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社会保険労務士試験の合格率は例年5〜7%台と低く、国家資格の中でも難関に分類されます。
ただ、合格者の約6割が働きながら学習した会社員であることも事実です。
この記事では、最新の合格率データや他資格との難易度比較、試験形式の特徴、必要な勉強時間の目安、受験資格の取得方法まで、社労士試験の難しさの全体像を体系的に解説します。
受験を検討している方が知りたい情報を一つひとつ丁寧にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

社会保険労務士試験は、合格率が例年5〜7%台で推移する難関国家資格です。
厚生労働省の公表データによると、直近の2025年度(第57回)試験では受験者43,421人のうち合格者はわずか2,376人で、合格率は5.5%にとどまっています。
100人受験しても合格できるのは5〜6人という水準は、行政書士や宅建士よりも明らかに厳しく、司法書士と並ぶ難易度帯に位置する資格といえるでしょう。
ただ、合格率の数字だけで「自分には無理」と判断するのは早計です。
合格者の約6割が働きながら勉強している会社員というデータが示す通り、正しい学習戦略と十分な準備期間があれば、社会人でも十分に狙える資格です。
社労士試験の合格率は、試験が始まって以来一度も20%を超えたことがありません。
厚生労働省が公表している過去10年間の推移を見ると、最も高かった2021年度(令和3年度)でも7.9%、最も低かった2016年度(平成28年度)は4.4%という結果でした。
以下の表は、厚生労働省「社会保険労務士試験の結果について」をもとにまとめた近年の推移です。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2025年(令和7年度) | 43,421人 | 2,376人 | 5.5% |
| 2024年(令和6年度) | 43,174人 | 2,974人 | 6.9% |
| 2023年(令和5年度) | 42,741人 | 2,720人 | 6.4% |
| 2022年(令和4年度) | 40,633人 | 2,134人 | 5.3% |
| 2021年(令和3年度) | 37,306人 | 2,937人 | 7.9% |
| 2020年(令和2年度) | 34,845人 | 2,237人 | 6.4% |
| 2019年(令和元年度) | 38,428人 | 2,525人 | 6.6% |
| 2018年(平成30年度) | 38,427人 | 2,413人 | 6.3% |
| 2017年(平成29年度) | 38,685人 | 2,613人 | 6.8% |
| 2016年(平成28年度) | 39,972人 | 1,770人 | 4.4% |
この10年間を通じた合格率の平均は約6.1%です。
年度によって4〜8%の幅がありますが、どの年も一桁台という水準は変わりません。
注目したいのは、この合格率の変動が「試験の難しさの変化」だけを意味していない点です。
合格率が高かった2021年度は新型コロナウイルスの影響で学習時間を確保しやすい環境にあった受験者が増えたこと、逆に合格率が低かった年度は科目別の合格基準点が厳しく設定されたことが背景にあります。
つまり受験者の努力量と試験側の水準調整が複合的に絡み合うのが社労士試験の合格率です。
受験者数の面でも興味深い傾向があります。
2020年までは受験者数が減少傾向にありましたが、2022年以降は再び4万人台を回復しています。
これは、働き方改革や社会保険制度への関心の高まりを受けて、キャリアアップ目的で社労士を目指す社会人が増えていることを示していると考えられます。
合格率と並んで参考になるのが偏差値による難易度の比較です。
資格試験には公式な偏差値は存在しませんが、予備校各社や資格情報サービスは過去の合格データや学習時間の目安をもとに独自の偏差値目安を公表しています。
それらを総合すると、社労士試験の難易度偏差値は65前後と位置づけられることが多く、司法書士(偏差値76前後)には及ばないものの、行政書士(偏差値60前後)や宅建士(偏差値55前後)を明確に上回る難易度帯にあります。
数値で比較すると以下の通りです。
| 資格名 | 難易度の目安偏差値 | 合格率の目安 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 76前後 | 約4〜5% |
| 社会保険労務士 | 65前後 | 約5〜7% |
| 中小企業診断士 | 63前後 | 約5〜8% |
| 行政書士 | 60前後 | 約10〜15% |
| 宅地建物取引士 | 55前後 | 約15〜17% |
