TOPプライバシーポリシー

作業療法士とは、食事・入浴・仕事・趣味といった日常生活の活動を通じて、病気やけがで生活が困難になった人の自立を支援する国家資格の専門職です。
理学療法士との最大の違いは、精神科でのリハビリをリハビリ3職種の中で唯一担える点にあります。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、2025年3月時点での有資格者は118,465人にのぼり、急性期病院から精神科病院・介護老人保健施設・児童発達支援センターまで幅広い現場で活躍しています。
本記事では、作業療法士の具体的な仕事内容・領域別の専門性・平均年収・国家試験の合格率・なり方から将来性まで、現場の視点を交えながら詳しく解説します。

作業療法士とは、身体または精神に障害のある人が、食事・入浴・仕事・趣味といった日常の活動を通じて生活の自立や社会復帰を実現できるよう支援する、国家資格を持つリハビリテーション専門職です。
英語ではOccupational Therapist(オキュペーショナル・セラピスト)と表記し、現場ではOTという略称が広く使われています。
Occupational(オキュペーショナル)には生活上の・職業的なという意味があり、生活上のあらゆる活動をリハビリの手段とするという作業療法の本質を言い表しています。
作業療法士は、1965年に制定された理学療法士及び作業療法士法に基づき、厚生労働大臣の免許を受けて業務を行うリハビリ専門職です。
同法では、作業療法とは身体または精神に障害のある者に対し、主として応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るため、手芸・工作その他の作業を行わせること、と定義されています。
手工芸や工作にとどまらず、食事動作の訓練・精神疾患へのアプローチ・福祉用具の選定・住環境の改修提案・発達障害のある子どもへの支援まで、対象となる活動は多岐にわたります。
作業療法士になるには、文部科学省または厚生労働省が指定する養成校で3年以上の所定課程を修了したうえで、国家試験に合格する必要があります。
試験は毎年1回、2月下旬に全国8都道府県で実施されます。
試験形式はマークシート式で、問題数は一般問題と実地問題を合わせて199問です。
合格基準は総得点で6割以上の正解が必要とされています。
厚生労働省が発表した第60回作業療法士国家試験の結果によると、2025年に実施された試験では受験者5,693人のうち4,887人が合格し、合格率は85.8%でした。
例年80%前後で推移しており、養成課程でしっかり学べば十分に合格を狙える水準といえます。
以下の表に、作業療法士の国家資格に関する基本情報をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号) |
| 免許の交付 | 厚生労働大臣 |
| 受験資格 | 指定養成校で3年以上の課程を修了(大学・短大・専門学校) |
| 試験の実施 | 年1回・毎年2月下旬・全国8都道府県 |
| 試験形式 | マークシート式 199問 |
| 合格基準 | 総得点で6割以上の正解(2025年第60回) |
| 第60回合格率 | 85.8%(受験者5,693人・合格者4,887人) |
出典: 厚生労働省「第60回理学療法士国家試験及び第60回作業療法士国家試験の合格発表について」(2025年)
免許取得後は、厚生労働省に免許申請・名簿登録を行うことで晴れて作業療法士として働けるようになります。
登録済証明書を先に取得すれば、免許証の届く前から職場への提出書類として使用できるため、実際の勤務開始には間に合います。
作業療法士が扱う作業とは、単に手工芸や工作だけを意味するものではありません。
人が生きていく上で行うすべての活動が支援の対象となります。
実際の臨床現場では、対象となる活動をADL・IADL・社会参加の3段階に整理したうえで支援計画を立てるのが一般的です。
それぞれ何を意味するのか、具体的に解説します。
ADLとはActivities of Daily Livingの略で、日本語では日常生活動作と訳されます。
食事・入浴・整容(身だしなみの手入れ)・更衣・排泄・起居動作・移動など、日々の生活の基盤となる基本的な動作の総称です。
脳卒中や骨折の後遺症でこれらの動作が困難になった方が、再び自分でできるよう訓練することが、作業療法士の主要な業務の一つです。
IADLとはInstrumental Activities of Daily Livingの略で、手段的日常生活動作と呼ばれます。
ADLよりも応用的で複合的な活動が含まれており、料理・掃除・洗濯・買い物・金銭管理・服薬管理・電話やスマートフォンの操作・公共交通機関の利用などが該当します。
退院後の在宅生活を想定したIADLの訓練は、作業療法士が中心的に担うリハビリです。
社会参加は、就労・学業・趣味・地域活動・余暇・スポーツなど、その人の生きがいに関わる活動全般を指します。
病気やけがで仕事を離れた方が職場に復帰するための就労支援や、長期入院の後に地域の集まりに参加できるよう生活を整える支援なども、作業療法士が担う大切な業務です。
以下の表で、作業療法士が扱う活動の範囲を確認してみましょう。
| 区分 | 主な活動の例 |
|---|---|
| ADL(日常生活動作) | 食事・入浴・整容・更衣・排泄・移動・起居動作 |
| IADL(手段的日常生活動作) | 料理・掃除・買い物・金銭管理・服薬管理・交通機関の利用 |
| 社会参加 | 就労・学業・趣味活動・地域活動・余暇・スポーツ |
理学療法士が立つ・歩く・寝返るなどの基本動作の回復を主に担うのに対し、作業療法士はその先にある生活そのものを支える役割を持ちます。
骨折で入院した方が退院後に自分で料理や買い物ができるよう訓練したり、精神疾患を抱える方が生活リズムを整えながら社会復帰を目指したりする支援が、作業療法士の仕事の核心といえます。
また、作業療法では身体機能の回復を最終目標とするのではなく、その人が何をしたいか・どんな生活を送りたいかというQOL(生活の質)を最優先に考えます。
個々の価値観や生活背景・家族環境を丁寧に聞き取ったうえで支援計画を立てる点が、他のリハビリ職と大きく異なる特徴です。
作業療法士の有資格者数は年々増加を続けています。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、2025年3月31日時点での有資格者数は118,465人にのぼります。
2000年当時の有資格者はおよそ1万人台にとどまっていました。
その後、少子高齢化に伴うリハビリ需要の高まりや養成校の増加を背景に、約25年で約10倍以上に増加しています。
協会会員の性別内訳は男性39.2%・女性60.8%で、女性が多い職種です。
平均年齢は37.4歳と比較的若く、今後も現場を支える中心的な存在として期待されています。
勤務先の種別も多様で、医療関連施設が全体の71.8%と最も多く、次いで介護関連が18.4%、障害・福祉関連が4.2%という内訳です。
| 勤務先の種別 | 割合 |
|---|---|
| 医療関連(病院・診療所等) | 71.8% |
| 介護関連(訪問・通所・施設等) | 18.4% |
| 障害・福祉関連施設 | 4.2% |
| 養成教育(専門学校・大学等) | 3.8% |
| 行政・その他 | 1.9% |
出典: 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」(2025年9月発行)
医療機関の中でも一般病院が最多で26,795人が勤務しており、精神科病院が4,799人でこれに続きます。
精神科病院に多くの作業療法士が在籍しているのは、精神科領域のリハビリを専門的に担える職種が、リハビリ3職種の中でも作業療法士のみであることが大きな理由です。
担当する疾患の内訳を見ると、脳血管疾患が45.2%と最も多く、統合失調症などの精神及び行動の障害が全体の約17%を占めます。
骨折などの運動器疾患が9.4%、アルツハイマー病・認知症が合わせて約5%という分布です。
日本作業療法士協会の同統計資料によると、協会員の88.4%が現在も作業療法士として現役で勤務を続けています。
資格取得後に長く安定して働きやすい職種である点も、作業療法士の大きな特徴のひとつです。
また、作業療法士の活躍の場は一般的なイメージをはるかに超えた広がりを持っています。
病院や介護施設に加え、発達障害者支援センター・特別支援学校・精神保健福祉センター・職場復帰を支援する就労移行支援事業所・在宅訪問リハビリテーションなど、支援の場は医療の枠を大きく越えています。

作業療法士の仕事内容は、身体障害・精神障害・老年期・発達障害の4つの領域に大別されます。
対象となる疾患も支援の手法も、領域によって大きく異なります。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、作業療法士が担当する主要疾患は脳血管疾患が全体の45.2%と最多で、骨折などの運動器疾患が9.4%、統合失調症などの精神及び行動の障害が約17%を占めます。
4つの領域の特徴を以下の表で確認できます。
| 領域 | 主な対象疾患・障害 | 主な勤務先 |
|---|---|---|
| 身体障害 | 脳卒中・骨折・高次脳機能障害・脊髄損傷 | 急性期・回復期・維持期病院 |
