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社労士のダブルライセンスで最も取得効果が高い組み合わせは、独立開業を目指すなら行政書士、コンサル力を高めるなら中小企業診断士です。
全国社会保険労務士会連合会の社会保険労務士白書2024年版によると、社労士のシングルライセンス保有者は全体の54.2%にとどまり、行政書士とのダブルライセンスは全体の16.6%と希少です。
この記事では、資格ごとの相性・難易度・向いている人・取得の進め方を実務の観点から整理します。
社労士のダブルライセンスでおすすめの資格は、行政書士・中小企業診断士・税理士・FP・キャリアコンサルタント・司法書士の6つです。
全国社会保険労務士会連合会が発行する社会保険労務士白書2024年版によると、2024年3月31日時点での社労士登録者数は45,386人にのぼります。
そのうちシングルライセンスで活動している社労士は全体の54.2%にとどまり、残りの約半数が何らかのダブルライセンスを保有しています。
つまり、ダブルライセンスを1つ持つだけで、同業他者との差別化として十分に機能する状況です。
おすすめ6資格の特徴を一覧で比較
| 資格名 | 相性 | 合格率(2025年度) | 目安勉強時間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 行政書士 | ★★★★★ | 14.54% | 800〜1,000時間 | 独立開業を目指す人 |
| 中小企業診断士 | ★★★★★ | 約5% | 800〜1,000時間 | 経営コンサルまで踏み込みたい人 |
| 税理士 | ★★★★☆ | 科目合格制 | 3,000〜5,000時間 | 顧問先の財務まで支援したい人 |
| FP(2級) | ★★★★☆ | 約50% | 200〜300時間 | 学習コストを抑えたい人・年金相談を強化したい人 |
| キャリアコンサルタント | ★★★☆☆ | 学科・実技ともに約60% | 150〜200時間 | 企業内人事部でキャリアを積みたい人 |
| 司法書士 | ★★★☆☆ | 約5% | 2,000〜3,000時間 | 創業期から登記まで一括支援したい人 |
出典 厚生労働省「第57回社会保険労務士試験の合格者発表」、行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験実施結果の概要」、一般社団法人 中小企業診断協会「令和7年度中小企業診断士 1次試験に関する統計資料」
社労士のダブルライセンスとして最もおすすめできる資格が行政書士です。
独立開業を目指す社労士にとって、行政書士との組み合わせが最優先で検討すべき選択肢といえます。
理由は明確で、2025年度の行政書士試験合格率は14.54%(行政書士試験研究センター発表)であり、社労士試験の合格率5.5%と比べると取得ハードルが相対的に低く、かつ業務上の相乗効果が最大級だからです。
行政書士の主な業務は、定款作成や各種許認可申請など官公署への書類作成・提出代理です。
社労士の主な業務は、労働保険・社会保険の加入手続き、就業規則の作成、助成金申請などです。
会社を設立する際、企業は通常これらを別々の専門家に依頼しなければなりません。
ダブルライセンス保有者であれば、創業前後のあらゆる手続きを1人で完結できるため、顧客にとっての窓口が1つになります。
社労士と行政書士の法律科目の重複度は約70%といわれており(伊藤塾コラム)、行政書士試験で学ぶ民法・行政法の知識は社労士試験にも応用が効きます。

すでに社労士試験に合格している人であれば、法的素養がある状態から行政書士の学習をスタートできるため、効率的な学習が期待できます。
また、厚生労働省が推進する各種助成金の申請は、行政書士と社労士の両資格が必要なケースが業種によっては存在し、外国人労働者の就労ビザ申請(行政書士業務)と社会保険の加入手続き(社労士業務)をセットで扱える点も、顧客獲得の大きな武器になります。
注意点として、行政書士試験は記述式問題が含まれており、社労士試験とは試験形式が異なります。
両資格を同時並行で狙う場合は、試験日程が重ならない年に集中して一方を合格する計画が現実的でしょう。
社労士と中小企業診断士の組み合わせは、社労士としての業務単価を引き上げたい人に特に向いています。
