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採用コストを抑えながら定着率の高い人材を確保したいと考えている人事担当者にとって、リファラル採用は見逃せない手法です。
矢野経済研究所の調査によると、リファラル採用の実施経験がある企業は2024年時点で全体の50.1%に達しており、採用戦略の柱として定着しつつあります。
とはいえ、制度設計を誤ると人間関係のトラブルや法的リスクが生じることもあります。
この記事では、リファラル採用の基本から導入手順・インセンティブ設計・断り方の作法まで、実務で役立つ情報を網羅しています。

リファラル採用とは、自社の社員が友人や知人など信頼できる人材を会社に紹介し、採用選考につなげる採用手法です。
英語のreferral(リファラル)は「紹介・推薦」を意味し、日本では社員紹介採用、社員紹介制度とも呼ばれます。
矢野経済研究所が2024年10月から11月にかけて全国の人事部門担当者834社に実施した調査によると、リファラル採用の実施経験がある企業は50.1%に達しています。
2022年度に18億5,000万円だったリファラル採用支援サービスの市場規模は、2024年度には前年度比169.0%増の50億7,000万円に拡大する見込みで、企業の採用戦略において欠かせない手法として広がっています。
リファラル採用の最大の特徴は、採用のきっかけが社員の紹介であっても、選考プロセスは通常の応募者とまったく同じ基準で実施される点にあります。
紹介という入り口から採用基準に基づいた公正な選考を行うため、採用品質を担保しながら母集団を広げられるのが大きな強みです。
リファラル採用の仕組みは、大きく3つのステップで成り立っています。
まず社員が、自分の友人・元同僚・知人の中から自社のカルチャーや職務に合いそうな人材を思い浮かべ、紹介候補として社内に申告します。
次に採用担当者が候補者と接点を持ち、カジュアル面談や選考に招待します。
そして通常の選考フローを経て、合否を判断します。
リファラル採用では紹介した社員に対してインセンティブ(お礼金・報奨金)が支給されるケースが多く、制度として組織全体に組み込んで活用するのが一般的な運用方法です。
以下の表でリファラル採用の基本情報を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 採用のきっかけ | 既存社員からの紹介・推薦 |
| 選考プロセス | 通常の応募者と同一の基準で実施 |
| 紹介者へのインセンティブ | 報奨金・お礼金を支給するケースが多い |
| 主な対象者 | 転職潜在層を含む社員の知人・友人 |
| 別名 | 社員紹介採用、社員紹介制度 |
採用担当者が注意しておきたいのは、リファラル採用はあくまで「入口の拡大策」であるという点です。
紹介だからといって選考を簡略化すると、後々ミスマッチが生じる原因になります。
紹介後の選考プロセスを丁寧に設計しておくことが、制度を長続きさせる鍵になるでしょう。
リファラル採用と混同されやすい言葉に、コネ採用・縁故採用・社員紹介制度があります。
それぞれ意味が異なるため、整理しておくことをおすすめします。
縁故採用(コネ採用)とは、経営者・役員・取引先などの血縁関係や個人的なコネクションを優先して採用する手法です。
採用基準よりも紹介者との関係性が重視されるため、正規の選考プロセスが省略されるケースがあります。
リファラル採用との本質的な違いは、採用基準が守られるかどうかです。
リファラル採用では紹介を受けた候補者も必ず書類選考・面接などの公平な選考を経て合否が決まります。
つまり、紹介されても採用基準を満たさなければ不採用になります。
社員紹介制度は、リファラル採用とほぼ同義で使われる言葉です。
ただし制度として正式に整備されたものを「社員紹介制度」と呼ぶことが多く、インフォーマルな口コミ紹介を含む広い概念が「リファラル採用」と捉えるケースもあります。
以下の表で3つの概念を比較します。
| 手法 | 紹介者 | 採用基準 | 選考プロセス |
|---|---|---|---|
| リファラル採用 | 既存社員(全員) | 通常通り適用 | 通常の選考と同一 |
| 縁故採用(コネ採用) | 経営者・役員・取引先など | 関係性を優先する場合あり | 省略されるケースがある |
| 社員紹介制度 | 既存社員(全員) | 通常通り適用 | 通常の選考と同一 |
採用現場でよく起きるのが、社員からの紹介を断りにくい空気が生まれ、事実上コネ採用に近い運用になってしまうケースです。
リファラル採用を導入する際は、採用基準に沿った公正な選考を徹底することをルールとして明文化しておくとよいでしょう。