| 精神障害 | 統合失調症・うつ病・双極性障害・依存症 | 精神科病院・クリニック・デイケア |
| 老年期・認知症 | アルツハイマー病・血管性認知症・パーキンソン病 | 老健・訪問リハビリ・デイケア |
| 発達障害・小児 | 脳性まひ・自閉スペクトラム症・発達性協調運動障害 | 児童発達支援センター・放課後等デイ |
出典: 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」(2025年9月発行)
身体障害領域は作業療法士が最も多く従事する分野で、脳血管疾患・骨折・高次脳機能障害などを対象に、日常生活動作の再獲得と社会復帰に向けた訓練を行います。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、作業療法士が担当する疾患の45.2%が脳血管疾患で、骨折などの運動器疾患が9.4%と続きます。
身体障害領域は、作業療法士全体の仕事の半数以上を占める中心的な分野です。
身体障害領域での仕事は、患者が入院するステージによって役割が変わります。
急性期・回復期・維持期の3段階それぞれで、作業療法士が担う内容は大きく異なります。
急性期は発症・手術直後の段階です。
病棟のベッドサイドから早期にリハビリを開始し、廃用症候群(筋力低下・関節拘縮・誤嚥性肺炎など)の予防を最優先します。
食事・整容・着替えなど、その場でできる動作を少しずつ増やしながら、身体機能の評価も並行して進めます。
回復期は集中的な訓練を行う段階です。
日常生活動作の回復を目標に、1日数時間のリハビリを毎日行います。
脳血管疾患は発症後180日、骨折などの運動器疾患は術後150日が診療報酬上の上限日数とされており、回復期病棟では365日体制でリハビリを提供する施設も多くあります。
維持期(生活期)は自宅や施設に移行した後の段階です。
退院後の住環境整備・福祉用具の選定・通所リハビリや訪問リハビリによる機能維持が中心となります。
| ステージ | 主な場所 | 主な仕事内容 |
|---|---|---|
| 急性期 | 急性期病院 | ベッドサイドリハビリ・廃用予防・食事・整容の訓練開始 |
| 回復期 | 回復期リハビリ病棟 | ADL集中訓練・上肢機能訓練・高次脳機能訓練・退院支援 |
| 維持期(生活期) | 老健・訪問・通所 | 住環境整備・福祉用具選定・在宅生活での動作訓練 |
身体障害領域で特に重要な役割の一つが、上肢機能の訓練です。
脳卒中後の片麻痺では手指の細かな動作が失われることが多く、箸の操作・ボタンの掛け外し・字を書くといった日常動作を繰り返し練習します。
高次脳機能障害への対応も、身体障害OTの専門的な業務です。
高次脳機能障害とは、脳損傷後に記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害などが生じる状態です。
外見からはわかりにくいにもかかわらず生活への影響が大きく、手帳活用・スケジュール管理ツール・環境調整など、代償手段の提案が重要となります。
退院前の家屋評価も身体障害OTの重要な業務です。
実際に患者の自宅を訪問し、段差・廊下幅・浴室・トイレの環境を確認したうえで、具体的な改修案や福祉用具の導入を提案します。
精神障害領域は、統合失調症・うつ病・双極性障害・依存症などを対象に、創作活動・SST・生活技能訓練を通じて社会復帰を支援する、作業療法士だけが専門的に担える領域です。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料では、精神科病院に勤務する会員が4,799人、統合失調症を主な担当疾患とする会員が全体の10.1%を占めます。
精神科領域のリハビリを専門職として担えるのは、リハビリ3職種の中で作業療法士のみです。
精神科作業療法は、精神科病棟・精神科外来・デイケアなどで実施されます。
集団または個別で、陶芸・絵画・書道・手芸・園芸・体操・料理などの活動を用いて心身の回復と社会参加を目指します。
診療報酬でも「精神科作業療法」として算定が認められており、その専門性は制度的にも位置づけられています。
SSTはSocial Skills Trainingの略で、社会生活技能訓練と訳されます。
対人関係の構築・服薬管理・金銭管理・ストレスへの対処法などを、ロールプレイング形式で繰り返し練習するリハビリ技法です。
作業療法士がSSTを通じて患者を支援することで、退院後の再入院防止と安定した地域生活の維持に貢献します。
精神科デイケアは、退院後の患者が日中に通う通所型のリハビリプログラムです。
規則正しい生活リズムの維持・対人関係の練習・就労準備などが目的で、作業療法士がプログラムの立案から実施・評価までを担当します。
精神障害OTが対応する疾患は統合失調症だけではありません。
うつ病(気分障害)の患者には活動量を段階的に上げる支援と自己効力感の回復を、双極性障害の患者には気分の波をセルフモニタリングする手段を、アルコール・薬物依存症の患者には断酒・断薬のための回復プログラムを提供します。
疾患ごとに異なるアプローチを使い分ける専門性が求められます。
就労移行支援も精神障害領域のOTが担う重要な分野です。
精神疾患を抱えながら働くためには、業務遂行能力・ストレス管理・職場での対人関係など多面的な支援が必要です。
就労移行支援事業所では、作業療法士が本人の能力評価から職場環境調整まで一貫して支援します。
老年期・認知症領域では、高齢者の生活機能を維持・向上させることを目標に、介護老人保健施設・訪問リハビリ・デイケアなど多様な場で支援を行います。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、アルツハイマー病を主な担当疾患とする会員が全体の2.6%、その他の認知症が2.5%、パーキンソン病が1.7%、廃用症候群(虚弱老人)が6.0%を占めます。
介護関連施設に勤務する会員は全体の18.4%と、医療機関に次いで多くの作業療法士が活躍する領域です。
老年期・認知症領域の主な対象は、アルツハイマー病・血管性認知症・レビー小体型認知症・パーキンソン病・廃用症候群などです。
65歳以上の高齢者が中心ですが、65歳未満の若年性認知症への対応も近年増えています。
老健(介護老人保健施設)は病院と在宅の中間施設で、退院後すぐに自宅復帰が難しい高齢者を対象に在宅復帰を目標とした短期集中リハビリを提供します。
老健のOTは、ADL訓練だけでなく、退院後の住環境整備・家族への介助指導・地域サービスとの連携調整まで幅広く担います。
認知症の方への作業療法では、機能の回復より現在の生活機能の維持が主な目標となります。
得意なことを活かした活動(手工芸・料理・園芸・音楽など)を通じて認知機能の維持を図り、失われた機能には手帳・日課表・音声メモなどの代償手段を提案します。
回想法も老年期・認知症領域で広く活用される手法です。
回想法とは、過去の出来事や思い出を引き出す対話を通じて、心理的安定や自己効力感の回復を図るアプローチです。
昔使っていた道具・写真・音楽などを活用し、本人の長所や関心を引き出しながらコミュニケーションを深めます。
訪問リハビリでは、利用者の自宅に出向き、実際の生活環境の中でリハビリを実施します。
デイケアや施設とは異なり、自宅の台所・浴室・トイレで直接練習できるため、退院後の生活に直結した支援が可能です。
段差解消・手すりの設置・転倒防止のための家具配置なども、その場で具体的に提案します。
発達障害・小児領域では、脳性まひ・自閉スペクトラム症・発達性協調運動障害などを対象に、遊びや日常生活を通じた発達支援と生活技能の向上を行います。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、発達障害(心理的発達に関連した障害)を主な担当疾患とする会員が全体の2.7%、脳性まひなどの神経系疾患が2.4%を占めます。
また、児童発達支援センター・放課後等デイサービスなどの施設に勤務する会員は1,330人にのぼります。
発達障害・小児領域の主な対象は、脳性まひ・自閉スペクトラム症(ASD)・発達性協調運動障害(DCD)・知的障害・学習障害(LD)・注意欠如多動症(ADHD)・染色体異常などです。
主な勤務先は、児童発達支援センター・放課後等デイサービス・小児科がある総合病院・特別支援学校・訪問看護ステーションなどです。
感覚統合療法は、発達障害・小児領域のOTが行う代表的なアプローチです。
感覚統合療法とは、視覚・聴覚・触覚・固有受容覚・前庭覚などの感覚情報の処理能力を高めるため、治療的な遊びを通じて子どもの発達を促すリハビリです。
ブランコ・トランポリン・砂遊び・ボール活動などの遊具や感覚刺激を活用したプログラムを、作業療法士が計画・実施します。
微細運動の訓練も重要な業務です。
微細運動とは、鉛筆・はさみ・箸などを使う際の手指の細かい動きを指します。
書く・切る・つまむといった動作は学校生活にも直結するため、発達の遅れがある子どもへの早期支援が求められます。
児童発達支援センターでは、就学前の6歳未満の子どもを主な対象として、集団または個別のリハビリを行います。
遊びを通じた発達支援・ADL訓練(食事・着替え・排泄)・保護者へのアドバイスが中心です。
放課後等デイサービスでは、6歳から18歳の就学児を対象に、学校生活への適応や将来の社会生活に向けた支援を行います。