中小企業診断士は、経営コンサルティングの分野で唯一の国家資格であり、経営戦略・財務・マーケティング・生産管理など幅広い経営課題に対してアドバイスを行います。
社労士が強みとする人事労務の領域と経営全般の視点を組み合わせることで、従業員の採用・定着から組織改革・生産性向上まで一貫した提案が可能になります。
働き方改革の推進や人材不足への対応が多くの企業で最重要課題となっているなか、人事労務と経営戦略の両軸で提案できる専門家への需要は高まっています。
令和7年度(2025年度)の社労士試験合格率は5.5%、中小企業診断士の最終合格率も約5%前後(中小企業診断協会)であり、難易度はほぼ同水準です。
1次試験には科目合格制度が設けられているため、複数年かけて計画的に科目を積み上げることができます。
社労士試験と1次試験の一部科目は出題月が8月と重なることもあり、同時並行での準備は負担が大きくなります。
中小企業診断士の学習に必要な目安時間は800〜1,000時間であり、社労士合格後に翌年以降で1次試験の科目合格を積み上げながら狙う方法が現実的です。
税理士と社労士のダブルライセンスは、特に中小企業を顧問先に持つ開業社労士にとって収益性が高い組み合わせです。
中小企業の経営者にとって、税務・会計と人事労務は密接に絡み合う課題です。
給与計算は税務と社会保険の両側面を持ち、役員報酬の設定や決算書の読み方など、社労士が相談を受けやすい場面でも税務知識が求められます。
税理士と社労士の両資格を持つことで、1社で税務顧問と労務顧問を兼ねる体制を構築でき、顧客の事務負担を大幅に減らせます。
取得の難易度については、税理士試験が全11科目から5科目に合格する科目合格制を採用しているため、長期計画での取得が一般的です。
一度に合格する必要はなく、1科目ずつ受験できる点はメリットですが、すべての科目に合格するまでに平均5〜10年かかるケースも少なくありません。
社労士として開業して安定した収益を確保しながら、段階的に税理士資格を積み上げていく進め方がおすすめです。
FP(ファイナンシャルプランナー)は、社労士とのダブルライセンスのなかで最も取得しやすく、実務での活用場面も多い資格です。
FP2級の試験合格率は約50%(日本FP協会)であり、社労士試験と比較すると難易度は大幅に低くなります。
学習の目安時間は200〜300時間程度で、社労士試験で学ぶ公的年金・健康保険の知識が直接FP試験でも出題されるため、学習のコスパは非常に高いといえます。
社労士が年金相談や退職手続きに対応するなかで、顧客から資産運用・保険・住宅ローンなどライフプラン全般の相談を受ける場面は少なくありません。
FPの知識があれば、社会保険の観点だけでなく個人の生涯設計まで踏み込んだアドバイスができます。
企業内社労士として人事部門で働く方にとっても、従業員へのファイナンシャルウェルネス支援の観点から活かしやすい組み合わせです。
まず取り組む副資格として、社労士合格直後に3級から始めて2級まで取得する流れがおすすめです。
キャリアコンサルタントは、平成28年に国家資格として整備された比較的新しい資格です。
社員のキャリア形成・職業能力開発に関する相談やアドバイスを行うことが主な役割で、企業の人事・人材開発部門での活用が想定されています。
企業内社労士としてのキャリアを志向する方にとって、キャリアコンサルタントは職場でのポジション強化に直結します。
人事部門において、採用・評価・社会保険手続きを担う社労士の知識に加え、個別のキャリア面談や能力開発の支援ができる人材は、組織内での存在感が高まります。
試験の合格率は学科・実技ともに約60%前後であり、他のダブルライセンス候補の資格と比べて取得しやすい水準です。
学習時間の目安も150〜200時間程度と短く、社労士の業務知識と重複するポイントも多いため、効率的に学習できます。
独立開業よりも社内での昇進・昇給を目指す人に特に向いています。
司法書士は、登記申請・成年後見・裁判所提出書類の作成などを独占業務とする法律系国家資格です。
社労士との組み合わせによって、会社設立時の登記(司法書士業務)から社会保険の加入手続き・就業規則の整備(社労士業務)まで、創業期に必要な手続きの大部分を1人でカバーできます。
また、社労士が年金相談を受けるなかで、成年後見制度や相続に関する問い合わせを受ける場面は少なくありません。