リファラル採用と混同されることが多い採用手法として、ダイレクトリクルーティングと人材紹介があります。
3つの手法はアプローチ主体とコスト構造が大きく異なります。
ダイレクトリクルーティングとは、企業の採用担当者が求職者データベースやSNSを通じて候補者に直接スカウトを送る採用手法です。
リファラル採用が社員の人脈を活用するのに対し、ダイレクトリクルーティングは採用担当者が主体となって候補者を探し出す点が異なります。
人材紹介とは、人材紹介会社(転職エージェント)が企業と求職者をマッチングする手法です。
採用が決まった際に年収の30〜35%程度の成功報酬が発生するため、専門職・管理職クラスでは1人あたりの採用コストが100万円を超えるケースも珍しくありません。
以下の表で3つの採用手法を比較します。
| 比較軸 | リファラル採用 | ダイレクトリクルーティング | 人材紹介 |
|---|---|---|---|
| アプローチ主体 | 既存社員 | 採用担当者 | 人材紹介会社 |
| 主なコスト | 紹介インセンティブ | サービス利用料(定額制が多い) | 成功報酬(年収の30〜35%程度) |
| 転職潜在層へのアプローチ | 可能 | 可能 | 難しい |
| 採用までのスピード | 比較的早い | 候補者による | 比較的早い |
| 採用担当者の工数 | 中程度 | 高い | 低い |
3つの手法を比較すると、リファラル採用は社員の信頼関係を経由するため候補者の入社意欲が高まりやすく、採用後の定着率にも好影響を与えやすい点が特徴です。
ただし社員のネットワーク規模に依存するため、自社だけで母集団を大きく広げることは難しい面もあります。
人材紹介やダイレクトリクルーティングと組み合わせて活用するのが、現実的な採用戦略といえるでしょう。
リファラル採用が広がっている最大の背景は、採用市場の構造的な変化です。
人材の絶対数が減少するなか、採用コストは上昇し、従来の手法だけでは採用目標を達成しにくくなっています。
矢野経済研究所の調査では、リファラル採用の実施経験がある企業は50.1%に達しており、もはや一部の先進企業だけの手法ではなくなっています。
リファラル採用が注目される理由として、採用コストの削減効果と定着率の高さが繰り返し挙げられます。
この2点について、実際のデータをもとに整理します。
採用コストの面では、人材紹介を利用した中途採用の場合、採用決定時に年収の30〜35%程度の成功報酬が発生します。
株式会社マイナビの調査によると、2024年の中途採用にかかった費用の合計平均は1社あたり650.6万円にのぼります。
専門職や管理職クラスの採用では1人あたりのコストが100万円を超えるケースも珍しくありません。
リファラル採用の場合、主なコストは社員に支払うインセンティブ(お礼金)のみです。
求人広告の掲載費や人材紹介会社への成功報酬が不要なため、採用単価を大幅に抑えられます。
定着率については、リファラル採用経由で入社した社員の方が早期離職が少ない傾向が複数の現場事例で報告されています。
理由は明確で、入社前の段階で社員から職場の雰囲気・文化・業務内容についてリアルな情報を得られるため、入社後のギャップが生じにくいためです。
採用担当者の間では、採用後に思っていた環境と違ったと感じる、いわゆるリアリティショックを防ぐうえでリファラル採用が有効だという声が増えています。
以下の表で、リファラル採用と主な採用手法の採用コスト構造を比較します。
| 採用手法 | 主なコスト項目 | 1人あたりの目安 |
|---|---|---|
| リファラル採用 | 社員へのインセンティブのみ | 数万円〜数十万円程度 |
| 人材紹介 | 成功報酬(年収の30〜35%程度) | 専門職・管理職で100万円超も |
| 求人広告 | 掲載料 | 媒体・掲載プランによる |
| ダイレクトリクルーティング | サービス利用料(定額制が多い) | サービスにより異なる |
採用コスト削減と定着率向上を同時に実現できる手法として、リファラル採用への注目が高まっているのは必然といえます。
制度設計と社内周知はセットで考えることが重要です。
リファラル採用はあらゆる規模の企業で活用されていますが、とりわけ中小企業やスタートアップでの効果が高いとされています。
その背景には、採用環境と組織特性の両面から説明できる理由があります。
採用環境の面では、大手企業に比べてブランド力で劣る中小企業やスタートアップは、求人広告を出しても応募が集まりにくい傾向があります。
株式会社マイナビの中途採用状況調査によると、従業員規模1,001名以上の大企業と3〜50名の企業とでは、採用予算に約15倍の差があります。
