字が示される一方、実態調査では年収500万円未満が全体の4割近くを占めるという二面性があります。
この差が生まれる理由は、勤務か開業かという働き方の違いにあります。
本記事では、複数の公的機関データと2024年度社労士実態調査の25,408人分のデータをもとに、社労士の年収の現実を勤務形態別・男女別・年齢別・地域別に徹底整理します。
年収を上げる具体的な方法や将来性についても詳しく解説しますので、社労士への転職・開業・資格取得を検討している方はぜひ参考にしてください。
社会保険労務士の年収は、参照するデータによって大きく異なる数字が出ます。
これは、勤務社労士と開業社労士とで収入の仕組みがまったく異なるためです。
まず複数の公的データを整理することで、社労士の年収の全体像を正確につかみましょう。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」では、令和6年賃金構造基本統計調査をもとに、社会保険労務士の平均年収を1,134.6万円と公表しています。
一方、令和6年賃金構造基本統計調査の職種別データを見ると、勤務社労士の平均年収は約817万円、開業登録社労士の平均年収は約821万円という数字が確認できます。
これらは給与月額と年間賞与を合算した数値であり、全国の雇用されている社労士を対象としています。
また、全国社会保険労務士会連合会が実施した「2024年度社労士実態調査」では、実務者の収入分布についてより詳細なデータが公表されています。
| 調査データの出典 | 社労士の年収水準 |
|---|---|
| 厚生労働省 job tag(令和6年賃金構造基本統計調査もとに作成) | 平均1,134.6万円 |
| 令和6年賃金構造基本統計調査(勤務社労士) | 平均約817万円 |
| 令和6年賃金構造基本統計調査(開業登録社労士) | 平均約821万円 |
| 全国社会保険労務士会連合会 2024年度実態調査(開業) | 年収500万円未満が36.5%、1000万円以上が33.8% |
| 全国社会保険労務士会連合会 2024年度実態調査(勤務) | 300万円以上600万円未満が最多で38% |
これだけデータによって数字が異なるのは、調査対象の属性や集計方法に違いがあるためです。
job tagの数値が高いのは、ある程度のキャリアを積んだ層が多くサンプリングされている可能性があります。
一方、実態調査の分布を見ると、開業社労士の年収には非常に大きなばらつきがあることがわかります。
社労士の年収を考えるうえでは、この「ばらつきの大きさ」こそが最も重要なポイントといえます。
資格を持っているだけでなく、どのような働き方を選択するかで、年収は大きく変わるのが社労士という職業の特徴です。
社労士の働き方は大きく2種類に分かれます。
企業や社労士事務所に雇用されて働く「勤務社労士」と、自らが事務所を開設して働く「開業社労士」です。
この2つの形態では、年収の仕組みがまったく異なります。
勤務社労士は毎月安定した給与を受け取る形になるため、収入の安定感は高いです。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度実態調査によると、勤務社労士の年収は300万円以上600万円未満の層が全体の38%を占めており、次いで600万円以上900万円未満が25.0%となっています。
年収1,200万円以上の層はわずか5.8%にとどまっており、勤務形態である以上、年収の上限は役職や企業規模に依存する部分が大きいといえます。
開業社労士は、顧問先の数や業務の単価によって年収が大きく左右されます。
同調査では、年収500万円未満の層が36.5%と最多である一方、年収1,000万円以上の層も全体の33.8%を占めています。
つまり、開業社労士の年収は「低収入層」と「高収入層」に二極化する傾向が顕著です。

開業直後はゼロベースから顧客を獲得していく必要があるため、安定した収入を得るまでに3年から5年程度かかるケースが多いとされています。
| 勤務形態 | 年収の特徴 | 月収の目安 | 年間賞与の目安 |
|---|---|---|---|
| 勤務社労士 | 安定した給与収入、年収上限は役職次第 | 約56.9万円 | 約134.8万円 |
| 開業社労士 | 顧問先次第で高収入も低収入も。二極化が顕著 | 約51.2万円 | 約205.6万円 |
開業社労士の場合、月収や賞与という概念は「顧問報酬」や「スポット収入」という形で置き換わるため、上記は雇用形態で開業している場合や、法人形態での平均的な報酬額としての参考値です。
自営の場合は売上から経費を差し引いた所得が実質的な収入になります。
社労士の収入水準を正確に評価するには、日本全体の給与水準と比べることが欠かせません。
国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円です。
男性は587万円、女性は333万円となっています。
この数字と社労士の平均年収を比較すると、以下のようになります。
| 比較対象 | 年収 | 社労士との差(勤務ベース) |
|---|---|---|
| 社労士の平均(勤務、令和6年賃金構造基本統計調査) | 約817万円 | 基準 |
| 社労士の平均(job tag、令和6年賃金構造基本統計調査) | 約1,134.6万円 | 基準 |
| 日本の給与所得者全体の平均給与(国税庁、令和6年) | 478万円 | 約339万円の差 |
| 日本の男性給与所得者の平均給与(国税庁、令和6年) | 587万円 | 約230万円の差 |
| 日本の女性給与所得者の平均給与(国税庁、令和6年) | 333万円 | 約484万円の差 |
| 正社員の平均給与(国税庁、令和6年) | 545万円 | 約272万円の差 |