司法書士の資格があれば、そのまま成年後見人として関与するルートも開け、顧客との長期的な関係構築につながります。
取得の障壁は高く、司法書士試験の合格率は約5.21%(法務省、2025年度)、学習時間の目安は2,000〜3,000時間程度です。
社労士試験との学習範囲の重複は少ないため、ゼロベースで学び直す必要があります。
社労士として開業し収益基盤が安定した段階で、中長期的な目標として取り組む資格と位置づけるのがよいでしょう。
社労士がダブルライセンスを取得するメリットは、業務範囲の拡大・収入の増加・差別化の3点に集約されます。
デメリットは取得コストと維持費の増加です。
メリットとデメリットを正しく把握したうえで取得判断をすることが、後悔のない資格戦略につながります。
メリット・デメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット1 | 受注できる業務の種類が増え、顧客単価が上がる |
| メリット2 | 社労士間での差別化が実現し、顧問先を獲得しやすくなる |
| メリット3 | 転職市場での競争力が高まり、企業内でのキャリアも広がる |
| デメリット1 | 2つ目の資格取得に追加で数百〜1,000時間以上の学習時間が必要 |
| デメリット2 | 資格登録・年会費など維持コストが年間10万〜20万円程度増える |
| デメリット3 | 専門性が分散するリスクがあり、どちらも中途半端になる可能性がある |
社労士においてダブルライセンスを持つ専門家は、現在もなお少数派です。
全国社会保険労務士会連合会が発行する社会保険労務士白書2024年版によると、社労士の登録者数は2024年3月31日時点で45,386人です。
そのうち、シングルライセンス(社労士資格のみ)で活動している社労士は全体の54.2%を占めています。
残りの約46%が何らかのダブルライセンスを保有していますが、社労士との相乗効果が高い行政書士とのダブルライセンス保有者は全体の16.6%に過ぎません。

つまり、行政書士を1つ加えるだけで、社労士全体の約6人に1人という希少な存在になれます。
資格が希少であることは、顧問先獲得において直接的な強みになります。
2つの士業資格を持つ専門家に相談できることで、顧客は別々の専門家に依頼する手間とコストを省けるからです。
ダブルライセンスが収入に与える影響は、業務単価と顧客数の両面から現れます。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査によると、開業社労士の事務所あたり年間売上は平均約1,658万円、中央値は550万円です。
1,000万円未満が全体の約6割を占め、売上格差が大きい構造になっています。
中央値が550万円にとどまる背景には、顧問契約の獲得競争が激化していることがあります。
ダブルライセンスが収入面で機能する仕組みは2つあります。
1つ目は、業務の幅が広がることで1社あたりの受託業務が増え、顧問料や単発報酬の単価が上がることです。
たとえば、社労士として就業規則の作成を受託しながら、行政書士として許認可申請や定款変更も引き受けられれば、同じ顧客からの売上が複数の業務で積み上がります。
2つ目は、他士業との紹介ネットワークに入りやすくなることです。
複数の資格を持つ専門家は、他士業から案件を紹介してもらう機会が増える傾向があります。
なお、ダブルライセンスによる収入増加額に明確な公的統計データはなく、顧問契約数や営業力によって個人差が大きい点は理解しておく必要があります。
資格を取れば自動的に収入が増えるわけではなく、資格を活かした営業活動や業務設計が不可欠です。
ダブルライセンスには取得コストと維持コストの両方がかかります。
取得前に全体像を把握しておくことが重要です。
取得コストとしては、受験料・教材費・通信講座費などが挙げられます。
通信講座を利用する場合、行政書士で5万〜15万円、中小企業診断士で10万〜20万円程度の受講費が目安になります。
維持コストについては、資格ごとに登録免許税・登録手数料・年会費がかかります。
社労士会の年会費は年間約10万円程度、行政書士会は年間約7〜10万円程度であり、両資格を保有すると年間で20万円前後の会費負担が継続的に発生します。