予算規模で大手企業に太刀打ちできないなかで、社員の人脈を活かして採用コストを抑えられるリファラル採用は現実的な打開策となります。
組織特性の面では、社員数が少ない企業ほど、社員一人ひとりが会社のカルチャーや価値観を深く理解しています。
そのため、紹介される候補者の質が高まりやすく、カルチャーフィットしたうえで入社につながる確率が高い傾向があります。
特にスタートアップでは、初期メンバーの人脈ネットワークがそのまま採用チャネルになることも多く、会社の成長段階においてリファラル採用が主要な採用経路になるケースもあります。
採用市場の構造的な課題という観点でも、リファラル採用の重要性が増しています。
総務省の推計によると、生産年齢人口は2024年比で2030年に約4%、2040年には約16%減少する見込みです。
転職を実際に行う就業者は全体の5%程度にとどまるという総務省統計局のデータもあり、採用市場に流通する人材の絶対数は今後さらに減少していく可能性が高いでしょう。
こうした状況では、転職活動をしていない潜在層にアプローチできるリファラル採用の価値がより高まります。
社員の信頼関係を経由した声がけは、求人広告では接触できない転職潜在層に届く数少ない手段です。
中小企業やスタートアップにとっては、採用コスト・採用品質・潜在層へのアプローチという3つの課題を同時に解決できる手法として、リファラル採用の優先度を高める企業が増えているのは自然な流れといえるでしょう。

リファラル採用のメリットは採用コスト削減だけではありません。
定着率の向上、転職潜在層へのアプローチ、カルチャーフィットした人材の獲得など、複数の効果が同時に得られる点がこの手法の本質的な強みです。
メリットと注意点の両面を正しく理解したうえで導入を検討するとよいでしょう。
リファラル採用が企業にもたらす効果のうち、最も注目すべきは採用品質の向上です。
求人広告では候補者のスキルや経歴しか把握できませんが、リファラル採用では社員から候補者の人柄・価値観・仕事への姿勢といった定性的な情報も事前に得られます。
採用担当者が書類だけでは見えない部分を選考前に把握できるため、ミスマッチを防ぎやすい構造になっています。
定着率への効果については、具体的なデータが出ています。
商工中金が2024年1月に中小企業9,342社を対象に実施した調査によると、最も人材の定着に役立った採用方法として、リファラル採用(従業員からの紹介)を挙げた企業が35.9%で最多でした。
人材紹介の23.3%を大きく上回る結果です。
定着率が高い理由として、候補者が入社前に実際の職場環境や文化についてリアルな情報を得られる点が挙げられます。
求人票の文面だけでは伝わらない職場の雰囲気を知ったうえで入社するため、入社後のリアリティショックが起きにくいのです。
また、転職潜在層へのアプローチができる点も大きな強みです。
転職サイトや求人広告は、すでに転職意欲が高い顕在層にしかリーチできません。
リファラル採用では、今すぐ転職を考えていない人でも、信頼している知人からの声がけにより前向きに検討するケースがあります。
総務省統計局の調査では転職を実際に行う就業者は全体の5%程度にとどまっており、残り95%の潜在層に接触できるリファラル採用の価値は大きいといえます。
以下の表でリファラル採用の主なメリットを整理します。
| メリット | 内容 | 他手法との比較 |
|---|---|---|
| 採用コスト削減 | 広告費・紹介手数料が不要 | 人材紹介より大幅に安い |
| 定着率の高さ | 入社前に職場情報を十分得られる | 商工中金調査で35.9%と最多 |
| 採用品質の向上 | 人柄・価値観まで事前に把握可能 | 書類選考だけでは得られない情報 |
| 転職潜在層へのアプローチ | 転職活動中でない人にも接触可能 | 求人広告では届かない層 |
| カルチャーフィット | 自社文化に合った人材が集まりやすい | 求人票で文化を伝えるより精度が高い |
リファラル採用にはメリットが多い反面、制度設計や運用方法を誤ると組織に悪影響をもたらすリスクがあります。
導入前に把握しておくべき3つのデメリットを解説します。
1つ目は、組織の同質化です。
社員は自分と近いバックグラウンドや価値観を持つ知人を紹介しやすい傾向があります。
リファラル採用に過度に依存した場合、似たような思考・スキル・属性の人材が集まり続け、組織の多様性が失われるリスクがあります。
多様な視点が失われると、新しいアイデアが生まれにくくなり、長期的にはイノベーションを阻害する要因にもなりかねません。
対策としては、リファラル採用で埋めるべきポジションと、他の採用手法でアプローチするポジションをあらかじめ分けて設計することが有効です。
2つ目は、人間関係に起因するトラブルです。