勤務社労士ベースで比較しても、日本の給与所得者全体の平均を300万円以上上回っていることがわかります。
特に女性にとっては、社労士資格を取得することで日本の女性平均の約2.5倍近い年収水準を目指せるということになり、キャリアアップとしての価値は非常に高いといえます。
実態調査が示すように、勤務社労士のなかでも300万円台の年収にとどまるケースがあります。
資格を取得したことで自動的に高収入になるわけではなく、どのような環境でどのような業務を担うかが、実際の収入を左右します。
社労士の資格はあくまで高収入を目指すための「土台」であり、その上にどのようなキャリアを積み上げるかが重要だというのが、業界の現実に近い見方です。
勤務社労士の年収は、どこに勤務するかによって大きく変わります。
同じ「勤務社労士」という括りであっても、社労士事務所に勤めるケースと一般企業の人事部門に所属するケースでは、収入の構造も水準もまったく異なります。
まずその前提を押さえておきましょう。
株式会社MS-Japanが2023年に公表した社労士の雇用実態調査によると、社労士資格保有者のうち社労士事務所スタッフの平均年収は440万円、一般企業の人事担当者では622万円と、同じ資格を持ちながら180万円以上の差があることが確認されています。
この差が生まれる背景には、勤務先企業の規模や報酬設計の違いが大きく関わっています。

社労士事務所に勤務する場合、主な仕事内容は顧問先企業の給与計算・社会保険手続き・労務書類の作成といった実務処理が中心になります。
業務量は多く、社労士としての実務スキルを磨く場として有効ですが、収入面では事務所の規模や経営方針に大きく依存します。
資格取得直後の社労士が事務所に就職した場合、年収の目安は350万円から450万円程度が一般的です。
その後、担当クライアント数の拡大や業務範囲の広がりとともに収入が上昇するケースがほとんどですが、個人事務所の場合は福利厚生が限定的なことも多く、年収の天井が早い段階で見えてしまうことがあります。
大手社労士法人であれば、管理職への昇格に伴い年収600万円から800万円台に達するケースも見られます。
一般企業の人事部門や総務部門に勤務社労士として採用される場合は、状況が異なります。
企業規模が大きいほど賃金テーブルが整備されており、資格手当が上乗せされる仕組みが整っているケースも多いです。
ハイクラス転職支援のJAC Recruitmentの実績データによると、勤務社労士の平均年収は817.6万円とされており、管理職層では1,000万円を超える事例も報告されています。
IPO準備企業や外資系企業の労務部門では、年収800万円から1,200万円の求人も珍しくないといいます。
| 勤務先の種類 | 年収の目安 | 年収の特徴 |
|---|---|---|
| 社労士事務所(個人事務所) | 350万円〜550万円 | 実務経験が積めるが収入の天井が低め |
| 社労士事務所(大手法人) | 500万円〜800万円 | 組織的なキャリアパスあり、管理職で上振れ |
| 一般企業 人事・総務部門 | 450万円〜700万円 | 企業規模に依存、資格手当が加算されるケース多い |
| 大手企業・外資系 人事部門 | 700万円〜1,200万円 | 戦略人事・労務DD対応ができる人材は高評価 |
| 人事労務コンサルティング会社 | 500万円〜800万円 | 英語力や他資格保有者は800万円以上も |
同じ勤務社労士でも、勤務先の業種や企業規模によってここまで差が開くのが実情です。
転職を検討する際には、単純に「社労士資格があるから」という理由だけで収入を期待するのではなく、自分が活躍できる業種・規模・役割を具体的に想定した上で動くことが大切といえます。
勤務社労士の年収は、役職の上昇に伴って段階的に伸びる傾向があります。
2024年度社労士実態調査によると、勤務社労士の勤務先での役職は「役職なし」が約4割超を占める一方、課長クラス以上の管理職層も一定数存在することが確認されています。
賃金構造基本統計調査の職種横断データを参考にすると、一般的な賃金水準では課長級の月収が約49万円、部長級が約59万円とされています。
社労士資格を持ちながら管理職ポジションに就いた場合、これに資格手当や専門職手当が加算される形になるため、役職が上がるほど年収の伸び幅も大きくなるといえます。
JACのデータによると、部長クラスの勤務社労士の年収は1,300万円から1,500万円台の事例も確認されており、戦略的な人事・労務管理に携われる役職に就くことが年収アップの大きな鍵になります。
役職と年収の関係をまとめると、以下のようになります。
| 役職の目安 | 年収の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 一般職(資格あり) | 350万円〜550万円 | 資格手当が加算されるケースあり |
| 主任・チームリーダー | 500万円〜650万円 | 業務範囲の広さが年収を左右 |
| 課長クラス | 650万円〜900万円 | 人事制度設計や組織運営に関与する層 |
| 部長クラス | 900万円〜1,500万円 | 経営課題に関与する戦略人事ポジション |
| 役員クラス | 1,200万円以上 | 労務担当役員や執行役員レベル |
企業規模や業種によって大きく異なるため、参考値として捉えていただくとよいでしょう。
勤務社労士として働いていても、年収が思ったように伸びないと感じている人もいるのではないでしょうか。
その背景にはいくつかの構造的な要因があります。
まず、社労士事務所に勤務している場合、業務の多くが定型的な手続き業務に集中しやすく、付加価値の高いコンサルティング業務に携わる機会が限られることがあります。