※各資格の偏差値は複数の受験予備校の公表資料をもとにした目安です。公式な数値ではありません。
社労士の偏差値が65前後とされる理由は、単純に試験が難しいというよりも「科目横断的な知識が必要」「1科目でも基準点を下回ると不合格」という試験構造にあります。
得意科目で高得点を取っても、不得意な1科目に足をすくわれるリスクがある点が、他の資格試験と一線を画する特徴です。
学歴との関係については、合格者に特定の学歴層が集中しているわけではありません。
大卒者が多いのは受験資格の影響もありますが、合格者の中には専門学校卒や、実務経験で受験資格を取得した方も多く含まれています。
合格を決めるのは学歴よりも学習時間と学習戦略の質です。
社労士試験の合格率が毎年一桁台にとどまる背景には、試験の仕組みそのものに起因する3つの構造的な要因があります。
これらを理解することが、難易度を正しく把握し、適切な学習計画を立てる第一歩になります。
構造的要因1 科目数の多さと法改正への対応義務
社労士試験の出題科目は選択式・択一式合わせて10科目にわたります。
労働基準法・労働安全衛生法・労災保険法・雇用保険法・労一・社一・健康保険法・厚生年金保険法・国民年金法と、労働・社会保険の主要法令を網羅的にカバーします。
しかも、これらの法律は毎年改正が行われます。
社会保険労務士試験オフィシャルサイトの案内によれば、試験実施年の4月1日までに施行された法改正が出題対象となるため、最新の法令知識を常にアップデートし続ける必要があります。
過去問だけで準備できる試験ではなく、年度ごとに新しい知識を積み上げる継続的な学習が求められる点が、多くの受験者にとってハードルとなっています。
構造的要因2 科目別の合格基準点(足切り)の存在
社労士試験が他の多くの資格試験と異なる最大の特徴が、科目別に設定された合格基準点(いわゆる足切り)の存在です。
択一式試験では総得点70点中49点以上の取得が原則必要で、さらに各科目10点中4点以上を確保しなければなりません。
選択式試験では総得点40点中28点以上、かつ各科目5点中3点以上が求められます。
この仕組みが意味することは、総得点が合格ラインを超えていても、1科目でも最低点を下回れば不合格になるということです。
例えば選択式試験では1問が5点配点のため、1問の正誤が科目の合否を直接左右します。
他の資格試験のように得意科目で不得意科目をカバーする戦略が通用しない、全科目の底上げが必要な試験構造になっています。
構造的要因3 科目合格制度がなく全範囲の学習を毎年繰り返す必要がある
FP技能士など一部の資格試験では科目合格制度が設けられており、一度合格した科目は次回以降の受験で免除されます。
しかし社労士試験にはそのような制度がありません。
前年の試験で択一式の合格基準点を超えていても、翌年は再び全科目を受験しなければなりません。
これは複数年かけて合格を目指す受験者にとって大きな負担で、毎年全範囲の知識を再確認・更新するコストが発生します。
平均受験回数が3〜4回とされている社労士試験において、この構造は累積的な難易度を大きく引き上げている要因の一つです。

社労士試験の難易度を正確に把握するには、他の国家資格と並べて比較するのが最も分かりやすい方法です。
合格率だけで判断すると見えてこない「試験の質的な難しさ」も含めて、主要な国家資格と整理します。
以下の表は、2025年度(令和7年度)の各試験の最新合格率と、合格に必要とされる学習時間の目安を並べたものです。
| 資格名 | 2025年度合格率 | 必要学習時間の目安 | 科目数 | 足切りの有無 |
|---|---|---|---|---|
| 司法書士 | 約5.2% | 3,000時間以上 | 11科目 | あり |
| 社会保険労務士 | 5.5% | 800〜1,000時間 | 10科目 | あり(科目別) |
| 中小企業診断士 | 約5% | 800〜1,000時間 | 7科目(1次)+2次 | あり |
| 行政書士 | 14.54% | 600〜1,000時間 | 3分野 | あり(大括り) |
| 宅地建物取引士 | 18.7% | 300〜400時間 | 4分野 | なし |
出典:厚生労働省「第57回社会保険労務士試験の合格者発表」、法務省「令和7年度司法書士試験の最終結果について」、一般財団法人行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験の合格者発表」、一般財団法人不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」
この表を見ると、合格率だけで並べると社労士と司法書士は近い水準にありますが、必要学習時間は大きく異なります。
学習時間の多さと合格率の低さという2軸で評価すると、社労士は「中難度の上位」に位置する資格といえるでしょう。