紹介した社員と被紹介者の間にはすでに人間関係があるため、不採用になった場合に紹介者・被紹介者の双方に気まずさが生じることがあります。
また、知人同士が同じ職場に入社した場合、グループや派閥が生まれる可能性も否定できません。
紹介者が退職した際に被紹介者のモチベーションや定着率に影響するケースも報告されています。
これらを防ぐには、不採用の場合のフォロー手順を事前にルール化しておくことと、配属先を配慮して決定することが重要です。
3つ目は、制度の形骸化です。
社内告知が不十分だったり、インセンティブ設計が社員の行動を促すものになっていなかったりすると、制度はあっても紹介が発生しない状態が続きます。
リファラル採用は導入しただけでは機能しません。
社員が紹介しやすい環境と継続的な制度のメンテナンスが必要です。
リファラル採用は企業だけでなく、紹介する社員側にもメリットがあります。
多くの企業でインセンティブとして報奨金が支払われるほか、採用に貢献したという実績が社内評価につながるケースもあります。
また、自分が信頼できる人物と一緒に働ける環境になるという点も、社員にとっては大きなモチベーションになりえます。
紹介したいと思う知人が職場に向かない可能性があると感じる場合や、不採用になった場合の関係悪化を心配する場合などです。
採用担当者として対策しておきたいのは、以下の3点です。
この3点を事前に整備することで、社員が安心して紹介に踏み出せる環境になります。
リファラル採用の活性化は、制度の整備と社員の心理的安全性の両立によって実現するといえるでしょう。

採用手法はリファラル採用だけでなく、求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティングなど複数の選択肢があります。
どの手法が自社に合っているかを判断するには、採用コスト・採用スピード・定着率・採用担当者の工数という4つの軸で比較することが有効です。
採用手法の選定で迷う企業が最も多いのは、コストと品質のバランスです。
手法ごとの特徴を正確に把握したうえで、自社の採用課題に応じた組み合わせを設計することが成果につながります。
まず採用コストの実態から整理します。
株式会社マイナビの中途採用状況調査によると、2024年における採用手法別の年間平均費用は人材紹介が約372万円、ダイレクトリクルーティングが約233万円、求人広告が約135万円です。
リファラル採用は外部サービス費用がかからず、社員へのインセンティブのみで運用できるため、最もコストを抑えやすい手法といえます。
採用スピードについては、人材紹介が登録求職者に即時アプローチできるため最も早い傾向があります。
求人広告は掲載後に応募が集まるまでのタイムラグがあります。
リファラル採用は社員が候補者へ声をかけてから選考に入るまでの期間が読みにくく、採用計画が立てにくい面があります。
欠員補充など急ぎの採用には不向きな面があることは認識しておくとよいでしょう。
定着率については前述のとおり、商工中金の調査でリファラル採用が35.9%で最も高い定着率を誇る採用手法として挙げられています。
入社前から職場の実情を把握したうえで選考に臨む候補者が多いため、入社後のリアリティショックが起きにくい点が主な理由です。
以下の表で4つの採用手法を横断的に比較します。
| 比較軸 | リファラル採用 | 求人広告 | 人材紹介 | ダイレクトリクルーティング |
|---|---|---|---|---|
| 採用コスト | 低い(インセンティブのみ) | 中程度(年間平均約135万円) | 高い(年間平均約372万円) | 中〜高(年間60万〜330万円程度) |
| 採用スピード | 遅め(読みにくい) | 中程度 | 速い | 中程度 |
| 定着率 | 高い(商工中金調査で最多35.9%) | 中程度 | 中程度(同調査23.3%) | データ限定的 |
| 転職潜在層へのアプローチ | 可能 | 難しい | 難しい | 可能 |
| 採用担当者の工数 | 中程度 | 低〜中程度 | 低い | 高い |
| 母集団形成のしやすさ | 難しい | やりやすい | やりやすい | 中程度 |
| 向いている採用フェーズ | 中長期的な採用強化 | 急募・大量採用 | 即戦力採用・専門職 | ピンポイントな人材獲得 |
この比較表から読み取れるのは、採用手法にはそれぞれ得意な局面があるという点です。
リファラル採用はコストと定着率の面では優位ですが、短期間での大量採用や急募には向いていません。
現場で有効とされているのは、複数の採用手法を組み合わせる設計です。
たとえば、日常的にリファラル採用を動かしながら、欠員補充時には人材紹介を活用し、特定のスキル人材にはダイレクトリクルーティングでアプローチするという組み合わせが、採用コストと採用品質のバランスを取りやすい構成といえます。