さらに、各資格には継続研修の義務があり、研修費用も別途必要です。
中小企業診断士の場合は5年ごとに更新登録の要件を満たす必要もあります。
注意すべき点が1つあります。
ダブルライセンスを持つことで、これまで業務を紹介してくれていた他士業との関係が変わる可能性がある点です。
たとえば、行政書士のダブルライセンスを取得すると、それまで行政書士から紹介を受けていた業務が減ることも考えられます。
既存のネットワークを大切にしながら資格を活用する戦略が求められます。
以上を踏まえると、ダブルライセンスは取るだけでなく、取った後にどう活かすかの設計が先にあるべきです。
収支シミュレーションを事前に行い、年間の維持コスト20万円前後を回収できるだけの収入増が見込めるかを冷静に判断したうえで取得を決めるとよいでしょう。
社労士のダブルライセンスに向いているのは、独立開業後の差別化を急ぐ人や、企業内でのポジション強化を目指す人です。
向いていないのは、社労士業務の実務経験がまだ浅い人や、社労士1本に集中して顧問先を増やす段階にある人です。
ダブルライセンスは取得さえすれば成果が出るものではなく、自分のキャリアステージや目指す顧客像との一致が前提になります。
以下で向いている人・向いていない人の特徴を具体的に整理します。
独立開業を目指す社労士にとって、ダブルライセンスは新規顧客獲得の入口を増やす手段として機能します。
社労士の開業初期において最も難しい課題は、顧問先の獲得です。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査によると、開業社労士1事務所あたりの平均顧問契約社数は33.2社です。
しかし、開業直後にこの水準に到達できる社労士は少なく、多くの開業社労士が収益を安定させるまでの数年間を苦労して乗り越えています。
ダブルライセンスが開業初期に特に効果的な理由は、顧客との接触タイミングを増やせることにあります。
たとえば行政書士とのダブルライセンスであれば、会社設立の許認可申請を入口として顧客と関係を結び、そのまま社労士として社会保険の加入手続きや就業規則の整備まで一括で受けられます。
会社設立のタイミングは、社労士が顧問契約を結ぶ絶好の機会です。
設立後すぐに信頼関係を築けるため、長期の顧問契約につながりやすくなります。
独立開業を目指す人が特に向いている組み合わせは以下の3パターンです。
| 目指すキャリア | おすすめの組み合わせ | 理由 |
|---|---|---|
| 中小企業・個人事業主をターゲットにしたい | 社労士 × 行政書士 | 会社設立から労務まで一括対応で顧問契約を獲得しやすい |
| コンサルティングまで踏み込みたい | 社労士 × 中小企業診断士 | 経営戦略・組織改善まで提案でき、顧問単価が上がりやすい |
| 税務顧問も視野に入れたい | 社労士 × 税理士 | 中小企業の税務と労務を一括対応でき、顧客離反リスクが下がる |
とはいえ、ダブルライセンスは開業前から計画する必要はありません。
社労士として最初の顧問先を獲得し、顧客から何を求められているかが見えてきた段階で、不足している領域を補う資格を選ぶ流れが現実的です。
資格を先行させると、取得後に活かす場面がないまま維持コストだけがかかるリスクがあります。
企業内で勤務する社労士にとって、ダブルライセンスは昇進・昇給の実績づくりとポジション強化の手段として機能します。
社会保険労務士白書2024年版によると、社労士登録者のうち勤務社労士は全体の一定数を占めており、企業の人事部・総務部で活躍しています。
企業内でのキャリアを志向する場合、ダブルライセンスの選び方は開業型とは異なります。
重要なのは、現在の職場で求められているスキルを直接補強できる資格を選ぶことです。
企業内社労士に特に向いている組み合わせは次の2つです。
キャリアコンサルタントは、人事部での活躍幅を広げたい人に適しています。
採用・評価・研修といった人事業務に加え、従業員のキャリア相談や能力開発支援まで対応できるようになることで、組織内での役割が広がります。
合格率が学科・実技ともに約60%前後であり、学習負荷が比較的小さい点も、現職を続けながら取得しやすい理由です。
FPは、従業員への福利厚生説明や年金相談を行う機会が多い人事担当者に向いています。