社労士試験の受験を検討する方の多くが比較対象として挙げるのが、行政書士と宅建士です。
いずれも法律知識を問う国家資格ですが、難易度には明確な差があります。
2025年度の合格率を見ると、行政書士は14.54%、宅建士は18.7%です。
社労士の5.5%と並べると、宅建士の合格率は社労士の約3.4倍、行政書士でも約2.6倍という差があります。
ただ、合格率の差をそのまま「難しさの差」と捉えるのは少し早計です。
試験構造が大きく異なるからです。
行政書士試験との違いを「足切りの範囲」という観点から整理すると、行政書士の足切りは「法令等科目全体で一定点数以上」「基礎知識科目で一定点数以上」という大きな括りで設定されています。
つまり法令科目の中で苦手な分野があっても、得意分野でカバーすることが可能です。
社労士試験の足切りはこれとは根本的に異なり、10科目それぞれに個別の基準点が設けられています。
労働基準法で高得点を取っても、雇用保険法で基準点を1点でも下回れば不合格です。
この「逃げ場のない科目別足切り」が、合格率以上の難しさを生み出している根本的な要因です。
宅建士との比較では、まず試験範囲の性格が異なります。
宅建士は不動産取引に関する4分野の出題で構成され、科目別の足切りはありません。
総得点で50点満点中33点以上(2025年度)取れれば合格できる、シンプルな合否判定です。
暗記量も社労士と比べると少なく、300〜400時間の学習で合格を目指せるとされています。
社労士の800〜1,000時間と比較すると、学習コストは2〜3倍の差があります。
社労士より難易度が高いとされる代表的な資格が司法書士と税理士です。
それぞれ社労士とどう違うのかを整理します。
司法書士との比較では、合格率の数字は近く見えます。
2025年度の司法書士合格率は5.21%で、社労士の5.5%とほぼ同水準です。
しかし実態は大きく異なります。
司法書士の必要学習時間は3,000時間以上とされており、社労士の約3倍の学習期間を要します。
また司法書士試験には筆記試験に加えて口述試験があり、試験科目数は11科目と社労士を上回ります。
登記法・民法・憲法・商法など、法律の深い理解と応用力が求められる問題が中心で、単純な暗記では対応できません。
合格率が同程度でも、司法書士のほうが一段上の難易度帯にあると考えるのが妥当です。
税理士との比較で注意が必要なのは、試験制度の仕組みが根本的に異なる点です。
税理士試験は科目合格制で、5科目全てに合格すれば資格を取得できます。
1科目ずつ受験・合格することが認められているため、単純な合格率では社労士と比べにくい面があります。
ただ、5科目全ての合格率を積算した実質的な総合合格率は数%以下とも言われており、取得までの年数も平均で5〜10年に及ぶケースが少なくありません。
総学習時間も3,000時間超が目安とされており、社労士よりも長期的な取り組みが必要な資格といえます。
社労士と並んでよく比較されるのが中小企業診断士です。
合格率・学習時間ともに社労士と近い水準にある資格ですが、試験の性格は異なります。
中小企業診断士は、2025年度の最終合格率が約5%前後で推移しており、社労士とほぼ同じ水準です。
必要学習時間も800〜1,000時間とされており、この2点だけを見ると「同程度の難しさ」と評価されます。
しかし試験構造は大きく異なります。
中小企業診断士は1次試験(7科目、マークシート)と2次試験(論述・口述)の2段階で構成されます。
1次試験は科目合格制が採用されており、合格した科目は翌年以降も有効です。
社労士には科目合格制がないため、毎年全範囲を学習し直す必要があります。
この点では中小企業診断士のほうが学習の継続的な積み上げがしやすい構造といえるでしょう。
また、中小企業診断士の1次試験は総得点60%以上かつ全科目40点以上という「絶対評価」です。
社労士試験が年度によって合格基準点が変動する相対評価に近い仕組みをとっているのと対照的です。
FP1級との比較では、FP1級の学科試験合格率が概ね10〜15%前後で推移しており、数値上は社労士より合格しやすい水準です。
しかしFP1級は学科と実技の2段階試験で、学科合格者のみが実技に進めます。
また、FP1級の受験には3級・2級と段階的に取得するか、一定の実務経験が必要なため、同じ出発点からの比較は難しい面があります。
純粋な試験難易度としては社労士のほうが厳しいという見方が一般的です。

社労士試験の難しさは合格率の数字だけでは語れません。
試験が「なぜ難しいのか」を理解するには、出題形式そのものに目を向ける必要があります。
選択式と択一式という2種類の試験が同日に課され、10科目全てに個別の合格基準点が設定されているという構造が、受験者に独特の難しさをもたらしています。