採用担当者が陥りやすいのは、一つの手法に依存しすぎることです。
特に人材紹介だけに頼り続けると採用コストが毎期積み上がり、採用予算を圧迫する原因になります。
リファラル採用は立ち上げに一定の社内整備が必要ですが、制度が定着した後は継続的に低コストで採用を支える土台になります。
自社の採用フェーズと課題を踏まえながら、リファラル採用をどの位置に置くかを戦略的に決めることが重要です。

リファラル採用でインセンティブを設ける企業は多いですが、金額をいくらにするか、いつ支払うか、どのように支払うかを間違えると法的なリスクが生じることがあります。
報酬相場を把握したうえで、自社に合った制度設計を行うことが重要です。
リファラル採用のインセンティブ金額に法的な上限はありませんが、実態として正社員採用の場合は5万円〜20万円がボリュームゾーンとなっています。
リファラル採用支援サービスを手がけるRefcomeの調査では、エンジニアなど採用難易度の高い職種では20万円〜30万円の設定が増えており、ITエンジニアの採用が深刻な企業では50万円以上に設定するケースも存在します。
非正規採用の場合は5,000円〜1万円程度が目安です。
別の調査では、インセンティブなしの企業が14.3%、1万円〜9万円が46.9%、10万円〜29万円が31.3%、30万円以上が6.8%という分布が確認されており、多くの企業が30万円未満の範囲で設計していることがわかります。
以下の表で職種・雇用形態別の目安を整理します。
| 対象 | インセンティブの目安 |
|---|---|
| 正社員(一般職) | 5万円〜20万円程度 |
| 正社員(エンジニア・技術職) | 20万円〜30万円程度(採用難易度が高い場合は50万円超も) |
| 非正規採用 | 5,000円〜1万円程度 |
インセンティブを支給するタイミングは、採用の課題によって変えることが有効です。以下に代表的な3つのパターンを示します。
応募・面談時に支給するパターンは、紹介数そのものを増やしたい段階に向いています。
Amazonギフト券など5,000円程度の少額を支給することで、紹介のハードルを下げる効果があります。
入社時に支給するパターンは、最もスタンダードな設計です。
採用決定の喜びを社員と分かち合い、紹介への感謝を形にするタイミングです。
10万円前後を支給する企業が多い傾向があります。
定着時に支給するパターンは、早期離職を防ぎたい企業に向いています。
入社3〜6か月後に追加インセンティブを設けることで、紹介者が入社後のフォローにも関わるモチベーションが生まれます。
また、インセンティブを紹介者だけでなく、紹介された候補者にも支給する企業もあります。
紹介者と候補者への支給割合はおおむね2対1とする設計が多く見られます。
候補者にも支給することで、候補者の入社動機を高める効果が期待できます。
リファラル採用のインセンティブには、法的に正しく運用するために押さえておくべき2つのポイントがあります。
課税の問題と職業安定法の問題です。
課税については、インセンティブは原則として給与所得として扱う必要があります。
会社が制度化して支給する場合、継続性や基準化という点から給与所得に分類されるためです。
給与として支給する場合、所得税の源泉徴収の対象となり、社会保険料の算定基礎にも含まれます。
給与明細に紹介手当・社員紹介報奨金などの名目で記載し、通常の給与振込と同じ口座に振り込む方法が実務上の安全策です。
職業安定法の観点については、第40条が関係します。
職業安定法第40条は、労働者の募集に関して賃金・給料以外の報酬を与えることを禁止しています。
つまり、インセンティブを賃金体系の外側で現金や商品券として支払うと、違法とみなされるリスクがあります。
違反した場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される可能性があります。
適法に運用するための要件を整理すると、以下の3点が特に重要です。
また、インセンティブの金額を際限なく高く設定することも注意が必要です。
社会通念上の妥当な水準を超えた高額報酬は、有料の職業紹介に近い性質と判断されるリスクがあります。
実務上は、外部人材紹介会社に支払う成功報酬よりも低い金額に設定することが一般的な判断基準とされています。
なお、インセンティブ制度を新たに設ける、または変更する際は、常時10名以上の従業員を使用する企業では就業規則の変更届を労働基準監督署に届け出る必要があります。
制度設計の前に社会保険労務士や弁護士に確認することも選択肢のひとつです。

リファラル採用は制度を作れば自然と動き出すわけではありません。