社労士試験で学ぶ公的年金・健康保険の知識とFPの知識は重複する部分が多く、効率的に取得できます。
企業の従業員に対してライフプラン全体の視点からアドバイスができる人材は、人事部内でも専門性が高く評価される傾向があります。
一方で、企業内勤務の社労士が司法書士や税理士などの難関資格を取得した場合、取得した資格を現職内で活かせる機会が限られることがあります。
転職市場での競争力は上がるものの、現在の職場では報酬への反映が見えにくいケースも少なくありません。
転職を見据えている場合は有効ですが、現職での処遇改善が主目的であれば、まず職場内で求められているスキルを確認したうえで資格を選ぶとよいでしょう。
ダブルライセンスが向いていない人の典型的なケースとして、社労士として開業・就職して間もない段階での取得があります。
社労士業務の実務経験が浅い段階では、顧客から何が求められているかが見えていないため、取得した資格を実務に結びつける設計が難しくなります。
まず社労士業務を通じて顧客との関係を深め、自分に不足しているものが明確になってからダブルライセンスを検討する流れが、回り道のようで最も確実です。

社労士のダブルライセンスを取得する進め方は、まず社労士として1〜2年の実務経験を積み、次いで自分の顧客像に合った資格を1つ選び、試験スケジュールを確認してから学習を開始するという3段階が基本です。
2つ目の資格をどの順番で、どのように学ぶかによって、無駄な学習時間や費用を大きく抑えられます。
以下で具体的なステップを解説します。

取得する順番は、キャリア目標と現在の状況の2軸で判断します。
すでに社労士資格を取得しているか受験中である場合、次に取る資格の優先順位は以下の基準で考えるとよいでしょう。
独立開業を急いでいる場合は行政書士を優先します。
社労士試験は毎年8月下旬に実施され(2026年度は8月23日)、行政書士試験は毎年11月第2日曜日に実施されます(2026年度は11月8日)。
社労士試験の結果が出る10月から行政書士試験まで約1か月しかないため、同年での両試験合格を狙う場合は年初から並行学習が必要です。
とはいえ、行政書士試験の合格率は2025年度で14.54%であり、社労士試験の合格率5.5%と比べて相対的に取り組みやすい水準にあります。
社労士合格の翌年に集中して行政書士を取得する計画も現実的です。
経営コンサルまで踏み込みたい場合は中小企業診断士を優先します。
中小企業診断士の1次試験は毎年8月上旬に実施されており、社労士試験と試験月が重なります。
両試験を同年に受験することは、学習負荷の観点から非常に負担が大きいため、翌年以降に中小企業診断士の1次試験を科目合格から積み上げていく方法が現実的です。
企業内勤務でまず実績を積みたい場合はFPまたはキャリアコンサルタントを優先します。
両資格とも比較的短期間で取得でき、学習負荷が低いため、社労士の実務と並行して進めやすいのが特徴です。
取得順番の原則として、社労士が受験資格として認められている点も押さえておく必要があります。
社労士試験の受験資格のひとつに行政書士試験の合格があります。
逆に、社労士資格は行政書士試験の受験資格としてはカウントされませんが、行政書士試験には受験資格がないため誰でも受験できます。
同時取得とは、社労士合格後の翌年以降に速やかに2つ目の資格取得を目指すことを指します。
厳密な同年同時合格は非常に難易度が高く、現実的には1〜2年の間隔をあけた連続取得が多くの場合で適切です。
各資格の学習時間の目安
| 資格名 | 学習時間の目安 | 試験月 | 社労士との同年受験の実現性 |
|---|---|---|---|
| 行政書士 | 600〜1,000時間 | 11月 | 可能(社労士8月→行政書士11月) |
| 中小企業診断士(1次) | 800〜1,000時間 | 8月 | 困難(試験月が重複) |
| FP2級 | 200〜300時間 | 5月・9月・1月 | 比較的容易 |
| キャリアコンサルタント | 150〜200時間 | 3月・7月・11月 | 比較的容易 |
| 税理士 | 3,000〜5,000時間 | 8月(科目別) | 数年単位の計画が必要 |
出典 厚生労働省「第57回社会保険労務士試験の合格者発表」、行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験実施結果の概要」