学齢期は学習スキルや対人交流能力の向上も重要なテーマとなります。
保護者への支援も、発達障害・小児OTの大切な役割です。
子どもの特性を保護者にわかりやすく説明し、家庭での関わり方・日常生活上の工夫・学校との連携方法を具体的にアドバイスします。
保護者の理解と協力が子どもの発達を大きく左右するため、保護者対応の比重は他の領域より高くなる傾向があります。

作業療法士の勤務先は、一般病院・精神科病院・介護老人保健施設・訪問リハビリ・児童発達支援センターなど幅広く、職場の種別によって一日のスケジュール・勤務体系・チームの構成・仕事の進め方が大きく異なります。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、最も多い勤務先は一般病院で26,795人が在籍し、介護老人保健施設が2,753人、通所リハビリテーションが1,692人、訪問看護ステーションが1,452人と続きます。
以下では、主要な職場ごとの環境と仕事の特徴を解説します。
病院勤務の作業療法士は、医師・看護師・理学療法士・言語聴覚士・医療ソーシャルワーカーなどと連携するチーム医療の中で働き、患者の状態に合わせた個別リハビリを担います。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料では、一般病院に勤務する会員が26,795人と最多です。
これは協会員全体の約半数近くを占める数字で、病院が作業療法士の主要な働き場であることを示しています。
病院での一日の流れは、おおむね一定のパターンで進みます。
朝のミーティングでチーム内の情報を共有し、午前・午後に分けて担当患者のリハビリを実施します。
1名あたりのリハビリ時間は急性期で20〜40分、回復期で40〜60分が目安です。
空き時間にはカルテへの記録・評価書の作成・退院前カンファレンスの準備などのデスクワークを行います。
勤務時間は8時から17時が多く、回復期リハビリ病棟では土日・祝日も稼働する365日体制をとる施設が大半です。
シフト制による土日出勤がある反面、平日に振替休日を取得できる場合が多いです。
| 病院の種別 | 主な対象 | リハビリ時間の目安 | 勤務体系の特徴 |
|---|---|---|---|
| 急性期病院 | 発症・手術直後の患者 | 1回20〜40分 | 日勤のみが多い |
| 回復期リハビリ病棟 | 自宅復帰を目指す患者 | 1回40〜60分 | 365日対応・シフト制 |
| 維持期(慢性期)病院 | 長期療養が必要な患者 | 1回20〜40分 | 日勤中心 |
出典: 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」(2025年9月発行)
病院では多職種カンファレンスへの参加が業務の大きな柱の一つです。
患者の入院当初から退院後の生活を見据えた支援方針をチームで検討し、退院前には実際に自宅を訪問する「家屋評価」を行い、段差・浴室・トイレ環境を確認したうえで改修案を提案します。
回復期リハビリ病棟は、作業療法士の専門性が最もダイレクトに発揮できる職場の一つとして新卒から高く評価されています。
患者と毎日向き合い、入院初日から退院まで機能回復の全過程に携われる点が最大の魅力です。
介護施設や訪問リハビリで働く作業療法士は、生活の維持と在宅復帰を目標に、より長期的かつ生活密着型のリハビリを担います。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、介護老人保健施設には2,753人、通所リハビリテーションには1,692人、訪問リハビリテーションには1,150人の会員が在籍します。
介護関連施設全体では全会員の18.4%が勤務しており、医療系に次ぐ大きな雇用の場です。
介護老人保健施設(老健)は、病院と自宅の中間施設として位置づけられ、在宅復帰を目標とした短期集中リハビリを提供します。
老健での仕事は個別リハビリ・集団活動・家族指導・カンファレンス参加・記録作成が中心で、一般病院と比べて緊急対応が少なく、計画的に業務を進めやすい環境です。
老健では「生活行為向上リハビリテーション」が重視されます。
施設内に設置されたキッチンを模した訓練室での料理練習・玄関の段差昇降訓練・片手での洗濯物の干し方など、実際の生活場面に近い状況での訓練が求められます。
訪問リハビリテーションは、OTが利用者の自宅を定期的に訪問し、生活環境の中でリハビリを行うサービスです。
訪問リハビリの最大の特徴は、施設や病院では再現できない、実際の生活空間での支援ができる点にあります。
自宅の台所・浴室・トイレで直接動作練習を行い、段差解消・手すり設置・家具配置の見直しまで実施します。
訪問リハビリでは車や自転車での移動が伴い、運転免許が実質的に必要となる職場がほとんどです。
1日の訪問件数は5〜8件程度が一般的で、移動時間を含めたスケジュール管理も業務の一部です。
| 施設種別 | 主な勤務内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 介護老人保健施設 | 在宅復帰に向けた集中リハビリ・家族指導 | 生活行為向上リハビリが中心 |
| 通所リハビリ(デイケア) | 集団・個別リハビリ・機能訓練・送迎対応 | 毎日同じ利用者と顔を合わせる |
| 訪問リハビリ | 在宅生活での動作訓練・住環境整備 | 実生活の中での直接支援が可能 |
| 特別養護老人ホーム | ADL維持・認知症ケア・集団活動 | 機能維持が主目的 |
出典: 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」(2025年9月発行)
介護施設・訪問リハビリは、病院勤務と比べて残業が少なく、土日休みの施設も多い傾向があります。
ワークライフバランスを重視したい作業療法士や、育児中の方が働きやすい環境として選ばれることも多い職場です。
精神科病院やメンタルクリニックで働く作業療法士は、精神疾患を抱える患者の社会復帰と地域生活の安定を、創作活動・グループプログラム・個別面談を通じて支援します。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、精神科病院に勤務する会員は4,799人にのぼります。
精神科領域のリハビリを専門職として担えるのは、リハビリ3職種の中で作業療法士のみであり、精神科病院での作業療法士の存在感は他の職場と比べて際立っています。
精神科での仕事内容は、病院内の作業療法室での集団活動・個別面談・グループワークが中心です。
統合失調症・うつ病・双極性障害・依存症・パーソナリティ障害などを抱える患者に対し、陶芸・絵画・書道・手芸・園芸・調理・スポーツなどの活動を用いたプログラムを計画・実施します。
精神科作業療法は診療報酬として算定が認められており、入院・外来ともに保険請求の対象となります。
このため、プログラムの企画から実施・記録・報告書作成まで、一定の専門的な書類業務が伴います。
精神科デイケアは精神科病院やクリニックに併設されることが多く、入院ではなく通院しながらリハビリを続ける患者が日中に通います。
作業療法士はプログラムの立案・実施・評価を担い、利用者が安心して過ごせる場づくりに貢献します。
精神科デイケアへの通所は、退院後の生活リズムの維持と再入院の予防に大きな役割を果たします。
精神科勤務の大きな特徴の一つは、身体的な負担が他の職場に比べて少ない点です。
高齢者介護や身体リハビリでは患者の移乗・介助など体力を要する場面が多い反面、精神科では主に言語・非言語コミュニケーションを通じた支援が中心となります。
長期的なキャリアを考えた時に、身体的な負担が少ない精神科OTの職場環境を選ぶ作業療法士も増えています。
メンタルクリニック(無床診療所)でも、作業療法士が在籍するケースが増えています。
クリニックでは外来患者への個別作業療法や精神科デイケアの運営が主な業務で、一般病院や精神科病院に比べて患者数が少なく、一人ひとりとじっくり向き合いやすい環境が整っています。
発達障害者支援センターや特別支援学校などの発達・福祉系施設で働く作業療法士は、子どもや発達に特性のある方の生活技能習得と社会参加を、遊びや学習活動を通じて支援します。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、発達障害者支援センターに勤務する会員は30人、特別支援学校に在籍する会員は46人です。
人数は少ないですが、児童発達支援センター(525人)・放課後等デイサービス(422人)を含めると、発達障害・小児領域全体では1,330人が働いています。
児童発達支援センターは、就学前の6歳未満の障害のある子どもが日中に通う通所支援施設です。
ここでは、遊びを通じた感覚統合訓練・食事や着替えなどのADL指導・コミュニケーション支援・微細運動の練習を、集団または個別で実施します。
子ども一人ひとりの発達状況を丁寧にアセスメントし、個別支援計画に沿ったプログラムを立案・実施します。
放課後等デイサービスは、6歳から18歳の就学児童を放課後や長期休暇中に受け入れる施設です。
作業療法士は感覚統合・書字訓練・ソーシャルスキルトレーニングなど学校生活に直結した支援を行い、将来の社会生活への準備も視野に入れたプログラムを提供します。