ターゲットの設定、ルールの整備、社内への周知、そして継続的な改善まで、段階的に進めることが成功の条件です。
導入してから紹介が全く集まらず形骸化してしまう企業と、採用の柱として定着させた企業の差は、この進め方の丁寧さにあります。
リファラル採用制度を立ち上げる際、あらかじめ明確にしておくべき項目は6つあります。
ここを曖昧なままにすると、運用段階でトラブルが起きたり、社員が動けなかったりする原因になります。
1つ目は、紹介できる対象者の範囲です。
全従業員が対象か、正社員のみか、管理職は除外するかを決めます。
採用担当者が判断に迷わないよう、対象外となる条件も明文化しておくとよいでしょう。
2つ目は、求める人物像の言語化です。
募集要項をそのまま使い回すのではなく、社員が具体的に友人の顔を思い浮かべられるような表現に変換することが重要です。
たとえば「営業職3年以上の経験者」より「前職でチームの目標を達成してきた経験を持ち、新しい環境に積極的に飛び込める人」のほうが社員は紹介相手を具体的にイメージしやすくなります。
3つ目は、紹介フローの簡素化です。
紹介の手続きが複雑だと、社員は面倒を感じて動かなくなります。
専用フォーム1つで完結する、LINEやSlackから申告できるなど、紹介のハードルを下げる設計が大切です。
4つ目は、インセンティブの設計です。
金額・支給タイミング・支給対象を就業規則に明記したうえで賃金として支払う仕組みにします。
詳細は前のセクションで解説したとおりです。
5つ目は、選考プロセスの統一です。
紹介経由の候補者も通常の応募者と同じ選考フローを経ることを全社に周知します。
不採用の場合のフォロー方法も事前に定めておきましょう。
6つ目は、紹介後の進捗共有のルールです。
社員が紹介した候補者のその後が見えないと、モチベーションが下がります。
選考の進捗を紹介者に都度報告する仕組みを設けることで、社員の関与感が高まります。
以下の表で6つのルール設計項目を整理します。
| 項目 | 決めておく内容 |
|---|---|
| 対象者の範囲 | 紹介できる従業員の範囲と除外条件 |
| 求める人物像 | 社員が候補者を想起しやすい具体的な表現 |
| 紹介フロー | 申告方法・手続きの簡素化 |
| インセンティブ | 金額・タイミング・就業規則への明記 |
| 選考プロセス | 通常応募と同一の基準・不採用時の対応 |
| 進捗共有 | 紹介者への選考状況のフィードバック方法 |
制度を整えたあとの最初の壁は、社員に制度を知ってもらうことです。
社内告知が一度きりで終わっている企業では、多くの社員が制度の存在自体を忘れてしまいます。
効果的な告知には、オンラインとオフラインの両方を組み合わせることが有効です。
メールやSlackでの案内だけでなく、月例会議や全社ミーティングの場で管理職から直接リマインドする機会を設けると、社員の認知度が大きく高まります。
リファラル採用が文化として根付いている企業では、全社総会や月次会議でリファラル採用の進捗を報告することが慣例化しています。
告知の内容として特に重要なのは、募集ポジションと求める人物像の定期更新です。
「誰を紹介すればいいかわからない」という声は、制度が活性化しない最もよくある原因の1つです。
ポジションや人物像を変わるたびに社員に共有する仕組みを作っておくとよいでしょう。
声がけのシーンにも工夫が必要です。
漠然と「誰か紹介してください」と呼びかけるより、「前職で一緒に働いていた優秀な後輩を3人挙げてみてください」のように、社員が具体的な人物を思い起こしやすい問いかけをするほうが紹介につながりやすくなります。
経営者や管理職が積極的に声がけのロールモデルを見せることも、組織全体を動かすうえで大きな役割を果たします。
制度を導入したものの紹介が集まらない場合、原因は大きく3つのパターンに分かれます。
それぞれの原因に応じた対策を取ることが重要です。
1つ目のパターンは、社員が会社に対して十分なエンゲージメントを持っていないケースです。
社員が会社の魅力を自信を持って伝えられない状態では、リファラル採用は機能しません。
この場合、インセンティブ設計の見直しよりも先に、社員満足度の向上や職場環境の改善に取り組む必要があります。
リファラル採用が活発な企業には「紹介できる職場であること」が先にあると考えるとよいでしょう。
2つ目のパターンは、紹介フローが複雑すぎるケースです。
申告の手順がわかりにくい、フォームが使いづらいなど、紹介のハードルが高いと社員は動きません。
フロー全体を見直し、できる限り手間を省いた設計に改善することが対策になります。
3つ目のパターンは、社員が紹介後のフォローに不安を感じているケースです。