社労士試験は1日の中で選択式と択一式という性格の異なる2種類の試験を受ける必要があります。
社会保険労務士試験オフィシャルサイトによれば、選択式が午前10:30〜11:50の80分間、択一式が午後13:20〜16:50の210分間と定められており、休憩をはさんで合計290分もの試験時間が一日で課されます。
以下の表で2つの試験形式の違いを整理します。
| 項目 | 選択式試験 | 択一式試験 |
|---|---|---|
| 試験時間 | 80分 | 210分 |
| 出題数 | 8問(科目) | 70問 |
| 配点 | 1問5点、計40点満点 | 1問1点、計70点満点 |
| 出題科目数 | 8科目 | 7科目 |
| 合格基準点(総得点) | 28点以上(原則) | 49点以上(原則) |
| 科目別合格基準点 | 各科目3点以上(原則) | 各科目4点以上(原則) |
| 出題形式 | 文章中の空欄に語句を選択 | 5肢択一式 |
選択式試験は、法律の条文などの文章中に設けられた5つの空欄に、選択肢の中から適切な語句を選んで埋める形式です。
1科目につき5つの空欄があり、空欄1つにつき1点の配点なので1科目5点満点、8科目合計で40点満点になります。
問題文の文脈と正確な法令知識の両方が問われるため、曖昧な理解では得点できない厳しさがあります。
択一式試験は、5つの選択肢の中から正解を1つ選ぶ形式です。
7科目で各10問、計70問を210分で解きます。
問題数が多い分、広範な知識をまんべんなく持っていないと時間内に対応できません。
また選択式とは異なり記号を選ぶだけではなく、複数の選択肢を比較して正誤を判断する論理的な思考力が求められます。
2つの試験形式に同時に対応しなければならない点が、社労士試験の負荷をさらに高めています。
選択式対策と択一式対策では勉強のアプローチが異なるため、単純に学習時間を積むだけでは不十分で、形式に応じた学習戦略の使い分けが必要です。
社労士試験の合格を難しくしている最大の仕組みが、科目別の合格基準点、いわゆる「足切り」の存在です。
原則として選択式では各科目5点中3点以上、択一式では各科目10点中4点以上を取らなければなりません。
この基準に届かない科目が1つでもあると、総得点が合格ラインを超えていても不合格になります。
10科目の構成と各試験での出題形式は以下の通りです。
| 科目名 | 選択式 | 択一式 |
|---|---|---|
| 労働基準法および労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 労働者災害補償保険法 | 1問(5点) | 7問(7点)※ |
| 雇用保険法 | 1問(5点) | 7問(7点)※ |
| 労働保険徴収法 | 出題なし | 各3問ずつ計6問(6点) |
| 労務管理その他の労働に関する一般常識(労一) | 1問(5点) | 5問(5点) |
| 社会保険に関する一般常識(社一) | 1問(5点) | 5問(5点) |
| 健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
※労災・雇用は各問1〜7が本科目、問8〜10が徴収法からの出題
足切りが受験者に与えるプレッシャーは、選択式でとくに顕著です。
選択式は1科目5問しかないため、1問ミスをするだけで基準点ぎりぎりの3点になります。
問題文の解釈が難しかったり、細かい数値を問う問題が出たりした場合、準備をしていても基準点を下回るリスクが生じます。
試験のどこかで「1科目だけ基準点割れ」が起きた瞬間に、その年の合格はなくなります。
他の9科目がどれだけ高得点でも、1科目の失敗で全てが無効になるのが社労士試験の足切りの恐ろしさです。
これが「社労士試験は合格率以上に難しい」と言われる本質的な理由のひとつです。
足切りで不合格になる受験者が多くなった場合に発動されるのが「救済措置」です。
救済措置とは、特定の科目の合格基準点を通常の3点や4点から引き下げる補正のことで、厚生労働省が合格発表と同時に発表します。
救済措置が発動される条件は厚生労働省が公表しており、各科目の合格基準点以上の受験者の割合が5割に満たない場合に、基準点を引き下げて補正するとされています。
過去の救済措置の発動実績を見ると、選択式での発動が圧倒的に多く、なかでも労働に関する一般常識(労一)と社会保険に関する一般常識(社一)の2科目に集中しています。
2025年度の試験では選択式の労災・労一・社一の3科目と択一式の雇用保険で救済が発動されました。
一方、2023年度は選択式・択一式ともに救済が一切なく、この年は全員が原則の基準点をクリアしなければ合格できなかった厳しい年でした。
救済措置が頻発する労一・社一の2科目は、労働経済白書や厚生労働白書など「白書」からの出題が中心です。