社労士試験で学ぶ知識が活かせる資格を選ぶと、学習時間を短縮できます。
特に重複度が高いのはFPです。
社労士試験で学ぶ公的年金・健康保険・労働保険の知識は、FP試験の社会保険分野とほぼ一致しており、社労士合格者がFP2級を取得する場合、一般的な学習時間よりも大幅に短縮できるケースが多くあります。
注意すべき点として、同時並行の学習は知識の混同が起きやすいことがあります。
社労士試験では各科目に基準点が設けられており、1科目でも基準点を下回ると不合格になる仕組みです。
2つの試験を同時並行で学習すると、それぞれの試験範囲の境界が曖昧になるリスクがあります。
社労士試験に合格するまでは社労士の学習を最優先にし、合格後に2つ目の資格学習を開始する流れが安全です。
ダブルライセンス取得における学習コストの削減は、知識の重複を戦略的に活用することで実現できます。
社労士と行政書士の場合、民法・行政法・憲法の基本的な法的思考の枠組みが重複します。
社労士試験では労働基準法・社会保険関連法を中心に学びますが、法律の条文読解や行政手続きへの理解という点で行政書士試験の基礎と共通する部分があります。
行政書士試験研究センターの資料によると、行政書士試験で求められる民法の知識は、社労士試験で培った法的素養を下地にすることで習得しやすくなります。
社労士と中小企業診断士の場合、中小企業の人事・組織管理に関する知識が重複します。
中小企業診断士の1次試験科目のひとつである経営法務では、労働関連法規の概要が出題されており、社労士試験で学んだ知識が有利に働きます。
また、中小企業診断士の企業経営理論で学ぶ人的資源管理の考え方は、社労士業務の実務感覚と密接に結びついています。
通信講座の活用については、2つ目の資格に特化した短縮コースや、社労士合格者向けのダブルライセンスコースを提供している講座も存在します。
すでに社労士の学習で自分に合った勉強スタイルが確立できているため、2つ目の資格の通信講座を選ぶ際はテキストの網羅性よりも問題演習の量と解説の質を重視して選ぶとよいでしょう。
社労士と行政書士のダブルライセンスが独立開業の最短ルートとされる最大の理由は、会社設立という一度限りのタイミングを入口にして、設立後の長期的な顧問契約まで一気通貫でつなげられる収益構造にあります。
会社設立時は、行政書士業務と社労士業務の両方が同時に必要になる、士業にとって数少ない確実なニーズ発生タイミングです。
帝国データバンクの調査によると、2024年に全国で新設された法人は15万3,789社にのぼり、過去最多を更新しています。
この数字は、毎年15万社以上の新規顧客候補が市場に生まれていることを意味しています。
行政書士と社労士の業務は、会社設立のフェーズで一点に集まります。
会社を設立する際に必要になる主な手続きは、大きく2種類に分けられます。
1つ目は定款の作成・認証、各種許認可申請、飲食店や建設業などの営業許可取得など、行政書士が担う設立前後の法的書類業務です。
2つ目は、従業員を雇い入れた際の労働保険・社会保険の加入手続き、就業規則の作成、雇用形態の整備など、社労士が担う人事労務業務です。
シングルライセンスの社労士は、顧客の設立手続きを手伝おうとしても行政書士業務の部分を自分では担えません。
シングルライセンスの行政書士は、設立後の労務支援を自分では続けられません。
ダブルライセンスの専門家のみが、会社設立の初日から顧問業務の継続まで、切れ目なく1人で関与し続けられます。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査によると、開業社労士の売上のうち手続き業務の受託割合は平均41.5%と最も高くなっています。
同調査では、5年前と比べて需要が増えたと感じる業務として相談業務が71.5%、規程作成等が66.2%と回答されており、顧問先から求められる業務の幅は確実に広がっています。
行政書士業務を入口に顧客と接触し、社労士業務で継続関与する設計は、この需要拡大の流れと一致しています。
中小企業にとって、専門家への相談窓口が複数に分かれていることは、時間とコストの両面でのロスになります。
規模の小さな企業ほど、許認可申請の専門家、労務の専門家、税務の専門家をそれぞれ別に探して依頼する余裕がありません。
特に創業初期は、経営者がすべての判断を自分で行いながら、複数の専門家と並行してやり取りを進める必要があります。