発達障害者支援センターは、発達障害のある方が地域で安定して生活できるよう、本人や家族・支援者への相談対応・情報提供・関係機関との連携を担う地域の拠点機関です。
作業療法士はここで、発達特性に応じたアドバイスや就労・生活支援の専門的な視点から関わります。
特別支援学校に勤務する作業療法士は少数派ですが、外部専門家として授業に参加したり、担任教師や指導員にアドバイスを行う「巡回相談」の形で関わるケースが近年増えています。
学校という環境の中で、作業療法士の専門的な視点からサポートを提供するスクールOTの需要は今後高まることが見込まれます。
発達・小児系施設の勤務環境は、土日が休みで日勤のみの職場が多く、残業も比較的少ない傾向があります。
子どもの笑顔や成長を間近で見ながら働ける点が、この領域を選ぶ作業療法士の大きな動機となっています。
| 施設種別 | 対象年齢 | 主な支援内容 | 勤務の特徴 |
|---|---|---|---|
| 児童発達支援センター | 未就学(6歳未満) | 発達支援・感覚統合・ADL訓練 | 日勤・土日休みが多い |
| 放課後等デイサービス | 6〜18歳 | 放課後支援・学習支援・SST | 午後〜夕方が活動中心 |
| 発達障害者支援センター | 主に成人を含む全年齢 | 相談支援・就労準備・関係機関連携 | 行政・地域連携が多い |
| 特別支援学校(巡回相談) | 就学児 | 授業参観・教師へのアドバイス | 週〜月単位の訪問形式 |
出典: 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」(2025年9月発行)

作業療法士・理学療法士・言語聴覚士はいずれも国家資格を持つリハビリ専門職ですが、支援の対象・使う技法・活躍できる領域はそれぞれ異なります。
3職種の最大の違いは、精神科リハビリを専門的に担える職種が作業療法士のみである点にあります。
理学療法士が立つ・歩く・寝返るなどの基本動作の回復を専門とするのに対し、作業療法士はその先にある食事・入浴・調理などの生活全般と、身体障害だけでは担えない精神科リハビリを専門とします。
理学療法士はPhysical Therapistの頭文字からPT、作業療法士はOccupational TherapistからOTと略されます。
どちらも1965年制定の理学療法士及び作業療法士法を根拠法とする国家資格で、同じ法律のもとに生まれた姉妹的な職種です。
理学療法士の仕事の中心は、運動療法と物理療法です。
運動療法は筋力強化・関節可動域訓練・歩行訓練・バランス訓練などの体を動かす治療法で、物理療法は電気刺激・温熱・超音波・水などを用いた治療法です。
座る・立つ・歩くという生活の土台となる基本動作の回復が主なターゲットとなります。
作業療法士が担う仕事の範囲は、理学療法士が回復させた基本動作の先にあります。
歩けるようになった患者さんが自分で食事をとり、着替えをし、料理や買い物ができるようになるための支援が作業療法士の役割です。
加えて、精神障害のある方への精神科作業療法・発達障害への支援・認知機能への訓練も担います。
脳卒中の回復過程を例にすると、理学療法士と作業療法士の役割の違いがよくわかります。
脳卒中後の片麻痺では、理学療法士が麻痺した脚の筋力回復と歩行訓練を担い、作業療法士が麻痺した腕・手指の機能訓練と食事動作・更衣動作の再獲得を担います。
病院では同じ患者に対してPTとOTが週に数日ずつリハビリを分担して提供するのが一般的です。
理学療法士が担わない一方で作業療法士が担う領域として、精神科リハビリがあります。
理学療法士は身体機能に特化した専門職であるため、精神疾患に対する専門的なリハビリは担当しません。
作業療法士だけがリハビリ3職種の中で精神科病院・メンタルクリニックで専門的に活動できる職種です。
| 比較項目 | 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) |
|---|---|---|
| 英語表記 | Physical Therapist | Occupational Therapist |
| 根拠法 | 理学療法士及び作業療法士法(1965年) | 理学療法士及び作業療法士法(1965年) |
| 主な支援対象 | 立つ・歩く・寝返るなどの基本動作 | ADL・IADL・精神的健康・社会参加 |
| 精神科への関与 | 基本的になし | あり(リハビリ3職種で唯一) |
| 主な手法 | 筋力訓練・歩行訓練・物理療法 | ADL訓練・上肢機能訓練・作業療法・SST |
| 住環境整備 | あり | あり(特に生活動作の観点) |
| 福祉用具選定 | あり | あり(特に上肢・ADL関連) |
| 有資格者数(参考) | 約22万人以上 | 118,465人(2025年3月) |
出典: PT有資格者数は日本理学療法士協会「統計情報」より参考値、 OT有資格者数は日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」より
言語聴覚士が話す・聞く・食べるというコミュニケーションと嚥下(飲み込み)機能に特化した専門家であるのに対し、作業療法士は日常生活動作全般と精神的健康まで支援する幅広い職域を持ちます。
言語聴覚士はSpeech-Language-Hearing TherapistからSTと略され、1997年に制定された言語聴覚士法を根拠とする国家資格です。
理学療法士・作業療法士と異なり、言語聴覚士は設立が1990年代と比較的新しく、日本言語聴覚士協会によると2023年時点の有資格者数は約4万1,657人とリハビリ3職種の中で最も少ない状況です。
言語聴覚士の主な仕事は、失語症・構音障害・吃音・言語発達遅延・難聴などに対する言語訓練と、嚥下障害(うまく飲み込めない状態)に対する嚥下訓練です。
コミュニケーション機能と食べる機能という非常に特定の領域に深く特化した専門性を持ちます。
嚥下訓練は言語聴覚士と作業療法士が関わる重複領域の一つです。
言語聴覚士が嚥下機能そのものの評価・訓練を専門とするのに対し、作業療法士は食事動作の観点から食具の選定・座位姿勢の調整・食事環境の整備という側面から食べることを支援します。
同じ患者に両者が関わるケースも少なくありません。
脳卒中後の失語症を例にすると、言語聴覚士と作業療法士のそれぞれの役割が明確になります。
言語聴覚士は言葉を思い出しやすくするための言語訓練や読み書きの練習を行います。
作業療法士は言葉が出にくい患者さんが筆談や絵カード・コミュニケーションアプリなどを活用して意思を伝える代替手段を提案し、日常生活全般の自立を支援します。
言語聴覚士が精神科に専門職として関わることは一般的ではありません。
コミュニケーション障害のうち精神疾患に伴うものへの対応は、精神科作業療法として作業療法士が担う場面がほとんどです。
| 比較項目 | 言語聴覚士(ST) | 作業療法士(OT) |
|---|---|---|
| 英語表記 | Speech-Language-Hearing Therapist | Occupational Therapist |
| 根拠法 | 言語聴覚士法(1997年) | 理学療法士及び作業療法士法(1965年) |
| 主な支援対象 | 言語・聴覚・コミュニケーション・嚥下 | ADL・IADL・精神的健康・社会参加 |
| 精神科への関与 | 基本的になし | あり(リハビリ3職種で唯一) |
| 嚥下支援 | 中心的に担う(嚥下機能の評価・訓練) | 食事動作・姿勢・食具の観点から関与 |
| 言語訓練 | 中心的に担う | 代替コミュニケーション手段の提案 |
| 有資格者数(参考) | 約4万1,657人(2023年) | 118,465人(2025年3月) |
出典: ST有資格者数は日本言語聴覚士協会「会員動向」より、 OT有資格者数は日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」より
リハビリ3職種の違いは一目でわかる比較表で整理するのが最も効果的です。
3職種は競合するのではなく、一人の患者を異なる角度から支援するチームとして機能しています。
以下の表で、3職種を主要な観点から比較します。
| 比較項目 | 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) | 言語聴覚士(ST) |
|---|---|---|---|
| 英語略称 | Physical Therapist | Occupational Therapist | Speech-Language-Hearing Therapist |
| 根拠法制定年 | 1965年 | 1965年 | 1997年 |
| 免許の交付 | 厚生労働大臣 | 厚生労働大臣 | 厚生労働大臣 |
| 主な支援対象 | 基本動作(立つ・歩く・起き上がる) | 生活動作全般・精神的健康 | コミュニケーション・嚥下 |
| 身体リハビリ | 中心的に担う | 担う(特に上肢・手指) | 担わない |
| 精神科リハビリ | 担わない | 中心的に担う(唯一) | 担わない |
| 嚥下訓練 | 一部関与 | 食事動作の観点から関与 | 中心的に担う |
| 発達障害支援 | あり | あり(感覚統合など) | あり(言語発達遅延) |
| 住環境整備 | あり | あり(生活動作の観点) | 基本的になし |