白書は毎年更新されるため出題範囲が限定されず、どの統計データや調査結果が問われるか事前に絞り込みにくい特徴があります。
重要なのは、救済措置はあくまで試験難易度の水準を保つための補正であり、毎年発動されるわけではない点です。
合格を狙うのであれば救済を期待せず、原則の基準点である選択式3点以上・択一式4点以上を各科目で確実に超えることを目標に学習計画を立てるのが賢明といえます。

社労士試験の合格に必要な勉強時間は、初学者の独学で800〜1,000時間が一般的な目安です。
800〜1,000時間という数字は、法律・人事・労務の知識がない状態でゼロから学習を始める初学者を前提としたものです。
労働法規や社会保険制度に実務でなじみがある方、あるいは行政書士や宅建士など法律系資格の学習経験がある方であれば、700〜800時間程度に短縮できる可能性もあります。
学習時間の内訳を科目の特性で大まかに整理すると、以下のような配分が目安になります。
| 科目グループ | 主な科目 | 学習時間の目安 |
|---|---|---|
| 労働法規の基礎 | 労働基準法・労働安全衛生法 | 150〜200時間 |
| 労働保険関連 | 労災保険法・雇用保険法・労働保険徴収法 | 150〜200時間 |
| 一般常識(最難関) | 労働に関する一般常識・社会保険に関する一般常識 | 100〜150時間 |
| 社会保険関連 | 健康保険法・厚生年金保険法・国民年金法 | 200〜300時間 |
| 過去問演習・模試対策 | 全科目横断 | 200〜250時間 |
各科目の学習にかける時間は受験生の得意・不得意によって変わりますが、特に注意が必要なのが労一・社一の2科目です。
白書や統計から出題されるため出題範囲が広く、時間をかけたからといって必ずしも高得点が取れるとは限らない特性があります。
得点が読みにくい科目に時間を集中させすぎず、他の法律科目を着実に仕上げることが合格への近道といえるでしょう。
通信講座を活用する場合は、学習効率が上がることから500〜700時間での合格を目指せるとされています。
ただしこれは講座のカリキュラムに沿って計画的に進めた場合の目安であり、理解に時間がかかる科目で追加学習が生じることもあるため、余裕をもって計画するのが賢明です。
社労士試験に合格するまでの学習期間は、大きく分けると1年以内での合格と複数年かけての合格の2パターンに分かれます。
多くの受験予備校やスクールが「スタンダード」とする学習期間は1年間です。
試験が毎年8月第4日曜日に実施されることを考えると、前年の9〜10月に学習を開始するのが一般的な計画です。
1年間での合格を目指す場合の学習ペースを開始時期別に整理すると以下の通りです。
| 開始時期(前年) | 学習期間 | 1日の目安学習時間 |
|---|---|---|
| 9〜10月スタート | 約11ヶ月 | 平日2〜3時間、土日5〜6時間 |
| 1〜3月スタート | 約5〜7ヶ月 | 平日4〜5時間、土日8〜10時間 |
| 4〜6月スタート | 約3〜4ヶ月 | ほぼフルタイムに近い時間 |
社会人が働きながら合格を目指す場合、平日2〜3時間・土日各5〜6時間という9〜10月スタートのペースが最も現実的です。
ただしこのペースでも週に約24時間の学習時間が必要で、家族の理解や日常生活の調整が不可欠になります。
複数年での合格になる場合、1年目は試験の感触をつかみながら知識の土台を作り、2年目以降に合格を狙うという戦略をとる受験者もいます。
この場合は累計の学習時間が1,500〜2,000時間を超えるケースも珍しくありません。
ただし社労士試験には科目合格制度がないため、毎年全範囲を学習し直す必要がある点は念頭においておく必要があります。
社労士試験に合格するまでの平均受験回数は3〜4回というのが一般的な認識です。
1年に1回しか受験機会がないことを考えると、平均で3〜4年かかるという計算になります。
この「3〜4回」という数字の背景には、受験者の2極化があります。
1〜2回で合格するグループと、5回以上の受験を経て合格するグループが混在しており、その平均値として3〜4回という数字が生まれています。
中には10回以上挑戦してようやく合格するケースもあり、受験回数に上限はありません。
複数年受験を前提とした場合、学習計画で意識すべき点が変わります。
毎年の法改正対応が必要になること、科目合格制度がないため前年の学習成果をリセットせずに維持・更新する学習が求められること、試験直前期の仕上げ時間をどう確保するかが年を重ねるごとに重要になることなどが挙げられます。
長期戦を見越した学習戦略としては、過去問をベースに頻出論点を繰り返し固めることが最も効率的です。
毎年の法改正情報は試験対策用の教材やテキストを更新版に切り替えて対応するのが確実といえます。