書類作成や手続き代行は社労士の独占業務であり非常に重要ですが、単価が高い業務とは言いにくく、1人が担当できる件数にも限りがあるため、収入の上昇幅が小さくなりがちです。
次に、中小企業の人事部門に勤務している場合、資格保有者であることが評価されていても、企業全体の賃金体系が硬直的であれば、資格手当以上の昇給が期待しにくいこともあります。
社労士資格の価値を給与に反映させる仕組みが整っていない企業も少なくないのが現状です。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度実態調査でも、勤務社労士のうち年収1,200万円以上の層はわずか5.8%にとどまっており、高年収を実現している人は一部に限られます。
年収を本格的に引き上げたいと考える勤務社労士の多くが、コンサルタント職への転身や独立開業を視野に入れるようになる理由は、こうした収入構造の限界にあるといえます。
年収が伸び悩みやすい勤務環境の特徴としては、以下の点が挙げられます。
このような状況に当てはまると感じる場合、転職による環境の変化を検討するか、社内でコンサルティング業務や人事制度設計に関わるプロジェクトへの参加を積極的に求めていく方向が、年収アップへの現実的なルートとして考えられます。
開業社労士の年収は「青天井」とよく言われます。
ただしそれは、実力と努力次第で高収入が実現できるという意味であり、独立すれば誰でも高収入になれるわけではありません。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査によると、開業社労士の事務所あたりの年間売上は平均1,658万円である一方、売上の中央値は550万円です。
平均値と中央値の差が1,100万円以上開いている事実が、開業社労士の年収の二極化を如実に示しています。

開業社労士が最初に直面するのは、ゼロからの顧客獲得です。
既存の人脈や前職での信頼関係がある場合を除き、開業直後は顧問先がほぼゼロの状態からスタートすることも珍しくありません。
このため、開業1年目から3年目は収入が不安定な時期が続くのが一般的です。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度実態調査をもとにした開業年数別の売上推移を参照すると、以下のような変化が確認できます。
| 開業年数 | 売上500万円未満の割合 | 売上1,000万円以上の割合 |
|---|---|---|
| 開業5年未満 | 過半数超 | 少数 |
| 開業5〜9年 | 半数以下に減少 | 約30%近くに増加 |
| 開業10〜14年 | さらに減少 | 約40%近くに増加 |
| 開業15年以上 | 少数派 | 約半数近くに到達 |
この推移から読み取れるのは、開業社労士の年収は「時間をかけてじわじわと育つ」という構造です。
独立してから5年間は我慢の時期となるケースが多く、収益が安定するまでには一般的に3年から5年かかるとされています。
また、社会保険労務士白書2024年版に示された「平均的な開業社労士像」は、開業歴13年・2人体制・年間売上1,658万円とされています。
つまり、10年以上かけてようやく平均水準に達するというのが、開業社労士の現実的な成長曲線です。
開業を検討する場合は、この期間を見越した資金計画と生活設計が必要といえます。
開業社労士の収入の柱は、大きく2種類に分かれます。
1つは毎月定額で収入が入る「顧問契約報酬」、もう1つは就業規則の作成や助成金申請代行など一件ごとに収入が発生する「スポット業務報酬」です。
2024年度社労士実態調査によると、開業社労士の売上に占める顧問契約の割合は71.9%とされています。
顧問契約が収益の根幹を占めており、これが安定経営の土台になることがわかります。
顧問料の相場は企業規模によって異なりますが、1社あたり月額3万円から10万円程度が一般的な水準です。
この前提で顧問契約数と月次収益の関係を試算すると以下のようになります。
| 顧問先数 | 顧問料の月額平均(目安) | 月次収益(概算) | 年間売上(概算) |
|---|---|---|---|
| 10社 | 月3万〜5万円 | 30万〜50万円 | 360万〜600万円 |
| 20社 | 月3万〜5万円 | 60万〜100万円 | 720万〜1,200万円 |
| 30社以上 | 月3万〜5万円 | 90万〜150万円以上 | 1,080万〜1,800万円以上 |
年収1,000万円を目指す場合、安定した顧問契約を30社以上確保し、そこにスポット業務の収入を上乗せしていく組み合わせが現実的なルートとして考えられます。
助成金申請代行については、受給額の15%から25%程度の成果報酬型で設定できるケースが多く、1件あたりで数十万円から数百万円の収入につながることもあります。
2024年度社労士実態調査では、年収1,000万円以上の開業社労士が全体の3割強を占めています。
この層に共通するいくつかの特徴があります。
まず、専門分野を明確に絞り込んでいる点です。
社労士の業務範囲は給与計算・社会保険手続き・就業規則作成・助成金・労務コンサルティング・人事制度設計など非常に幅広いです。
しかし高年収の開業社労士の多くは、特定の業種への特化や、外国人雇用・IPO支援・メンタルヘルス対応など高付加価値の専門領域を持っているという点で共通しています。
浅く広く何でも対応するよりも、特定分野の専門家として知名度を高めることが、高単価案件の獲得につながるからです。
次に、収入の構造を「ストック型」に設計している点です。
顧問契約は一度結ぶと継続的に毎月収入が発生するストック収益です。
顧問先を30社以上確保できると、業務量が安定しやすくなり、スポット業務を上乗せしやすい状態が生まれます。
また、事務所経営を組織化している点も特徴です。