不採用になったときに友人関係が壊れるかもしれないという不安から、紹介に踏み切れない社員は少なくありません。
不採用の場合も紹介者の評価には影響しないことを制度上明記し、選考後も紹介者に丁寧なフィードバックを返す運用を徹底することが解決策になります。
制度の形骸化を防ぐうえで有効なのは、KPIを設定して効果測定を継続することです。
紹介数・応募数・採用決定数・定着率といった指標を定期的にモニタリングし、思ったとおりの数字が出ていない場合は原因を仮説立てして改善します。
リファラル採用は導入して終わりではなく、PDCAを回し続けることで制度として育っていくものです。

リファラル採用を実際に動かしていると、必ずぶつかるのが「断る・断られる」という場面です。
紹介を依頼して断られた側、紹介を頼まれて断りたい側、そして候補者が不採用になってしまった場面のそれぞれで、関係を壊さない対応の仕方が求められます。
制度として整備したにもかかわらず紹介が増えないケースの多くは、この場面での不安を取り除けていないことが根本にあります。
社員が知人に声をかけるとき、どう伝えるかによって断られやすさが大きく変わります。
よくある失敗パターンは、「うちに来ない?」と唐突に声をかけることです。
紹介を依頼された側は断りにくい状況に置かれ、仮に選考を受けて不採用になると関係がぎくしゃくするリスクが高まります。
紹介の声がけで重要なのは、「選考と紹介はセットではない」という前提をあらかじめ伝えることです。
「推薦はするけど、採用するかどうかは会社が選考で判断するから、合わなければ受けなくていい」という一言を最初に添えることで、候補者側のプレッシャーが大幅に下がります。
また、紹介する際に職場のリアルな情報を正直に伝えることが大切です。
良い面だけを強調して入社を促すと、入社後に「聞いていた内容と違う」という不満が生まれ、紹介者との関係が崩れることがあります。
残業時間・チームの雰囲気・業務の大変さも含めて率直に伝えたうえで、それでも合いそうかを候補者自身に判断させるのが、関係を長期的に保つ声がけの作法です。
声がけの際に確認しておくとよい事項を以下にまとめます。
| 確認事項 | ポイント |
|---|---|
| 選考の公平性 | 紹介経由でも通常の選考基準が適用されることを伝える |
| 不採用の可能性 | 落ちた場合も関係には影響しないことを先に伝える |
| 職場のリアルな情報 | 良い面だけでなく大変な点も正直に共有する |
| 候補者の意思 | 受けるかどうかは候補者自身が決めてよいと伝える |
紹介した後に不採用になった場合、紹介者が受けるダメージは予想以上に大きいものです。
その場面のフォローを人事担当者がどう行うかが、次の紹介につながるかどうかを左右します。
不採用の結果は紹介者に先に伝え、理由を一点に絞って丁寧に説明することが、紹介者の気持ちを落ち着かせるうえで有効です。
理由を職務要件との照合という観点で伝えると、人格否定のように受け取られにくくなります。
社員から転職を紹介された候補者の立場では、「断ったら関係が悪くなるのでは」という不安から、気乗りしないまま選考を受けてしまうことがあります。
その結果、途中辞退や不採用で終わった場合の気まずさはむしろ大きくなります。
紹介を断ることは失礼ではなく、お互いの関係を守る選択でもあります。
断るときに意識したいのは、断る理由を「紹介してくれた相手」ではなく「自分のキャリアの方向性」に置くことです。
「今の会社で取り組んでいることがあって、タイミングが合わない」「別の分野でキャリアを積みたいと考えていた時期だった」のように、紹介内容の良し悪しではなく自分の状況を理由にすることで、相手を傷つけずに断れます。
また、感謝をしっかり伝えてから断ることが重要です。
「声をかけてくれたことはとてもうれしかった、ただ今は違うタイミングで」という順序で伝えることで、相手は気持ちよく受け取れます。
断った後に少し間を置いてから連絡を入れる、ランチや食事に誘うなど、関係をリセットするアクションをとることが、長い目で見た友好関係の維持につながります。
一方、紹介を依頼した社員の立場で断られた場合の心がけとして重要なのは、断られたことを責めないことです。
リファラル採用はあくまで候補者の自発的な意思が前提です。
「せっかく声をかけたのに」という感情を見せると、その社員が次に紹介したいと思う人が現れたときに声をかけにくくなります。
「またタイミングが合えばよろしく」と受け流せるスタンスが、紹介者として長く活躍できる姿勢です。
社員が紹介を断られたあとに人事担当者にできることは、その社員の心理的な安全を保つことです。
「断られても大丈夫、それだけが採用の入り口ではない」という雰囲気を職場に作ることが、リファラル採用を形骸化させない土台になります。