1年以内での合格を狙う場合と、複数年での合格を想定する場合では学習の組み立て方が変わります。
自分のライフスタイルと確保できる時間を冷静に見積もった上で、無理のない計画を立てることが合格への第一歩になります。

社労士試験の合格者の多くは、仕事を続けながら資格を取得しています。
厚生労働省が公表している2025年度(令和7年度)の試験データによると、合格者のうち会社員が58.4%、公務員が11.7%、団体職員が4.8%と、何らかの仕事に就いている方が合格者全体の8割以上を占めています。
この数字が示すのは、「働きながらでも合格できる試験」という事実です。
その反面、フルタイムで仕事をしながら週24時間前後の学習時間を継続的に確保し続けることは、簡単ではありません。
厚生労働省の2025年度(第57回)社労士試験合格者データを詳しく見ると、合格者の職業別・年齢別の分布が見えてきます。
| 職業区分 | 割合 |
|---|---|
| 会社員 | 58.4% |
| 公務員 | 11.7% |
| 無職 | 11.0% |
| 団体職員 | 4.8% |
| 自営業 | 3.6% |
| その他 | 10.5% |
出典:厚生労働省「第57回社会保険労務士試験合格者の年齢別・職業別・男女別構成」
また、年齢層別では30代が32.5%で最も多く、次いで40代が27.5%、50代が18.9%と続きます。
30〜40代のいわゆる「働き盛りの世代」が合格者全体の約6割を占めているという構成は、過去数年間を通じて大きく変わっていません。
この数字から読み取れるのは、社労士試験が「勉強だけに集中できる環境がなければ合格できない試験」ではないということです。
会社での実務経験が試験知識の理解を深める場合もあります。
人事・労務・経理などの業務に携わっている方であれば、社会保険手続きや労務管理の実態がイメージしやすく、テキストの内容を現場感覚と結びつけながら学べる利点があります。
受験者の大半が社会人であることを踏まえると、同じ条件で学習していながら合格できなかった人も相当数います。
働きながら合格した人が多い事実は希望になりますが、それと同時に、計画的な学習戦略なしでは成立しない難しさも含んでいます。
平日の仕事後や通勤時間、休日を組み合わせてスキマ時間を積み上げながら合格を目指す場合、単に時間を集めるだけでは不十分です。
限られた時間を最大限に活かすための条件がいくつかあります。
まず、学習の「質」を担保する仕組みが必要です。
疲労が蓄積した平日の夜に重い教材を開いても、情報が頭に入りにくくなります。
こうした時間帯には一問一答形式の問題演習や、音声教材での聴き流しなど、負荷が低い学習方法を当てる工夫が有効です。
本腰を入れたインプット学習は、比較的集中力を確保しやすい休日の午前中など、状態の良い時間帯に行うというメリハリが長期間の学習継続を支えます。
次に、法改正対応の仕組みを確保することです。
社労士試験では試験実施年の4月1日時点までに施行された法改正が出題対象となります。
社会人が独学で最新情報を追い続けるのは相当な手間がかかります。
通信講座や受験予備校を活用することで、法改正情報のアップデートを教材側に委ねられるのは、時間が限られる社会人にとって大きな利点です。
さらに、「勉強しない日を作らない」という継続性も重要です。
1日10分でも接触頻度を保つことが、長期間にわたる知識の定着を助けます。
仕事の繁忙期には学習時間が大きく減ることもありますが、ゼロにしない工夫が翌月以降の挽回につながります。
働きながら合格を実現している方に共通するのは、「隙間を見つける」のではなく「隙間を設計する」という姿勢です。
通勤電車の往復30分、昼休みの20分といった細切れの時間を「この時間は○○をやる」と事前に決めておくことで、迷いなく学習に入れる状態を作ることが習慣化の鍵になります。
社労士試験を独学で突破することは不可能ではありませんが、相当な困難が伴います。
合格者全体のうち独学での合格者は全体の1割程度とされており、受験者全体で見た場合の独学合格率は0.5%前後という推計もあります。
独学が難しい主な理由は次の3点です。
1点目は、膨大な学習範囲を自力で構造化する必要があることです。
10科目にわたる社労士試験の学習範囲を、どこから始めてどの順序で進めるかを自分で設計しなければなりません。
非効率な順序で学習を進めてしまうと、後半で前半の内容との関連性に気づいて戻り学習が発生し、時間のロスが膨らみます。
2点目は、毎年の法改正情報を自分で収集・整理する手間です。
市販のテキストは発行時点の情報に基づいているため、試験実施年に新たに施行された法改正をカバーするためには、官報や厚生労働省の告示などを自ら調べる必要があります。
3点目は、モチベーション維持の難しさです。