2024年度実態調査によると、開業社労士の事務所の56.4%は社労士本人1人で運営されていますが、高売上層になるほど補助スタッフを雇用して対応件数を増やす傾向があります。
1人でこなせる業務量には上限があるため、スタッフを採用してスケールさせることが年収の天井を引き上げる鍵になります。
年収1,000万円超えの開業社労士に見られる特徴を整理すると以下のようになります。
開業社労士として成功するには、資格の取得よりもこれらの経営・営業スキルが収入を決定的に左右します。
社労士として独立を考えている人は、業務スキルと同時に顧客獲得の仕組みづくりを早い段階から意識しておくとよいでしょう。
社労士の年収は、性別や年齢によっても違いが生じます。
令和6年度の賃金構造基本統計調査をもとにしたデータでは、社労士全体の平均年収は約903.2万円、男性が954万円、女性が790万円となっており、男女差は164万円程度です。
令和6年度賃金構造基本統計調査によると、社労士の男女別年収は男性が約954万円、女性が約790万円で、その差は164万円程度です。
この数字だけを見ると大きな差に感じますが、国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査における男性全体の平均587万円・女性全体の平均333万円という数字と比較すると、社労士の女性の年収水準は女性全体の平均を大幅に上回っていることがわかります。
| 区分 | 社労士の年収 | 日本の給与所得者全体の平均 |
|---|---|---|
| 男性 | 約954万円 | 587万円 |
| 女性 | 約790万円 | 333万円 |
| 男女計 | 約903.2万円 | 478万円 |
出典は令和6年度賃金構造基本統計調査および国税庁令和6年分民間給与実態統計調査
社労士の男女間年収差が生まれる主な背景は、勤続年数や勤務形態の違いです。
令和元年賃金構造基本統計調査の参考データによると、男性勤務社労士の勤続年数は平均12.0年なのに対し、女性は15.9年と女性のほうが長いにもかかわらず年収では差が生じています。
これは、女性社労士が出産・育児を機に一時的にキャリアを中断するケースや、パート・短時間勤務に切り替えることが収入の差に反映されているためと考えられます。
2024年度実態調査では、勤務社労士のうち若い年齢層ほど「賃金面でメリットがあった」と回答する割合が高く、資格取得による収入向上の効果を女性が実感しているという傾向も確認されています。
また、開業社労士の売上においては、年数を重ねるにつれて男女差が縮小していくことが同調査のデータから読み取れます。
開業30年以上の社労士の売上中央値を男女別で見ると、男女ともに2,000万円の水準で並んでいます。
つまり、開業社労士として長くキャリアを積み重ねれば、男女の年収差はほとんど解消される可能性があるといえます。
社労士の年収は、年齢を重ねるにつれて伸びていく傾向があります。
ただしその伸び方は、勤務社労士と開業社労士でパターンが異なります。
勤務社労士の場合、令和元年賃金構造基本統計調査の参考データをもとにすると、男性では30代前半から50代にかけて緩やかに上昇し、60代前半で大きく跳ね上がる傾向があります。
これは、長年キャリアを積んだ管理職層が60代前半に含まれることが影響していると考えられます。
女性の場合は30代後半にピークを迎え、一旦下降した後、50代で再び上昇するW字型の傾向が見られます。
育児や介護による一時的な勤務形態の変化が、40代の数値に影響している可能性があります。
開業社労士については、2024年度社労士実態調査が開業年数別の売上中央値データを公表しており、年齢よりも「開業してからの年数」が収入の伸びに直結しています。
| 開業年数 | 男性の売上中央値 | 女性の売上中央値 |
|---|---|---|
| 5〜9年 | 1,100万円 | 1,000万円 |
| 10〜19年 | 1,500万円 | 1,140万円 |
| 20〜29年 | 1,800万円 | 1,200万円 |
| 30年以上 | 2,000万円 | 2,000万円 |
出典は全国社会保険労務士会連合会 2024年度社労士実態調査詳細版
開業社労士の場合、10〜29年では男性が女性を上回っていますが、30年以上の層では中央値が男女ともに2,000万円で揃います。
この点は、長く開業を続けることで性別を問わず高い収入水準に到達できることを示しており、社労士という資格の性別を超えた収入ポテンシャルを示すデータとして注目できます。
また、同実態調査では「開業時の年齢が若いほど、その後の売上・顧問契約数が伸びる傾向がある」と指摘されています。
30歳前後で開業した場合の事業拡大モデルでは、10年後に売上2,800万円という水準を示すデータも確認されており、早期開業がその後の年収の伸びに有利に働くことがうかがえます。
なお、2024年度実態調査によると、社労士全体の平均年齢は55.5歳であり、40代以上が全体の約8割を占めています。
社労士は社会人経験を積んでから取得するケースが多く、30〜40代での資格取得が一般的です。
そのため、年収の伸びを考える際には「資格取得後の年数」と「開業後の年数」という2つの軸を別々に整理して考えることが、より実態に近い理解につながるでしょう。
社労士の年収は、同じ資格・同じキャリア年数であっても、働く地域によって大きく変わります。
令和5年賃金構造基本統計調査の都道府県別データをもとに主要地域を比較すると、最高と最低の地域で年収差が1,300万円以上に開くことが確認されています。
これは単なる物価水準の違いではなく、地域ごとの産業構造や企業規模、社労士への需要密度の差が年収に直結しているためです。
社労士の年収に地域差が生まれる背景には、いくつかの構造的な要因があります。