リファラル採用自体は違法ではありません。
社員へのインセンティブの支払い方を誤ると職業安定法第40条に抵触するリスクがあります。
職業安定法第40条は、労働者の募集に従事する者に対して賃金・給料以外の報酬を与えることを禁止しています。
そのため、インセンティブを商品券や現金として賃金体系の外側で渡すと、法違反とみなされる可能性があります。
適法に運用するためには、インセンティブを賃金として支払うことが必要です。
具体的には就業規則または賃金規程に支給条件・金額・支給時期を明記したうえで、給与明細に社員紹介手当・リファラル賞与などの名目で記載し、通常の給与振込と同じ口座に振り込みます。
所得税の源泉徴収の対象となる点も忘れずに対応してください。
また、社員に紹介のノルマを課すことや、SNSで面識のない不特定多数に対して勧誘させることも違法リスクが高い行為として明示的に禁止する条項を社内規定に盛り込むことが推奨されます。
紹介経由の候補者が不採用になることは珍しくなく、採用基準を満たさなかった場合は通常の応募者と同じく不採用の判断が下されます。
リファラル採用で紹介されたからといって採用が保証されるわけではありません。
不採用になった場合に重要なのは、人事担当者が紹介者(社員)に先に連絡し、丁寧にフォローすることです。
不採用の理由は職務要件との照合という観点から一点に絞って伝えると、人格否定のように受け取られるリスクを下げられます。
紹介者が「申し訳ない」と感じやすい場面ですが、企業側が制度として「不採用になっても紹介者の評価には影響しない」ことを事前に周知しておくことが、社員が次の紹介にも前向きになれるための重要な設計です。
候補者側は、紹介を受けた時点から「落ちる可能性もある選考である」という前提を紹介者と共有しておくことで、不採用後の関係への影響を最小限にとどめやすくなります。
リファラル採用のインセンティブを支給するタイミングは、企業ごとの制度設計によって大きく異なります。
代表的なパターンは、応募・面談時、入社時、入社後の定着確認時の3つです。
最もスタンダードなのは入社時に支給するパターンで、10万円程度のインセンティブを入社月の給与または翌月に支払う設計が多く見られます。
早期離職を防ぎたい企業では、入社後3〜6か月経過後に支給するパターンを採用するケースもあります。
インセンティブをもらえないケースとしては、紹介した候補者が採用決定前に選考を辞退した場合、入社後すぐに退職した場合(定着要件が設定されているケース)、支給日時点で紹介者本人が退職していた場合などが挙げられます。
制度設計によって支給条件が異なるため、導入時に社員に対して条件を明確に説明しておくことが大切です。
リファラル採用のインセンティブには税金がかかります。
適法に運用している企業では、インセンティブを賃金(社員紹介手当・リファラル賞与)として支払うため、給与所得として所得税の源泉徴収の対象となります。
受け取る社員の手取り額は、インセンティブの支給額から所得税・住民税・社会保険料が控除された金額になります。
たとえば10万円のインセンティブを受け取る場合、手取りは税率や扶養状況によって異なりますが、おおむね2割程度が控除されることを目安に考えておくとよいでしょう。
企業側は、インセンティブを給与台帳に反映し、所得税の源泉徴収を適切に行う必要があります。
商品券やギフトカードで支払う場合でも、現物給与として所得税の対象になるため、同様の処理が必要です。
なお、税務処理が複雑になる場合は税理士や社会保険労務士に確認することをおすすめします。
リファラル採用を活性化させるための第一歩は、制度を整える前に社員が紹介したくなる職場環境を確認することです。
社員が会社に対して満足度やエンゲージメントを持っていない状態では、どれだけ制度を整備しても紹介は増えません。
制度の面では、まず求める人物像の言語化から始めることをおすすめします。
「どんな人を紹介してほしいか」を社員が具体的にイメージできる表現に変換し、定期的に更新して共有することが紹介数を増やす出発点です。
次に、紹介フローの簡素化です。
申告方法が煩雑だと社員は動きません。
Slackや専用フォームなど1ステップで申告できる仕組みを用意することが、紹介のハードルを下げる実践的な対策です。
制度が動き始めたら、成功事例を社内で定期的に共有することが継続的な活性化につながります。
リファラル経由で入社した社員のストーリーを社内報や全社会議で紹介することで、制度の効果を可視化し、ほかの社員が紹介に前向きになるきっかけを作れます。
矢野経済研究所の調査によると、リファラル採用の実施経験がある企業は2024年時点で50.1%に達しており、今後も導入企業は増える見通しです。