1年以上にわたる独学学習では、客観的なフィードバックを得る機会が少なく、自分の学習が正しい方向に進んでいるか確認しにくいという問題があります。
模試を積極的に活用することで補うことは可能ですが、費用や機会の面での制約もあります。
独学での合格に向いているのは、以下のような条件が揃っている方です。
こうした条件が揃っていない初学者や社会人の場合、独学よりも通信講座の活用を検討した方が合格への近道になるケースが多いでしょう。
通信講座であれば学習範囲の構造化と法改正対応が講座側に委ねられ、限られた時間を「学習そのもの」に集中しやすくなります。

社労士試験は学力試験であると同時に、受験するための資格要件がある試験です。
行政書士試験や宅建士試験のように誰でも申し込める試験とは異なり、所定の学歴・実務経験・国家試験合格のいずれかを満たしていなければ受験できません。
受験を検討する際には、まず自分が受験資格を持っているかどうかを確認することが最初のステップになります。
受験資格は大きく3つのルートに分かれます。
| ルート | 主な要件 | 補足 |
|---|---|---|
| 学歴ルート | 大学・短大・高専等の卒業 | 大学在学中でも62単位以上で可 |
| 実務経験ルート | 労働社会保険関連事務に3年以上従事 | 単純事務は原則対象外 |
| 試験合格ルート | 行政書士など厚生労働大臣が認めた国家試験の合格 | 対象資格は79種類 |
出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」
これらのうち1つでも満たしていれば受験できます。
なお、いずれにも該当しない場合でも、過去3回のいずれかの社労士試験の受験票または成績通知書を所持している方は次回の受験資格が認められるという「過去受験」要件もあります。
学歴ルートで受験資格を得るためには、以下のいずれかを満たす必要があります。
注目すべきは、大学を卒業していなくても在学中から受験できる点です。
4年制大学の3年生などで卒業要件単位を62単位以上修得していれば、学年や卒業前であっても受験申込が可能です。
専門学校卒業者については、修業年限2年以上かつ総授業時間数1,700時間以上という条件が設けられています。
一般的な2年制の専門学校の多くはこの条件を満たしていますが、すべての専門学校・学科が対象というわけではありません。
自分の卒業校の授業時間数がこの基準を満たしているかどうかは、卒業した専門学校に問い合わせて「社会保険労務士試験 専修学校修了者受験資格証明書」を発行してもらうことで確認できます。
高校卒業のみの場合、学歴ルートでは受験資格を満たせません。
そのため高卒の方が社労士試験を目指す際は、後述の実務経験ルートか試験合格ルートで受験資格を取得する必要があります。
学歴要件を満たさない方でも、3年以上の実務経験があれば受験資格を取得できます。
対象となる実務経験の主な例は以下の通りです。
実務経験ルートで特に注意が必要なのは、「単純な事務作業は対象外」という点です。
書類の整理やファイリングなどの補助的な業務は、3年勤務していても実務経験として認められない場合があります。
人事・労務担当として社会保険の加入手続きや給与計算、雇用保険の申請などに実際に携わっていた業務経験が対象です。
自分の経験が受験資格に該当するかどうかを事前に確認したい場合は、全国社会保険労務士会連合会試験センターにFAXまたは郵送で実務経験証明書を送付し、受験資格の事前審査を依頼することができます。
申請後に「該当する」「該当しない」の判断が通知されるため、受験を計画している方は早めに確認しておくとよいでしょう。
高卒の方が社労士試験の受験資格を得るためには、実務経験ルートか試験合格ルートのどちらかを選ぶことになります。
実務経験ルートでは、先述の通り労働社会保険関連の事務に3年以上従事することが条件です。
人事・労務系の職種に就いている場合や、社労士事務所・弁護士事務所でのアシスタント業務を3年続ける方法がこれに該当します。
試験合格ルートでは、厚生労働大臣が認めた79種類の国家試験のいずれかに合格することで受験資格を取得できます。
受験資格のない行政書士試験は、高卒の方が社労士試験への受験資格を得るための最短ルートとして広く知られています。
行政書士試験は受験資格の制限がなく誰でも受験でき、合格率は例年10〜15%前後です。
法律知識を基礎から積み上げながら行政書士資格を取り、その後に社労士試験へ挑戦するという段階的なルートを選ぶ方が多いです。
行政書士以外で受験資格として認められる主な国家試験には、看護師・保育士・歯科衛生士・調理師・美容師などの医療・福祉・生活関連の国家資格も含まれています。
すでに保有している国家資格が受験資格に該当するケースもあるため、社会保険労務士試験オフィシャルサイトに掲載されている対象資格一覧を確認してみるとよいでしょう。