この状況で、許認可も労務も1人の専門家に任せられるダブルライセンス保有者の価値は明確です。
収益モデルの観点からも、社労士×行政書士の組み合わせは特に優れた構造を持っています。
行政書士業務は許認可申請や定款作成など案件ごとに報酬が発生するスポット型の収益です。
社労士業務は毎月の顧問料として継続的に収入が入るストック型の収益です。
同一の顧客に対して、この2種類の収益が同時に発生します。

会社設立の支援で行政書士として初回報酬を得ながら、設立後は社労士として毎月の顧問料が積み上がる構図は、開業初期の資金繰りを安定させる観点でも極めて合理的です。
なお、伊藤塾コラムが引用する2024年社労士白書のデータによると、社労士事務所の売上に占める顧問契約の割合は平均71.9%にのぼります。
売上の7割以上が毎月の継続収入から成り立っている業種において、顧問契約を獲得する入口を行政書士業務で作れることの意義は大きいといえます。
社労士のダブルライセンスとして行政書士が特に推奨される背景には、試験の現実的な難易度だけでなく、このような開業後の収益設計との合理的な一致があります。
資格を取ることと、取った資格で稼ぐこととの距離が最も短い組み合わせが、社労士×行政書士といえるでしょう。
社労士の資格1つで十分に活躍し、独立開業を成功させている人は実際に多くいます。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査によると、シングルライセンスで活動する社労士は全体の54.2%と過半数を占めており、社労士単独でも安定した事務所運営が十分に可能です。
士業業界では士業同士の案件紹介が一般的であり、専門外の業務は信頼できる他士業に紹介することでネットワークを構築していく方法も有効です。
ダブルライセンスは収入や業務幅を広げる手段の一つですが、必須条件ではありません。
まだ社労士資格を持っていない場合は、社労士を先に取得することを優先するのが適切です。
社労士試験には大学卒業・実務経験3年以上・国家資格合格のいずれかの受験資格が必要ですが、行政書士試験は受験資格がなく誰でも受験できます。
行政書士試験に合格すると社労士試験の受験資格が得られるため、高卒など学歴面で受験資格のない人は行政書士を先に取る流れが現実的です。
すでに社労士資格を取得している場合は、翌年度以降に行政書士を目指す計画が多くのケースで合理的です。
試験日程は社労士が8月、行政書士が11月であるため、同年内での連続受験も選択肢になります。
社労士と中小企業診断士の同年合格は難易度が高く、現実的ではないケースがほとんどです。
社労士試験の合格率は5.5%、中小企業診断士の1次試験合格率も近年は20%前後で推移しており、2次試験まで含めた最終合格率は約5%前後とされています。
さらに両試験とも8月に実施されるため、試験日程が重なります。
現実的な進め方としては、社労士合格後に中小企業診断士の1次試験を科目合格制度を活用しながら複数年で積み上げる方法がおすすめです。
ダブルライセンスによる収入増加額に明確な公的統計データはなく、顧問契約数や営業力によって個人差が大きいのが実情です。
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査では、開業社労士の年間売上の中央値は550万円と報告されています。
ダブルライセンスを持つことで受注業務の幅が広がり、顧客単価が上がる可能性はありますが、資格を取れば自動的に収入が増えるわけではありません。
資格を活かした営業活動と、実務での信頼構築が収入増につながる主な要因です。
社労士を軸にしたトリプルライセンスの定番の組み合わせは、社労士・行政書士・中小企業診断士と、社労士・行政書士・FPの2パターンです。
社労士・行政書士・中小企業診断士の組み合わせは、人事労務・法務・経営コンサルの3領域を1人でカバーできるため、中小企業向けの総合的な経営支援に強みを持てます。
会社設立から組織設計・人材定着支援まで一貫して関与できる点が特徴です。
社労士・行政書士・FPの組み合わせは、創業支援から従業員のライフプラン設計まで幅広く対応でき、取得負荷も相対的に抑えられます。
トリプルライセンス保有者自体が非常に少ないため、希少性の面では大きな差別化になります。