まず、顧問先となる企業の規模と数の違いです。
東京や大阪などの大都市圏には、従業員数が多く、社会保険手続きや人事制度設計への需要が大きい企業が集中しています。
企業規模が大きいほど顧問料の単価も上がりやすく、1社あたりの顧問料が月額5万円から10万円以上になるケースも都市部では珍しくありません。
次に、IPO支援・外資系企業対応・労務デューデリジェンスなどの高付加価値業務の需要が都市部に集中しているという点があります。
これらの専門案件は単価が高く、1件で数十万円から数百万円の報酬につながることがあります。
地方では同種の案件がそもそも少ないため、こうした高単価業務を受注する機会が限られます。
勤務社労士についても同様の構造が働きます。
大企業の本社機能や外資系企業の人事部門が集まる都市部では、社労士を採用する企業の給与水準が高く、資格手当以上の収入を得やすい環境が整っています。
2024年度社労士実態調査では、開業年数10〜19年・20〜29年の層では東京都の事務所売上が突出している一方、開業30年以上の層では人口の少ない小規模所属会の売上が最も高くなるという傾向が報告されています。
地方でも長年にわたって地元の企業と信頼関係を築いた社労士は、大都市圏に引けを取らない収入水準を実現できることを示すデータです。

令和5年賃金構造基本統計調査の都道府県別データをもとに、主要地域における社労士の平均年収を比較すると以下のようになります。
| 都道府県 | 平均月給 | 平均年間賞与 | 平均年収(概算) |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 約29.0万円 | 約112.3万円 | 約460万円 |
| 東京都 | 約71.0万円 | 約219.1万円 | 約1,071万円 |
| 大阪府 | 約110.1万円 | 約438.6万円 | 約1,760万円 |
| 福岡県 | 約36.3万円 | 約169.1万円 | 約605万円 |
| 沖縄県 | 約49.6万円 | 約254.9万円 | 約850万円 |
出典は厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 都道府県別
最も年収水準が高い大阪府と最も低い北海道を比較すると、その差は1,300万円以上にのぼります。
この差の大きさは、単純な物価・生活費の差では説明がつかず、業務の質と顧客の規模の違いが大きく影響しています。
なお、この都道府県別データはサンプル数の偏りが生じやすく、特に社労士の登録者数が少ない地域では数値の振れ幅が大きくなる点に注意が必要です。
あくまで大まかな地域傾向を把握するための参考値として捉えていただくとよいでしょう。
東京と地方の年収差を「都市部の有利さ」だけで見るのは一面的です。
都市部は競争が激しく、顧客獲得コストや事務所家賃などの固定費も高い傾向があります。
地方では案件の単価は下がりやすいものの、競合が少ない分で顧問先を安定して維持しやすいという利点もあります。
2024年度社労士実態調査が示すとおり、長いキャリアを積んだ地方の社労士が都市部と同等以上の収入を実現しているケースは現実に存在しており、地域と年収の関係は「短期」と「長期」で異なる見方が必要です。
社労士として転職先や開業地を選ぶ際は、短期的な年収水準だけでなく、その地域における労務需要の動向や、自分が得意とする専門分野との相性も合わせて考慮することが、長期的な収入安定につながるでしょう。
社労士の年収が士業全体の中でどの位置にあるのかを把握しておくと、資格選択やキャリア戦略の判断がしやすくなります。
令和6年賃金構造基本統計調査をもとにした厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」の公表データでは、社会保険労務士の年収は約903万円とされており、他の主要士業と比べると上位グループに位置しています。
job tagが公表している令和6年賃金構造基本統計調査をもとにした各士業の年収水準を比較すると、以下のようになります。
| 士業 | job tag掲載の年収目安 | 試験合格率の目安 | 独占業務の特徴 |
|---|---|---|---|
| 弁護士・司法書士 | 約970万円以上 | 弁護士3〜4%/司法書士4〜5% | 法律事務全般・登記 |
| 公認会計士・税理士 | 約856万円 | 会計士10%前後/税理士科目式 | 監査・税務 |
| 社会保険労務士 | 約903万円 | 約5〜7% | 労務・社会保険手続き |
| 行政書士 | 約551万円 | 約10〜15% | 許認可申請・書類作成 |
| 中小企業診断士 | 約903万円 | 約5〜8% | 経営コンサルティング |
| 不動産鑑定士 | 約700万円 | 約5〜7% | 不動産評価 |
| 土地家屋調査士 | 約500万円 | 約8〜10% | 土地境界測量 |
出典は厚生労働省 職業情報提供サイト job tag(令和6年賃金構造基本統計調査をもとに掲載)
ここで重要な注意点があります。
job tagの社会保険労務士の年収約903万円は、賃金構造基本統計調査上の「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」という区分の数値であり、社労士のみを集計したものではありません。
この区分には証券アナリストや経営コンサルタントなども含まれるため、純粋な勤務社労士の年収はこれより低めになる傾向があります。
実態ベースで見ると、勤務社労士の平均年収は500万円台から650万円台が現実的な水準です。
その前提を踏まえつつ、行政書士の551万円という数字と比べると、社労士は同じ独立開業型の士業の中でも収入水準が高い位置にあるといえます。