| 有資格者数(参考) | 約22万人以上 | 118,465人(2025年3月) | 約4万1,657人(2023年) |
| 平均年収(合算) | 約444万円 | 約444万円 | 約444万円 |
出典: PT・OT・STの有資格者数は 日本理学療法士協会「統計情報」、 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」、 日本言語聴覚士協会「会員動向」 より参考値、平均年収は 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」 (PT・OT・ST・視能訓練士合算値)より
3職種の年収は、厚生労働省が毎年実施する賃金構造基本統計調査において同じカテゴリに分類されており、令和6年の調査では平均年収が約444万円となっています。
資格の違いによる年収差は統計上ほぼ見られないため、職種の選択は年収よりも自分がどの領域で働きたいかという関心に基づいて判断するとよいでしょう。
有資格者数は3職種で大きく異なります。
最も人数が多い理学療法士に対して、作業療法士は約半分、言語聴覚士は5分の1程度の規模です。
言語聴覚士の人数が少ない背景には、国家資格の制定が1997年と理学療法士・作業療法士より32年遅かったことが主な理由として挙げられます。

精神科作業療法とは、精神疾患を持つ人が作業を通じて社会生活機能を回復できるよう支援するリハビリテーションであり、リハビリ3職種の中で作業療法士のみが専門的に担える領域です。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、精神科病院に勤務する作業療法士は4,799人にのぼり、精神科作業療法の診療報酬を算定する施設に在籍する会員は3,874人です。
精神科という特定の医療領域において、これほど多くの作業療法士が活躍しているのは、精神科リハビリを担える専門職が作業療法士以外に存在しないからです。
精神科作業療法の目的は、精神疾患を持つ人が活動を通じて社会生活機能を回復し、病院から地域へと戻るための力を取り戻すことです。
診療報酬においても、精神科作業療法はI007として独立した項目に位置づけられています。
その目的は精神疾患を有する者の社会生活機能の回復と定義されており、1人の作業療法士が担当できる患者数は1日2単位(最大50人)を標準とする形で基準が設けられています。
標準的な実施時間は患者1人あたり1日2時間です。
精神科作業療法の対象となる主な疾患は、統合失調症・うつ病・双極性障害・アルコール・薬物依存症・強迫症・パーソナリティ障害などです。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、統合失調症を主な担当疾患とする作業療法士が全体の10.1%(5,455人)を占めています。
精神科作業療法が身体リハビリと大きく異なるのは、支援の対象が目に見えない症状であるという点です。
骨折や脳卒中では回復の過程がX線やMRIで確認できますが、精神疾患の回復は患者の表情・言葉・行動・対人関係の変化を通じて読み取るしかありません。
そのため作業療法士には、患者の細かな変化を見逃さない観察眼と、長期にわたる関わりを続ける力が必要とされます。
精神科での入院期間は身体疾患と比べて長くなることが多く、数週間から数年にわたるケースもあります。
長期入院中の患者にとって、作業療法士は医師・看護師に次ぐ身近な医療者として信頼関係を築いていく存在です。
精神科OTが提供するプログラムは、創作活動・SST・生活技能訓練・就労支援の4つに大別され、患者の病状や回復段階に合わせて組み合わせて実施します。
創作活動は精神科作業療法の中心的なプログラムです。
陶芸・絵画・書道・手芸・音楽・園芸・料理などの活動を個別または集団で行います。
創作活動の目的は気晴らしではなく、作業を通じた集中力の回復・成功体験の積み重ね・感情表現の場の提供・他者との交流機会の創出です。
作業療法士はどの活動を選ぶかだけでなく、その活動の難易度・時間・集団の大きさを患者の状態に合わせて調整します。
SSTとはSocial Skills Trainingの略で、社会生活技能訓練と訳されます。
精神科OTがSSTをリハビリの手段として活用する際は、対人場面でのコミュニケーションの練習・服薬管理の方法・金銭管理・ストレスへの対処法などをロールプレイング形式で繰り返し練習します。
患者が退院後も再入院せず地域で生活を続けるために、SSTは欠かせないプログラムです。
生活技能訓練は、実際の生活を想定した実践的な練習です。
病院内の調理室での調理実習・買い物や交通機関の利用を含む外出訓練・服薬管理のセルフモニタリング練習などが含まれます。
精神科では長期入院により生活リズムが崩れ、日常的な家事動作への自信を失う患者も少なくないため、こうした訓練は退院に向けた準備として重要な役割を果たします。
精神科デイケアは、退院後も継続してリハビリを受けられる外来型のプログラムです。
日中の活動の場を提供し、生活リズムの安定・対人関係の練習・就労準備などを目的とします。
精神科デイケアを担当する作業療法士は、プログラムの企画・実施・評価だけでなく、参加者の精神状態の変化をモニタリングして医師や看護師と情報を共有する役割も担います。
就労支援も精神科OTの重要な業務の一つです。
精神疾患を抱えながら働くためには、業務遂行能力だけでなく、職場でのストレス管理・休憩の取り方・上司や同僚との関係構築など多面的なスキルが必要です。
就労移行支援事業所や職場への橋渡しまで、精神科OTは就労に向けた一連の支援を担います。
以下の表で、精神科OTが実施する主なプログラムと目的を整理します。
| プログラム種別 | 主な内容 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 創作活動 | 陶芸・絵画・書道・手芸・園芸・音楽 | 集中力回復・成功体験・感情表現 |
| SST | ロールプレイ・対人スキル練習 | 社会生活スキルの習得・再発予防 |
| 生活技能訓練 | 調理実習・外出訓練・服薬管理 | 退院後の自立生活の準備 |
| 精神科デイケア | 集団活動・余暇活動・就労準備 | 生活リズム安定・社会参加促進 |
| 就労支援 | 作業能力評価・職場適応訓練 | 復職・新規就労の実現 |
出典: 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」(精神科関連施設基準算定者データ)をもとに作成
精神科OTに求められるスキルは、身体リハビリとは本質的に異なります。
変化が目に見えにくい精神科の現場では、患者の言葉の奥にある意味を読み取る力と、長期的な視野で関係を築く力が求められます。
精神科OTが特に重視する視点の一つが、ストレングス視点です。
ストレングス視点とは、患者が持つできないことや症状に焦点を当てるのではなく、その人の強み・得意なこと・興味・過去の経験を活かして回復を支えるアプローチです。
精神科の患者は自信を失っていることが多いため、できることを積み重ねる体験が回復の重要な土台となります。
観察力も精神科OTに不可欠なスキルです。
精神疾患の症状は患者の表情・言葉の量・活動への参加具合・他者との関わり方に現れます。
作業療法士は集団プログラムの中で複数の患者を同時に観察しながら、個々の状態の変化を記録・評価し医師や看護師に報告します。
精神科では集団を使った支援が多いため、グループダイナミクスへの理解も求められます。
グループダイナミクスとは、集団の中での人間関係・雰囲気・相互影響のことで、精神科OTは複数の患者が集まるプログラムの中で、安全で参加しやすい場の雰囲気をつくる技術が必要です。
疾患ごとに異なるアプローチも精神科OTの専門性です。
統合失調症の患者には認知機能の特性を踏まえた段階的な練習を、うつ病の患者には活動量を段階的に増やして焦りを生まない関わりを、双極性障害の患者には躁状態・うつ状態それぞれに応じた対応を使い分けます。
リスク管理も重要なスキルです。
精神科の現場では、自傷・自殺念慮・他害のリスクに常に気を配りながら支援を続ける必要があります。
作業療法士は活動の中で患者から発せられるサインに敏感に反応し、必要に応じて医師や看護師と速やかに情報を共有する役割を担います。
精神科OTが身体リハビリのOTと決定的に異なる点は、回復の過程が数週間ではなく数年にわたることが多い点にあります。
長期入院の患者が退院を決意する瞬間や、就労移行支援を経て数年ぶりに働き始める場面に立ち会う経験は、精神科OTならではのやりがいといえます。

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均年収は443万円で、月給30.9万円・賞与71.7万円の内訳となります。
勤務先・経験年数・性別によって400万円台から500万円台まで幅があります。
作業療法士の平均年収は443万円です。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査をもとにすると、月給は30.9万円、年間賞与は71.7万円という内訳です。
月々の手取り額は、健康保険料・厚生年金・住民税などの社会保険料を差し引くと額面の75〜85%程度が目安となります。