社労士試験は合格率が例年5〜7%台で推移する難関国家資格です。
2025年度(令和7年度)の合格率は5.5%で、100人受験して合格できるのは約5〜6人という水準です。
偏差値でいうと65前後と位置づけられることが多く、行政書士や宅建士よりも難易度は明確に上で、司法書士よりはやや易しいという位置づけになります。
難しさの本質は合格率の低さだけでなく、10科目それぞれに合格基準点が設けられていて1科目でも下回ると不合格になる「足切り制度」にあります。
初学者が独学で挑む場合、合格レベルに達するまでの学習時間の目安は800〜1,000時間です。
1年での合格を目指すなら、前年の9〜10月から学習を開始して平日2〜3時間・土日各5〜6時間のペースが現実的です。
通信講座を活用すると500〜700時間への短縮が見込めますが、法改正への対応や模試活用なども含めると実際はこの目安を上回るケースも多くあります。
平均受験回数が3〜4回とされていることから、1年で合格できなかった場合も累計の学習時間は1,500時間を超えることがあります。
合格できます。
厚生労働省が公表する2025年度試験のデータによると、合格者の58.4%が会社員で、職業がある方の合計は合格者の8割以上を占めています。
週あたり20〜25時間の学習時間を1年以上継続できる環境と計画が必要です。
働きながら合格するためのポイントは、通勤や昼休みのスキマ時間を設計的に活用すること、繁忙期でも学習をゼロにしない習慣を維持すること、法改正対応を通信講座に委ねて学習そのものに集中することなどが挙げられます。
合格率で比較すると社労士のほうが難しい試験です。
2025年度の合格率は社労士が5.5%、行政書士が14.54%で、行政書士の合格率は社労士の約2.6倍あります。
ただし試験の難しさの性格が異なります。
行政書士試験には科目ごとの細かい足切りがなく、得意科目で不得意科目をある程度カバーできます。
社労士試験は10科目それぞれに最低得点基準が設けられているため、全科目を一定水準以上に仕上げる必要があり、1科目の失敗で全体が不合格になるリスクがあります。
合格率の差より試験構造の厳しさが、社労士を難しいと感じさせる根本的な理由です。
高卒の場合、学歴ルートでは受験資格を満たせませんが、実務経験か国家試験合格のどちらかで受験資格を得ることができます。
実務経験ルートでは、労働社会保険関連の事務に3年以上従事することが条件です。
国家試験合格ルートでは、厚生労働大臣が認定した79種類の国家試験に合格することで受験資格が得られます。
高卒の方の多くは、受験資格に制限のない行政書士試験に合格してから社労士試験に進むルートを選んでいます。
行政書士試験は合格率10〜15%の難関ですが、受験資格が不要で、法律知識の基礎固めにもなる点でこのルートが最短の選択肢になります。
足切りとは、社労士試験の科目別合格基準点のことです。
択一式試験では各科目10点満点中4点以上、選択式試験では各科目5点満点中3点以上が原則として必要で、たとえ総得点が合格ラインを超えていても1科目でもこの基準を下回ると不合格になります。
選択式では1問あたりの配点が1点で、5問しかないため1問のミスが直接足切りにつながります。
足切りのリスクが高い科目として、労働に関する一般常識(労一)と社会保険に関する一般常識(社一)が挙げられます。
過去10年間でこの2科目に救済措置が集中して発動されていることからも、これらの科目が受験者にとって最大のリスク要因です。
救済措置とは、特定の科目の合格基準点を通常の3点や4点から引き下げる補正制度です。
その年の試験で、特定の科目の合格基準点以上を取れた受験者の割合が5割を下回った場合に発動されます。
厚生労働省が合格発表と同時に公表するため、試験当日には救済があるかどうかはわかりません。
2025年度は選択式の労災・労一・社一の3科目と択一式の雇用保険で救済が発動されましたが、2023年度は選択式・択一式ともに救済はゼロでした。
学習では救済をあてにせず、原則の基準点を全科目でクリアすることを目標に準備することが重要です。
不可能ではありませんが、かなり難しいのが現実です。
合格者のうち独学での合格者は全体の1割程度とされており、受験者全体に対する独学合格者の割合は0.5%前後という推計もあります。
独学が難しい主な理由は、10科目にわたる膨大な学習範囲を自分で構造化する必要があること、毎年の法改正情報を自力で収集・整理する手間がかかること、客観的なフィードバックを得にくくモチベーション維持が難しいことの3点です。
労働法規や社会保険の実務経験が3年以上ある方や、法律系資格の合格経験がある方であれば独学でも可能性はありますが、初学者は通信講座の活用を検討するのが現実的です。