行政書士の業務は許認可申請・書類作成が中心で単価が低めになりやすく、年収300万円未満の層も一定数存在しています。
社労士は顧問契約という継続収益モデルが主体であるため、収益の安定性という点でも有利な構造を持っています。
税理士については、勤務税理士で400〜600万円、開業税理士で700〜1,000万円程度が目安とされており、job tagで示されている約856万円は管理職・ベテラン層を含んだ数値と考えられます。
税理士の市場規模は社労士の約8倍ともいわれており、収益機会の総量では税理士が上回っています。
社労士と税理士を比較する場合、純粋な年収の高低よりも「どちらの専門領域に自分が強みを持てるか」という視点で判断するほうが実際のキャリア設計に役立つでしょう。
社労士を他の士業と比較したとき、収入面での強みと注意点がそれぞれあります。
収入面での強みとして、まず顧問契約によるストック型収益モデルが挙げられます。
弁護士や行政書士の業務はスポット型(案件ごと)の収入が多いのに対し、社労士は毎月安定した顧問料が入る継続収益を主軸にしやすい構造があります。
2024年度社労士実態調査によると、開業社労士の売上に占める顧問契約の割合は71.9%に達しており、事業経営の安定性という点で他の士業より有利な面があります。
次に、需要の安定性です。
社労士の業務は労働法・社会保険制度に直結しており、法改正が頻繁に行われる分野です。
働き方改革・ハラスメント対策・外国人雇用・育児休業取得促進など、企業が社会的要請に応えるために社労士を必要とする場面は今後も継続して増えていくと考えられます。
また、女性が活躍しやすい士業である点も特徴のひとつです。
弁護士や税理士と比べて、社労士は男女の年収差が相対的に小さく、育児や介護と両立しながら開業を維持しやすい業務スタイルが取りやすいとされています。
注意点としては、市場規模の上限があります。
社労士業界全体の市場規模は数千億円規模とされており、税理士業界の約2兆円、弁護士業界の数千億円と比べると成長の天井がやや低いという指摘があります。
顧問料の単価も中小企業向けを中心とすると月額3〜5万円程度が標準であり、単価の引き上げには高付加価値業務への転換が必要です。
| 比較軸 | 社労士の立ち位置 |
|---|---|
| 収益の安定性 | 顧問契約中心で高め。スポット型の士業より有利 |
| 市場規模 | 税理士より小さいが、需要は安定して継続 |
| 年収の上限 | 開業で1,000万円以上も可能だが、税理士・弁護士より上限は低め |
| 男女格差 | 他士業より格差が小さく、女性が稼ぎやすい |
| 独立しやすさ | 行政書士と並び即独しやすい士業のひとつ |
| ダブルライセンスの相性 | 税理士・行政書士・中小企業診断士と相性がよい |
ダブルライセンスの観点では、社労士と税理士の組み合わせが特に評価されています。
中小企業の経理・給与・社会保険業務をワンストップで提供できるため、顧問先の解約リスクを下げながら単価を引き上げやすいという実務上の強みがあります。
社労士と中小企業診断士の組み合わせも、労務管理と経営コンサルティングを両立できることで、高付加価値の提案型業務に移行しやすいとされています。
社労士の年収を引き上げるには、資格を取得したこと自体に満足するのではなく、その後のキャリア設計と業務内容の選択が決定的に重要です。
年収アップを実現している社労士には、共通して3つの方向性があります。
専門分野への特化、業務の高付加価値化、そして勤務環境または働き方の見直しです。
社労士の業務範囲は給与計算・社会保険手続き・就業規則作成・助成金申請・労務コンサルティングなど非常に幅広く、何でも対応できる「ジェネラリスト」型の社労士は数多く存在します。
その反面、特定の業種や課題に特化した「スペシャリスト」型の社労士は希少であり、それが高単価につながります。
専門特化の効果が大きい分野の例としては、外国人雇用・障害者雇用支援・IPO支援・医療機関の人事制度設計・建設業の労務管理などがあります。
これらは対応できる社労士が少なく、専門知識が求められるため、顧問料の単価が通常の中小企業向け案件より高くなる傾向があります。
IPO支援の場面では、労務デューデリジェンスや労働条件整備の対応を1件数十万円から数百万円規模のスポット報酬で受注できるケースもあります。
外資系企業向けの英語対応が可能な社労士も、日本国内の一般的な顧問単価より高い水準で契約しやすいとされています。
専門特化を進める際のポイントは、自分の過去の職歴や人脈と掛け合わせることです。
たとえば、以前に医療機関で働いた経験があれば医療業界特化の社労士として差別化しやすく、IT企業出身であれば外国人エンジニアの雇用管理に詳しい社労士としてのポジションを築きやすくなります。
社労士の収入を引き上げるうえで、顧問契約以外の収益の柱を持つことが重要です。
特に効果的なのが、助成金申請代行とコンサルティング業務の2種類です。
助成金申請代行は、社労士だけが行える独占業務のひとつです。
雇用関係助成金の申請代行報酬の一般的な相場は、受給額の15〜20%程度の成果報酬型で設定されるケースが多く、助成金の規模によっては1件で数十万円から数百万円の報酬になります。
複数の顧問先に対して毎年度の助成金案件を受注できる体制を作れると、顧問料に上乗せした形で安定的に追加収益を得ることができます。
顧問契約収入をベースに据えた上で、助成金はプラスアルファとして位置づけることが経営的に安全といえます。
コンサルティング業務は、給与制度の設計・人事評価制度の構築・ハラスメント対策の仕組みづくり・働き方改革の推進支援などを指します。
2024年度社労士実態調査によると、顧問先からの需要として「相談業務」と「規程作成等」が5年前より増加していることが確認されており、コンサルティング系業務への需要は拡大傾向にあります。