扶養家族の有無や個人の状況によって差はありますが、作業療法士の手取り月収はおよそ23〜24万円前後が相場といえます。
男女別の年収差を見ると、男性が平均466万円台、女性が平均417万円台と、50万円程度の開きがあります。
この差の背景には、女性が育休・産休を取得した期間の勤続年数への影響や、勤続年数の違いが反映されています。
| 区分 | 平均年収 | 月給目安 | 賞与目安 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 443万円 | 30.9万円 | 71.7万円 |
| 男性 | 466万円 | 32.5万円 | 76.6万円 |
| 女性 | 417万円 | 29.2万円 | 66万円 |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年公表)
年齢別では、20代前半から経験を積むにつれて着実に年収が上がる傾向があります。
20〜24歳では約338万円だった平均年収が、30代で400万円台、40代後半で500万円台に到達します。
| 年齢 | 平均年収 |
|---|---|
| 20〜24歳 | 337万円 |
| 25〜29歳 | 397万円 |
| 30〜34歳 | 431万円 |
| 35〜39歳 | 457万円 |
| 40〜44歳 | 482万円 |
| 45〜49歳 | 519万円 |
| 50〜54歳 | 548万円 |
| 55〜59歳 | 525万円 |
| 60〜64歳 | 592万円 |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年公表)
60〜64歳で年収が592万円と高い水準になるのは、管理職に就いているケースや、専門作業療法士・認定作業療法士などの上位資格を取得した方の割合が増える年代であることが影響していると考えられます。
作業療法士の給料は、勤務先の種別によって異なります。
厚生労働省の調査データを見ると、障害福祉サービス分野の年収が最も高く、介護施設、医療機関の順となっています。
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」によると、障害福祉サービス分野で働く作業療法士の平均年収は約479万円です。
また、厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、介護施設で働く作業療法士の平均年収は約435万円という水準が確認されています。
| 勤務先の分野 | 年収目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 障害福祉サービス分野 | 約479万円 | 厚生労働省令和6年度調査 |
| 介護施設 | 約435万円 | 厚生労働省令和6年度調査 |
| 医療機関 | 400〜450万円 | 令和7年賃金構造基本統計調査を参考 |
障害福祉サービス分野の年収が高い背景には、発達障害・小児領域や精神科訪問看護への需要増加に伴い、採用競争が激しくなっていることがあります。
特に精神科訪問看護は作業療法士の専門性が高く評価される分野として、待遇改善が進んでいます。
企業規模別では、従業員1,000人以上の大規模法人に勤務するケースが最も年収が高く、約461万円となります。
規模が小さい施設では基本給が高めに設定される代わりに賞与が少ない傾向があり、10〜99人規模の施設の年収は442万円程度です。
| 施設の規模 | 平均年収 | 月給目安 | 賞与目安 |
|---|---|---|---|
| 10〜99人 | 442万円 | 31.9万円 | 59万円 |
| 100〜999人 | 436万円 | 30.5万円 | 69.8万円 |
| 1,000人以上 | 460万円 | 31.5万円 | 82.9万円 |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年公表)
年収を上げるための方法は大きく4つあります。
認定作業療法士・専門作業療法士などの上位資格の取得は資格手当や転職時の評価向上につながり、主任・科長などへの昇進は役職手当による年収アップが見込めます。
年収水準の高い分野(障害福祉・精神科・訪問リハビリ)への転職や、本業に支障のない範囲での副業なども選択肢となります。
理学療法士と作業療法士の年収は基本的に同水準で、同じ職場では同じ給与体系が適用されることがほとんどです。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士が同じカテゴリに分類されており、個別の職種別データは公表されていません。
このことからも、同一施設内では資格の違いによる給与差はほとんど設けられていないことが読み取れます。
作業療法士の方が高い給与を期待しやすい職場は、精神科領域・老健の認知症専門棟・障害福祉サービス分野の3つです。
精神科作業療法はOTのみが担える専門領域であり、精神科病院での求人では作業療法士への需要が集中します。
障害福祉サービス分野では前述の通り平均479万円という高い水準が確認されています。
理学療法士の方が高い給与を期待しやすい職場は、スポーツ整形外科クリニックと運動器中心の訪問リハビリテーションです。
基本動作機能の回復に特化した診療では理学療法士の専門性が高く評価される傾向があります。
| 比較視点 | 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) |
|---|---|---|
| 同じ病院内での給与差 | ほぼなし(同一給与テーブルが一般的) | ほぼなし |
| 有利な職場 | スポーツ整形外科・運動器中心の訪問リハビリ | 精神科・認知症専門老健・障害福祉サービス |
| 平均年収の目安 | 約444万円(同カテゴリの合算) | 約443万円 |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年公表)
結論として、作業療法士と理学療法士のどちらが稼ぎやすいかは、働く職場の種別によって変わります。
同じ病院内であれば年収差はほぼ生まれないため、職種の選択は年収より自分がどの領域で専門性を発揮したいかを軸に考えるとよいでしょう。

作業療法士になるには、文部科学省または厚生労働省が指定する養成校で3年以上の課程を修了し、国家試験に合格することが必要です。
2026年2月実施の第61回試験では合格率91.2%を記録しており、養成課程でしっかり学べば高い確率で合格を狙える国家試験です。
作業療法士国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定する養成校で3年以上の所定課程を修了することが必要です。
養成校の種類は4つです。
4年制大学・3年制短期大学・3年制専門学校・4年制専門学校が選択肢となります。
また視覚障害者を対象とした特別支援学校も養成校として認定されています。
2022年時点で全国に約208校の養成施設があり、全国各地で学べる環境が整っています。
4年制大学では、解剖学・生理学・リハビリテーション学などの専門科目に加え、語学や一般教養も学べます。
研究的な視点や論文執筆のスキルも身につくため、将来的に大学院進学や研究職・教育職を視野に入れる場合は大学への進学が向いています。
専門学校は作業療法士として現場で働くために必要な知識・技術に特化したカリキュラムで構成されています。
3年制専門学校は最短ルートとして早期就職を目指す方に選ばれており、4年制専門学校ではより充実した実習時間と専門知識の習得が可能です。
少人数のクラス編成や担任制を導入している学校が多く、国家試験対策のサポートが手厚い点も特徴です。
| 学校種別 | 修業年数 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 4年制大学 | 4年 | 一般教養・研究スキルも習得 | 大学院進学・研究職志望者 |
| 3年制短期大学 | 3年 | 最短ルートの一つ・大学的環境 | 早期就職を目指す人 |
| 3年制専門学校 | 3年 | 最短ルート・実習が充実 | 早く現場に出たい人 |
| 4年制専門学校 | 4年 | 専門技術をじっくり習得 | 実践スキルを深めたい人 |
理学療法士の資格をすでに持っている人は、指定の養成校で2年以上学ぶことで作業療法士の受験資格を取得できます。
外国の養成校を卒業し海外でOT免許を取得済みの人は、所定の手続きを経て不足単位のみを取得する形で受験資格を得ることも可能です。
高校卒業から最短で作業療法士として働くまでの期間は、3年制専門学校ルートで3年(卒業後に合格すれば最短21歳)、4年制大学ルートで4年(最短22〜23歳)です。
作業療法士国家試験は毎年1回、2月下旬に全国8都道府県で実施されます。
第61回試験では受験者5,426人のうち4,947人が合格し、合格率は91.2%でした。
厚生労働省の合格発表によると、過去6年間の合格率の推移は以下の通りです。
| 試験回 | 実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 第56回 | 2021年 | 5,832人 | 4,742人 | 81.3% |
| 第57回 | 2022年 | 5,483人 | 4,861人 | 88.7% |