手続き代行を時給に換算すると単価が低くなりやすいのに対し、コンサルティング業務は顧客の課題解決に直結するため、1時間あたりの価値を高く設定しやすいという特徴があります。
IPO支援や外資系企業向けの労務コンサルティングを担える社労士に対しては、年収800万〜1,200万円の求人が生まれているケースも確認されています。
社労士の年収アップで効果が高い方法のひとつが、他の国家資格とのダブルライセンスです。
1つの資格で対応できる業務の幅を広げることで、1社の顧問先から得られる単価を引き上げられます。
| 組み合わせ | シナジーの内容 | 年収への効果の目安 |
|---|---|---|
| 社労士 + 税理士 | 税務と労務をワンストップで提供。顧問単価が大幅アップ | 年収300万円以上の増加例あり |
| 社労士 + 行政書士 | 会社設立から社会保険加入まで一括対応。新規顧客獲得が容易 | 業務幅拡大で顧客単価向上 |
| 社労士 + 中小企業診断士 | 労務管理と経営コンサルを組み合わせ。経営課題解決型の提案が可能 | コンサル単価の引き上げに有効 |
| 社労士 + ファイナンシャルプランナー | 年金・保険・老後設計まで対応。個人向け相談業務に強み | 個人顧客層の獲得に効果 |
| 社労士 + キャリアコンサルタント | 採用・人材育成・キャリア形成まで対応。人事系コンサルに強み | 人事コンサルティング単価向上 |
なかでも税理士とのダブルライセンスは最も強力な組み合わせとして知られています。
中小企業の顧問先は会計と労務の両方を必要としており、1社の顧問先から両方の顧問料を受け取れるため、同じ顧客数でも収益が大きく変わります。
行政書士は社労士と学習内容の重複が約70%あるとされており、ダブルライセンスの取得効率が高い組み合わせです。
会社設立時に行政書士として許認可申請を担い、設立後の社会保険加入や就業規則作成を社労士として担うワンストップサービスは、顧客にとっての利便性が高く、継続的な顧問関係につながりやすいという特徴があります。
社労士試験には年齢制限がなく、令和7年度試験では最年長合格者が78歳でした。
一生涯にわたって活かせる資格であることは間違いありませんが、「何歳で取得するか」によって、その後の年収推移とキャリアの可能性は大きく変わります。
厚生労働省の社会保険労務士試験公式データによると、令和7年度の合格者は30代が32.5%と最多で、次いで40代が27.5%、50代が18.9%と続いており、合格者の約6割が30〜40代に集中しています。
30代前半での資格取得は、長期的な年収形成という観点で最も有利な時期のひとつです。
2024年度社労士実態調査では、「開業時の年齢が若いほど、その後の売上・顧問契約数が伸びる」という傾向が明確に示されています。
同調査のトピックスでは30歳前後で開業した場合の「事業拡大モデル」として、開業当初600万円水準の売上が、10年後に2,800万円まで伸びるシミュレーションが提示されています。
これは何も「若さ」そのものが有利というわけではなく、開業後に顧問先を積み上げる時間を多く確保できるという構造的な優位性があります。
顧問契約はストック型の収益であるため、早く始めるほど10年後・20年後の年収水準が高くなりやすいという特性があります。
40代での取得は、30代と比べると開業後の収益成長に使える時間が短くなりますが、前職の職歴・人脈・業界知識を活かせるという強みがあります。
2024年度実態調査でも「どの年代で開業しても開業年数を重ねるにつれて数値が大きくなっていく」と記されており、40代開業が不利というわけではありません。
特に、一般企業での人事経験や医療・建設業など特定業種での実務経験を持つ40代社労士は、その専門性が高単価案件への入口になりやすいといえます。
勤務社労士として転職する場合でも、年齢によって市場での評価の視点が変わります。
30代であれば実務経験の幅と成長余力が評価されやすく、40代では即戦力性と特定業種・業務領域での専門性が問われる傾向があります。
| 取得タイミング | 開業社労士としての特徴 | 勤務社労士としての特徴 |
|---|---|---|
| 20代後半〜30代前半 | 顧問先積み上げに最も長い時間を確保できる。成長の天井が高い | 転職市場での希少性が高く、早期から管理職候補になりやすい |
| 30代後半〜40代前半 | 前職の人脈・業種知識が顧客獲得に直結。即戦力での開業が可能 | 実務経験と専門性の組み合わせで即戦力評価を受けやすい |
| 40代後半〜50代 | 第二の柱として開業。収益安定まで時間がかかるケースも | 高い業務精度と組織経験が管理職層で評価される |
社労士として実務経験なしでキャリアをスタートする場合、一定の準備期間と段階的なステップが必要です。
試験合格後に実務経験が不足している場合は、全国社会保険労務士会連合会が実施する「事務指定講習」を受講することで、登録に必要な実務経験要件を満たすことが可能です。
実務未経験から社労士として独立開業を目指す場合、一般的には以下のような時間軸で年収が推移します。
登録直後から開業3年目までは、顧問先の開拓が最大の課題です。
社労士業界では紹介・口コミによる顧客獲得が主流であり、当初は行政協力や会計事務所・税理士事務所との連携で経験を積みながら、少しずつ顧問先を増やしていく形が現実的です。
この時期の売上は300万〜500万円程度にとどまるケースが多く、本業との兼業や生活費の確保を前提とした資金計画が必要です。
開業4〜9年目は、口コミによる紹介が増え始め、顧問先が10〜20社規模に成長してくる時期です。
2024年度社労士実態調査では、開業5〜9年で年収1,000万円以上を達成する層が約30%近くに増加するというデータが確認されています。