| 第58回 | 2023年 | 5,632人 | 4,718人 | 83.8% |
| 第59回 | 2024年 | 5,738人 | 4,840人 | 84.4% |
| 第60回 | 2025年 | 5,693人 | 4,887人 | 85.8% |
| 第61回 | 2026年 | 5,426人 | 4,947人 | 91.2% |
出典: 厚生労働省「理学療法士国家試験及び作業療法士国家試験の合格発表について」各年度版
過去6年間の合格率はおよそ81〜91%で推移しており、年度によって難易度に差はあるものの、全体的に高い水準が維持されています。
試験の構成は、PT・OT共通問題100問とOT専門問題100問を合わせた全200問で、午前・午後の2部構成で実施されます。
配点は一般問題1問1点・実地問題1問3点で、第61回では総得点168点以上かつ実地問題43点以上を満たすことが合格基準とされました。
合格基準は概ね60%前後の正答率に設定されています。
試験は5科目にまたがる幅広い知識が問われます。
基礎医学系(解剖学・生理学・運動学)・臨床医学系(内科・整形外科・精神医学)・作業療法評価学・作業療法治療学・地域作業療法学などの科目が出題されます。
注目すべきは、新卒受験者と既卒受験者の合格率に大きな差がある点です。
新卒受験者の合格率は例年90%を超える水準で推移しているのに対し、養成校卒業後に受験する既卒受験者の合格率は40%前後にとどまる傾向があります。
養成校在学中の国家試験対策サポートを最大限に活用し、卒業と同時に1回で合格することが、作業療法士になる最も確実な道といえます。
国家試験に合格してから実際に作業療法士として働き始めるまでには、免許申請と名簿登録の手続きが必要です。
免許証そのものが届くには時間がかかりますが、その前に発行される登録済証明書を使って就職後の書類提出に対応できます。
合格から免許証受け取りまでの流れは以下の通りです。
3月中旬〜下旬に厚生労働省ホームページで合格発表が行われます。
受験地と受験番号で確認し、合格者には合格証書が郵送されます。
合格後に免許申請書・診断書・写真などの必要書類を準備し、収入印紙を貼付の上、厚生労働省に申請します。
書類は郵送または持参で提出します。
申請後、作業療法士籍への名簿登録が完了すると、登録済証明書が発行されます。
この証明書は免許証の代わりとなる書類で、就職先への提出書類として活用できます。
そのため、4月の就職開始には間に合うのが一般的です。
登録済証明書を就職先に提出し、作業療法士として勤務を開始します。
免許証の受け取り
氏名が作業療法士名簿に登録されると、後日免許証が自宅に郵送されます。
申請から免許証が届くまでには数ヶ月程度かかることがあります。
なお、近年は免許申請手続きのオンライン化が進められており、登録済証明書もオンラインで申請・受領できる窓口が設けられています。
詳細な手続き方法については、厚生労働省の公式サイトで最新情報を確認することをおすすめします。

作業療法士は観察力・傾聴力・創造的思考力を持ち、人の日常生活と心の両面に関心がある人が力を発揮しやすい職業です。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、協会員の88.4%が現役で作業療法士として勤務を続けており、長く働き続けやすい職業であることが数字にも表れています。
作業療法士に向いている人の共通点は、人の細かな変化を見逃さない観察力と、答えが一つではない問題に粘り強く取り組む力を持っていることです。
観察力と洞察力がある人は、作業療法士として大きな強みを発揮できます。
患者の表情・動作の微細な変化・言葉の裏にある感情を読み取る力は、適切なリハビリ計画を立てる上で欠かせません。
特に精神科では、言語での表現が難しい患者の状態変化を、行動観察から読み解く力が求められます。
コミュニケーションを大切にできる人は、作業療法士の仕事でそのスキルを最大限に活かせます。
患者の生活背景・価値観・将来の目標を丁寧に聞き取ることで、その人に合ったリハビリプログラムを設計できます。
また、医師・看護師・理学療法士・医療ソーシャルワーカーとのチーム医療においても、円滑なコミュニケーション能力は欠かせません。
創造的に考えることが好きな人は、作業療法士の仕事を楽しめる傾向があります。
作業療法では、AさんとBさんに同じリハビリを当てはめるのではなく、その人の生活環境・趣味・仕事・家族関係を踏まえてオーダーメイドのプログラムを組み立てます。
正解が一つではないからこそ、工夫する余地が大きく、創造的な思考が力を発揮します。
学び続ける向上心がある人は長く活躍できます。
医療・リハビリの知識は常に更新されており、作業療法士は就職後も学会参加・勉強会・症例発表を通じて継続的に知識を磨く姿勢が必要です。
認定作業療法士・専門作業療法士などの上位資格の取得に向けて学ぶ姿勢がある人は、キャリアアップの面でも有利です。
身体と精神の両面に関心がある人は、作業療法士という職業の広さを存分に活かせます。
身体障害・老年期・発達障害・精神障害と幅広い領域に対応できる作業療法士は、キャリアを通じて自分の関心に合わせて活躍の場を広げることができます。
以下の表で、作業療法士に向いている特徴と向いていない特徴を整理します。
| 向いている人の特徴 | 向いていない可能性がある特徴 |
|---|---|
| 人の変化を細かく観察することが好き | 人と長く深く関わることが苦手 |
| 答えが一つでない問題を工夫して解くのが好き | 短期的な成果を強く求めてしまう |
| 学び続けることが苦にならない | 勉強や技術の更新を負担に感じる |
| チームで協力して仕事を進めることが好き | 個人で完結する仕事の方が合っている |
| 身体・精神の両面に関心がある | どちらか一方にしか興味が持てない |
| 忍耐強く長期的な関わりができる | すぐに結果が出ないと意欲が続かない |
作業療法士のやりがいの本質は、患者の日常生活の回復に直接貢献し、その変化を間近で見届けられることにあります。
生活の自立を直接支援できる達成感は、作業療法士の最大のやりがいです。
脳卒中で食事ができなくなった方が、訓練を重ねてスプーンを自分で持てるようになる瞬間や、長期入院していた方が退院して自宅で料理を再開できたという連絡を受ける場面は、作業療法士だからこそ経験できる喜びです。
作業療法士が支援する範囲は、身体機能の訓練に限りません。
食事・入浴・仕事・趣味という、その人の生活すべてに関わる仕事であるため、仕事を通じて人の人生に深く携われるという特別な意義があります。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、協会員の88.4%が現役で作業療法士として勤務を続けています。
同データでは女性会員が60.8%と過半数を占めており、産休・育休後の職場復帰のしやすさや、国家資格としての社会的信頼が長期就労を支えていることが読み取れます。
職場環境の面でも、多くの施設で土日休み・残業が少ない環境が整っています。
介護施設・訪問リハビリ・福祉施設などでは平日日勤のみの職場が多く、子育てとの両立や生活リズムの安定を求める方にとっても働きやすい環境が整っています。
作業療法士は国家資格であるため、景気の変動に左右されにくい安定した職業です。
少子高齢化が続く日本では、リハビリの需要が今後も増え続けることが見込まれており、長期的なキャリアの安心感も魅力の一つです。
幅広い領域で専門性を高められる点も、作業療法士の大きな魅力です。
身体障害・精神障害・老年期・発達障害と4つの領域があり、それぞれに深い専門知識があります。
一つの領域で経験を積んだ後に別の領域に転向することも比較的しやすく、生涯にわたってキャリアの幅を広げ続けられる職業といえます。
作業療法士のやりがいを長く続けるためには、大変な面についても事前に理解しておくことが重要です。
書類・記録業務の多さは、多くの作業療法士が感じる負担の一つです。
リハビリ計画書・評価書・日々のカルテ記録・カンファレンス資料・保険請求に関わる書類と、臨床業務以外のデスクワークが一定量発生します。
特に急性期病院では患者数が多く、効率的に記録を残す力が求められます。
感情的な負担も、作業療法士が直面する現実の一面です。
患者の回復が思うように進まない時期や、長期入院患者の退院意欲を引き出せない場面では、もどかしさを感じることがあります。
特に精神科・終末期ケア・小児領域では、患者や家族の苦しみに寄り添い続ける感情的な労力が大きくなることがあります。
身体的な負担も職場によって異なります。
回復期リハビリ病棟や介護施設では、患者の移乗補助・歩行介助などで腰や膝への負担がかかる場面があります。
訪問リハビリでは荷物を持った移動があり、精神科では比較的身体的な負担が少ない傾向があります。
長く続けるためには、自身の身体のケアも意識することが必要です。
有資格者の増加も将来のキャリアを考える上で知っておきたいポイントです。
日本作業療法士協会の統計では2025年3月時点で118,465人の有資格者が存在し、供給が増えているのは事実です。
その反面、高齢化に伴う需要も増加しており、専門性を磨いて特定の領域でスペシャリストとして働くことが、今後のキャリア安定に向けた有効な戦略となります。
学び続ける姿勢を維持することも、容易ではありません。
作業療法の知識・技術は継続的に進化しており、新しい評価ツールや治療技法が次々と登場します。
養成校での学習を土台にしながら、就職後も学会参加・資格取得・自己研鑽を続ける必要があります。
これは負担でもある反面、知的好奇心が旺盛な方には魅力でもあります。

作業療法士の将来性は、日本の急速な高齢化・精神疾患患者の増加・発達障害支援の拡大という3つの需要増加要因によって支えられています。
総務省の統計によると2025年9月時点で日本の65歳以上人口は3,619万人・総人口の29.4%に達しており、この高齢化率は世界38カ国の中で最も高い水準です。
日本の高齢化の進行は、作業療法士への需要を高める最大の構造的要因です。
内閣府「令和8年版高齢社会白書」によると、総人口に占める65歳以上の割合は2025年の29.4%から2070年には38.7%に達すると推計されています。
高齢者の増加はリハビリ需要の増大に直結します。
75歳以上の後期高齢者になると身体機能の低下・骨折・認知症・脳血管疾患のリスクが高まり、作業療法士による専門的な支援の必要性が増します。
厚生労働省の介護保険事業状況報告によると、令和6年7月時点での要介護・要支援認定者は717.7万人にのぼり、65歳以上の高齢者のおよそ5人に1人が認定を受けている状況です。
要介護認定者数は2000年の218万人から2022年には約690万人と、約22年間で3倍以上に増加しています。
特に75歳以上の後期高齢者では認定率が35.2%に達し、85歳以上では約60%が何らかの要介護認定を受けています。
このような現状から、高齢化がさらに進む2040年代に向けて、作業療法士への需要は引き続き高い水準で推移すると予測されます。
認知症ケアも作業療法士の需要を押し上げる重要な分野です。
認知症の方への専門的なリハビリを担えるのは、リハビリ3職種の中でも作業療法士が最も広く関わる職種です。
認知症の方の生活機能維持・回想法・居場所づくりを通じた社会参加支援は、薬や理学療法では代替できないアプローチであり、今後ますます需要が増える領域といえます。
高齢化に伴う需要増加の恩恵を受けやすい主な職場を以下に整理します。
| 職場・分野 | 需要増加の背景 |
|---|---|
| 介護老人保健施設・通所リハビリ | 要介護高齢者の増加・在宅復帰支援ニーズ |
| 訪問リハビリ | 在宅での生活維持ニーズの高まり |
| 認知症専門病棟・デイケア | 認知症高齢者数の増加 |
| 精神科病院・精神科訪問看護 | 精神疾患患者の増加・地域移行推進 |
| 発達障害者支援センター・放課後等デイ | 発達障害の認知向上・支援対象の拡大 |
精神科領域における需要拡大も見逃せません。
厚生労働省の報告では精神疾患を持つ患者数は増加傾向にあり、精神科リハビリを専門的に担える作業療法士への需要は今後も高まることが予想されます。
特に精神科訪問看護は近年急速に拡大しており、地域で生活する精神疾患患者への支援を担う作業療法士の活躍の場が広がっています。
発達障害支援分野でも、診断数の増加・早期介入の重要性の認知向上・放課後等デイサービスの施設数増加を背景に、感覚統合や生活技能訓練を専門とする作業療法士への需要が増加しています。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、作業療法士の有資格者数は2025年3月31日時点で118,465人に達しています。
2000年当時は1万人台だった有資格者が、25年間で10倍以上に増加した計算です。
厚生労働省は「理学療法士・作業療法士の需給推計」の中で、2040年頃に作業療法士を含むリハビリ職の供給数が需要の増加ペースを上回る可能性があるという推計を示しています。
これは、量としての作業療法士の需要は増えるものの、有資格者の供給増加がそれ以上に進む可能性があることを意味します。
同推計は需給バランスを全国平均で見たものであり、地域・専門領域・職場種別によって実情は大きく異なります。
地方・過疎地域では都市部と比較して作業療法士が不足しており、都市部のような就職競争はほとんど起きていない地域が少なくありません。
精神科領域・認知症専門領域・発達障害支援領域などは、作業療法士以外の職種では代替しにくい専門性があるため、有資格者が増えても需要が満たされない状況が続いています。
作業療法士として安定的にキャリアを歩んでいくための視点として、日本作業療法士協会は認定作業療法士・専門作業療法士といった上位資格制度を整備しています。
特定の領域で専門性を深めた作業療法士は、単に有資格者が増加しても代替されにくいポジションを確立できます。
また、地域包括ケアシステムの推進に伴い、作業療法士の活躍の場は従来の病院・施設から、在宅・地域・予防・健康増進・就労支援へと広がっています。
社会保障の持続可能性を高める観点からも、医療費・介護費の削減に貢献するリハビリテーション専門職の役割は今後ますます重視されることが見込まれます。
日本作業療法士協会の統計でも、協会員の88.4%が現役で作業療法士として働き続けているという事実が示すように、資格を取得した人の大多数が長期にわたって就業し続けられる職業であることが確認できます。
供給が増えている事実は認識しつつも、専門性を磨き活躍の場を広げることで、将来にわたって求められる作業療法士としてのキャリアを築いていくことは十分に可能です。
作業療法士について多く寄せられる疑問を10問にまとめました。
進路選択・職種理解・キャリア検討の参考にしてください。
作業療法士は、病気・けが・障害によって日常生活が困難になった人が、食事・入浴・仕事・趣味といった活動を通じて自立した生活を取り戻せるよう支援する国家資格の専門職です。
身体の機能回復だけでなく精神疾患へのアプローチも担えるのがOTの最大の特徴です。
理学療法士が立つ・歩くなどの基本動作の回復を専門とするのに対し、作業療法士は食事・調理・入浴などの応用的な日常生活動作と精神科リハビリを担います。
精神科でのリハビリをリハビリ3職種の中で唯一担えるのがOTです。
同じ患者を両職種が並行して担当し、役割を分担するチーム医療が一般的です。
文部科学省または厚生労働省が指定する養成校で3年以上の課程を修了し、国家試験に合格することで作業療法士になれます。
3年制専門学校が最短ルートで、高校卒業後3年間で免許取得が可能です。
4年制大学・専門学校ルートでは4年かかります。
厚生労働省の発表によると、第61回試験(2026年2月実施)では受験者5,426人のうち4,947人が合格し、合格率は91.2%でした。
過去6年間でおおむね81〜91%で推移しており、養成課程でしっかり学べば高い確率で合格を狙えます。
ただし既卒受験者の合格率は40%前後に低下するため、在学中に確実に合格することが重要です。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、作業療法士の平均年収は443万円です。
月給30.9万円・賞与71.7万円が内訳で、経験を積むことで30代で400万円台、50代で500万円台に到達するキャリアパスが一般的です。
障害福祉サービス分野では平均479万円と高い水準の職場もあります。
働けます。
精神科リハビリを専門的に担えるのはリハビリ3職種の中でOTのみです。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると精神科病院に勤務する会員は4,799人にのぼり、精神科作業療法は診療報酬上も独立した算定項目として認められています。
精神疾患患者の社会復帰支援・就労支援まで幅広く関われる職場です。
話す・聞く・食べる機能への支援に関心があればSTが向いており、日常生活全体や精神・発達障害領域まで広く支えたい場合はOTが向いています。
年収水準は両職種ともほぼ同等で、選ぶ基準は自分がどの専門性に魅力を感じるかです。
なお有資格者数はOT118,465人に対しSTは約4万人と大きく差があり、STは人材不足が深刻な状況です。
人の細かな変化を観察することが好きで、答えが一つではない問題に創造的に取り組める人が向いています。
コミュニケーションを大切にでき、身体と精神の両面に関心があり、長期的な関わりを続けられる忍耐力がある人も作業療法士に向いています。
短期的な成果を求めすぎる人や、変化が見えにくい状況で意欲を保つのが難しい人は事前にじっくり考えることをおすすめします。
総務省の統計によると2025年9月時点で日本の65歳以上人口は3,619万人・総人口の29.4%と過去最高を更新しており、リハビリ需要は今後も増加が見込まれます。
認知症・精神疾患・発達障害の支援ニーズも拡大しており、特定の専門領域で専門性を磨いたOTは安定したキャリアを築きやすい状況が続いています。
有資格者の増加という課題はありますが、専門性次第で十分に活躍できる職業です。
国家資格であるため定年後も需要があり、長く現役を続けられる職業です。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると協会員の88.4%が現役で作業療法士として勤務を続けており、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では60〜64歳の平均年収が592万円と、経験を積んだベテランの評価が高い職業であることも確認できます。
参考資料