開業10年以上になると、信頼と実績が蓄積され、顧問先30社以上・年収1,000万円超の層が全体の40%近くに達します。
さらに、開業15年以上では半数近くが年間1,000万円以上を達成しているというデータもあります。

一方、勤務社労士として実務未経験からスタートする場合は、社労士事務所に就職して手続き業務・給与計算・労務相談対応を学ぶというルートが王道です。
登録直後の年収は350〜450万円程度が目安となり、その後は担当業務の幅と役職に応じて段階的に上昇します。
2024年度社労士実態調査によると、勤務社労士のうち若い年齢層ほど「賃金面でメリットがあった」「就職・転職でメリットがあった」と回答する割合が高い傾向が確認されています。
資格を持っていること自体が転職市場での希少性につながり、実務を積む機会を得やすいという点では、早期取得のアドバンテージが存在します。
社労士の年収について調べていると、「本当に稼げるの?」「独立と勤務、どちらが向いている?」「将来性はあるの?」といった疑問が出てくるのは自然なことです。
ここでは、社労士の年収に関してよく寄せられる3つの疑問に、データをもとに率直にお答えします。
結論からいうと、社労士は稼げる可能性がある資格ですが、「取得しただけで自動的に高収入になる」資格ではありません。
この2点をはっきり区別して理解しておくことが重要です。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査によると、開業社労士の事務所あたりの年間売上平均は1,658万円です。
この数字だけを見ると高収入に思えますが、売上の中央値は550万円であり、全体の6割が年収1,000万円未満に集中しています。
つまり「1,658万円の平均」は、一部の高売上事務所が平均を押し上げた結果であり、多くの開業社労士は500〜1,000万円の間にいる構造です。
「社労士は稼げない」「食えない」といわれる背景には、勤務型で働く場合に年収が企業の給与水準に縛られやすい点と、開業直後に収益が安定しない時期が数年続く点があります。
一方で、開業10年以上の社労士の約4割が年収1,000万円以上を達成しているというデータも存在しており、長期的な視点で見れば「続けた先に高収入が見える」資格といえます。
稼げる社労士の共通点は、専門分野の確立・顧問契約の積み上げ・高付加価値業務への転換という3点に集約されます。
難易度5〜7%という合格率の難関資格であることを踏まえると、それに見合う収入を実現するためには資格取得後のキャリア設計が不可欠です。
独立と勤務のどちらが向いているかは、収入の優劣だけで判断するのではなく、自分の働き方の志向・リスク許容度・営業力という3軸で考えると整理しやすくなります。
勤務社労士が向いているのは、安定した給与収入を優先したい方、特定の企業や業界に深く関わりながら労務の専門性を磨きたい方、または資格取得直後で実務経験をしっかり積みたい段階にある方です。
2024年度実態調査では勤務社労士のうち若い年齢層ほど「賃金面でメリットがあった」と回答する割合が高く、転職市場においても社労士資格の保有は希少性が高いと評価される傾向があります。
開業社労士が向いているのは、自分の裁量で働き方を決めたい方、顧問先を積み上げながら収入に上限を設けたくない方、そして前職の業種知識や人脈を活かして即座に顧客を獲得できる見通しのある方です。
同調査では開業社労士の78.4%が「他から干渉されずに自由で独立した仕事ができる」と感じており、働き方の自由度は開業の大きな魅力として挙げられています。
| 比較軸 | 勤務社労士 | 開業社労士 |
|---|---|---|
| 収入の安定性 | 高い(給与・賞与) | 低い(開業初期)〜高い(軌道乗り後) |
| 収入の上限 | 役職・企業規模に依存 | 顧問先数・業務単価次第で青天井 |
| 営業力の必要性 | 低め | 高い(不可欠) |
| 向いている人 | 安定志向・実務習得期 | 自律志向・前職人脈あり・専門特化志向 |
いずれの形態を選ぶにせよ、手続き業務から脱してコンサルティング業務に移行できるかどうかが、長期的な年収水準を大きく左右するポイントです。
社労士の将来性については、「AIに代替される」という懸念を目にすることがあります。
正確に整理すると、給与計算・社会保険手続きなどの定型業務はデジタル化・AI化によって効率化・自動化が進みますが、社労士の業務がゼロになるわけではありません。
2024年度社労士実態調査によると、顧問先からの需要として「相談業務」が71.5%、「規程作成等」が66.2%増加しており、定型業務より判断・提案が必要なコンサルティング型業務の需要が伸びています。
AIが得意な「情報の整理や書類出力」は自動化されていく一方、「法改正を踏まえて顧問先の状況に合った判断を下す」「労使トラブルを事前に防ぐ仕組みを構築する」「経営者の悩みを聞いて労務面から解決策を提示する」といった業務は、AIが代替しにくい領域として残り続けます。
2025〜2026年にかけても、育児・介護休業法の改正、2026年10月からのカスタマーハラスメント対策の義務化、社会保険適用拡大、外国人雇用に関する育成就労制度の施行など、企業が社労士に相談せざるを得ない法改正が相次いでいます。
労働法制が複雑化するほど、専門家としての社労士の需要は高まりやすいという構造があります。
将来性が年収に与える影響をまとめると、定型業務のみに依存している社労士は価格競争に巻き込まれて収入が伸び悩む可能性があります。
その反面、コンサルティング業務・法改正対応・専門分野の深掘りという方向で価値を高めている社労士にとっては、需要拡大がそのまま収入増加に結びつきやすい環境が続くといえるでしょう。